第74話 外の世界とエルフの立場

「お前達、よくぞここまで頑張った。あとはもう私が教えることもないだろう」


滞在して7日が過ぎようとした頃、益荒男エルフからそんな事を言われた。農業と水汲み、調理に洗濯。男女別れての暮らしの基盤を教えられたに過ぎないが、それでも褒められたら嬉しいモノだ。


「ありがとうございます!」

「でもわざわざこんな事を言うって事は他にもまだ何かあるんじゃないですか?」


下野ことシーマは余計な事を言う。

監督役の益荒男エルフは少し言いづらそうに咳払いしつつ、俺たちにこう告げた。


「うむ。実はお前達をどこかの部族が送り込んだスパイではないかとずっと監視していたのだ」


? どう言う事だ。


「では今まで僕達が他のエルフと接触できる機会がなかったのは、疑われていたからですか?」

「端的に言わせて貰えばそうだ。同胞だからと無条件で受け入れて、過去に手引きされた事件があってな。悪いがお前達の行動を見させてもらっていたのだ」

「それで、疑いは晴れたので?」

「うむ。一度の祈りで譲渡するマナの大きさもそうだが、野菜の収穫量、味も優れていた。もしここに手引きする者だったらこうはいくまい」


なるほど、俺たちはお試し期間を無事乗り越えたってわけだな。


「だからといってすぐに里の内側を自由に歩くことは許可できん」

「まだ疑っておられると?」

「いいや。我々の里は行ける場所にツリースキルの取得数が一定数に満たされていなければ通れないバリアの様なものが張られているのだ。そういう意味ではどこでも入れるとは言えぬな」


監督になるのに必要なツリースキルも必要とされてるし、ここでの暮らしは“何をしたか”の実績の他に“何ができる”も大きな意味を持つ様だな。


「ちなみに他の部族はどんな奴らか教えてもらえたりは?」

「知ってどうする?」

「どんな奴らかわからないと出会った時に対処できません」

「一理あるな」


益荒男エルフが言うには、獣人と呼ばれる二足歩行する獣がこの森の西側に陣を引いており。どんどんこちらの領域に近づいている様だ。


他には北部にはドワーフ率いる部族が鉱山を占拠している様だ。

ドワーフとエルフが仲が悪いのは有名だが、この世界のドワーフは獣人とも仲が悪い様だ。


他には自らを龍神の正統なる遣いと言って聞かないリザードマンが南部の水場を陣取っているらしい。


この世界の龍は陣取り合戦に興味は持たず、一定の強さを持つ種族に喧嘩をふっかけてくるようだ。

なので強くなりすぎても、要らぬ禍を生むとかでここへはスローライフを求める以外で人気が出ない理由を知った。


それ以外は、南東の岬。

その奥には海が広がっており、海の全てを支配する魚人族のポセイドンが支配している。

エルフ以上に引きこもり体質で、陸の人種と仲良くするつもりはない様だ。

特にこっちが嫌わずとも、向こうから嫌われてるので仲良くする必要もないとのことだ。


放浪すると途端に難易度が爆上がりになるのは、

エルフにスパイと疑われたら里に出入り禁止になり。

エルフというだけで獣人、ドワーフに嫌われ。

同胞以外を下等種族としか見てないリザードマンに襲われ。

陸に住むだけで魚人族に嫌われ。

もし独自に強くなろうものなら世界最強種の龍に喧嘩を吹っかけられると言うわけだ。


スタートの時点で詰んでるじゃんよ、これ。


通りで危険度が他の世界より高めに設定されてるわけである。

初めから攻略に向いて無さすぎるんだよ、この世界。

攻略できたとしても自己満足の域を出ず、なんなら勢力図を塗り替えるだけで種族の序列に変化があるだけ。


で、もし人間がここにきた場合はだ。

高確率で“珍しい”という理由だけで襲われる。

拠点が獲得できないサバイバル世界。

人間からの人気がない理由はそこだ。

まあ現状無理して外になんて出る必要はないけど。


「で、無事里に入場許可もらったけど、ここからどうする?」

「色々欲しい素材があるんだよね」

「ええ、お料理も魔法のみと言うのも味気ないわ」

「あたしは魔法でお洗濯、画期的だと思うなー。実際便利よね、アレ」

「そうね。魔法のツリースキルは多めに取っておいていいかも?」

「合体スキルやりたい!」


美玲さんがノリノリで提案するも、姫路さんは嫌そうに眉を顰めている。

そういうのは一人でやって頂戴と言いたげだ。

俺は魔法とか覚えてないしな。転移に頼りすぎた結果か、どうやれば魔法が扱えるかもわからない。


「そういえば美玲さん」

「なに、あっくん?」

「こっちで魔法ってどうやって使うの?」

「あれ? 畑やる時に使わない? 監督さんから教えて貰えるはずよ?」


あー……教えてもらう前にクリアしちゃったのが原因か。

俺が下野と顔を合わせているのを見て、姫路さんは察してくれた様だ。


「きっとこの二人は既存のスキルでクリアしちゃったに違いないわ」

「おー、魔法使うまでもなく?」

「実際そこで入手し損ねたんだろうね」


俺と下野は肩を竦めた。

優秀すぎて必要な事柄をスキップしてしまっては本末転倒だ。


俺は土魔法アースシャッフルを覚えた。

ずっと???だった場所は魔法枠だった様だ。

こんな便利な魔法があるんなら、もっと早く教えて欲しかったぜ。

なお、素質が土しかないので覚えられる魔法も土属性に固定されるらしい。ちくしょう。


───────────────

❗️ エレメントツリーが成長した

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アーク:エルフ♂

タイプ:サポート

マ ナ:55,000/105,000

属 性:土

妖 精:コボルド/能力:毒検知(消費マナ10)

   :該当なし

   :該当なし

精 霊:該当なし

   :該当なし

┏寵愛━???

┃  ┏放射━種まき━???

耐久━╋開墾━採掘━???

┃  ┗アースシャッフル(消費マナ5)

┣忍耐 ┗???

┣???

┗???

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