どうやら勇者召喚巻き込まれモブ転移のようです

第46話 ハーレム勇者とモブ①

「よくぞきていただきました、勇者様!」


あれ? 確か俺は嫁さんとイチャコラしていたはず。ここはどこだ?

さっぱりわからん。知らない天井、見知らぬ景色。


けれどどこかで聞いたことのあるフレーズに、見たことのある召喚魔法。

スキルの召喚陣解析が勝手に発動して、新しい転移先が追加される。

オートで追加されるのでぶっちゃけ俺がなんかする暇もない。


へー、白い塔が現れてない世界線の地球人か。

見たところ日本人の高校生四人組。どんな生活してるのか気になるな。それ以前に、一人だけ経路の違う俺に困惑してるようだ。

まぁ、エルフだしな。


「どうしてこんなところに亜人が? 汚らわしいエルフめ! どのように侵入した!」


なんだか嫌われてる模様。人間至上主義国かな?

まあクラセリアにもそう言う国あるからね。

小うるさく騒ぐ人達を転移で惑星ストリームに飛ばす。


「消えた!? おい! 亜人め! 我らが大臣をどこへやった!」

「なんで俺のせいだって決めつけるんだよ?」

「なに!? そのような手品は貴様らの専売特許だろう!」

「あーうるせーうるせー。お前も消えろ」


転移。と同時に、並行世界の地球人にまで警戒されてしまった。

これはまずいぞ。仲良くしようとしてるのに、あらぬ疑いをかけてくるもんだからつい、な?


「あー……こんなナリしてるが、俺は日本人だ。磯貝章、高校三年生だ、よろしくな?」


もう通ってた高校無くなったけど、卒業した記憶はないから高校生で押し通した。嘘はついてないはずだ。


「日本人!? どう見たってエルフなのに!」

「って高校生だったのか。ゲームとかは?」

「もちろん、と言いたいところだが俺の世界は異星人に攻め込まれて滅亡してしまってな。異世界に逃亡して今に至る」

「と、ごめん。その姿はその時に?」

「ああ」


説明するのが面倒なので、適当に相槌を打った。


「僕たちは私立高に通う三年生だ。俺とこいつは幼馴染で、あとはクラスメイトだ」


先頭に立つ男が進藤エイジ。

その幼馴染が御堂雪乃。

仲の良いクラスメイト1がクリスティーナ・シェルフ。

仲の良いクラスメイト2が伊達香。


名前のニュアンスでわかる通りエイジ以外全員女だ。

俗に言うハーレムってやつだな。


それをクラスメイトで誤魔化してる時点でエイジにその気はないようだ。幼馴染とはそう言う雰囲気で、非常に羨まけしからん。


「その、アキラは向こうに彼女とかは……?」


エイジは非常に言いづらそうに聞いてくる。

これはあれか? 見た目エルフだけど俺がモテないと決めつけての質問か?


「彼女じゃなくて嫁がいる。なので気を使わなくていいぞ。お前より一足先に大人の階段は登らせてもらってるからな」

「そ、そうか。いや、同じ男として非常に心苦しかったんだ。ウチは女ばかりだろう? 俺は雪乃一筋だが、クリスや香も大切な友人だ。その気になられても困ると言うか」

「あー……言わんとすることはわかるからその先は言わんでいいぞ。俺だって嫁さん一筋だ。エロ男みたいに思われるのは不本意だ」

「そ、そうだな。ごめん、彼女達は高確率でそういう目にあってきてるので、その、悪気はないんだ」


何か歯に引っかかる物言いをする奴だな。

なんだろう? 俺が状況に合わせて嘘をついているように思ってるのか? 気に食わないので美玲を強制召喚する。


「あ、あっくん! どこいっちゃったとおもったら! って、ここどこ!?」

「なんか俺の召喚阻害を掻い潜ってサーチする凄腕召喚主が現れてな、拉致られた」

「まぁあっくんは優秀だもんね。でもすぐにあたしを喚んでくれてよかったよー」


嫁との再会にホッとする俺のすぐ横で、エイジ達が俺に嫁がいたことが本当だったのかと瞠目している。全く失礼な奴らだぜ。


「本当に奥さんいたんだ?」

「って言うより今どこから?」

「なにもないところから現れるとは面妖な……妖怪の類か?」

「次元神クラウディアの先兵? いえー、まさかね?」


クラスメイト2は制服の上から甲冑を着込んだ女子が腰に下げた脇差に手をかけた。

なに、そういうゲームのキャラなの?

クラスメイト1も、虚空を見つめながら何事かと呟いている。


随分とキャラ設定の濃い子達だ。

もしかしなくてもその手のゲームキャラなのか?

エイジも鈍感系主人公だし。


「あ、あのー。それで勇者様方には私の国を助けていただきたく……」


目の前の状況に軽く目眩を覚えつつも、王女様と思われる少女が表情筋を引き攣らせながら前に出た。

恫喝役の大臣と、威圧役の騎士団長は揃って“超! サバイバルアクション”を体験中だ。残された姫様はそれでもまだこちらを誘導しようと頑張っている。若干膝が震えているが。


「僕たちにできることなら!」

「うん」

「ええ」

「拙者達の力がお国のためになるのならば!」


エイジはそれを安請け合いし、その仲間達も覚悟を決めたように頷いた。

そのあとこっちにも手伝えみたいな雰囲気で顔を向けるが……


「え、なんでそこで俺の顔を見るわけ? さっき俺がそこの人達になんて言われてたか忘れちゃった? 日本人だけどこの国では亜人、つまり敵対視されてるわけ。そこで「ハイわかりました!」っていうほどお人好しではないぞ?」

「あっくんカッコ悪ーい」

「美玲さんは黙ってて」

「しかし、元の世界に帰る術もないんだぞ? ここは協力して、帰還する為の術を探すところだろう!?」


まぁ普通はそう思うよな?


「ああ、俺は自力で帰れるから。どうぞお構いなく。美玲、帰るぞ」

「はーい、では一足お先にバッハッハーイ」


足元に転移ゲートを開きその上に乗ろうとした瞬間、エイジに腕を掴まれた。

そして取り巻きの女性陣からこれまたキツく睨まれている。

おー怖っ。


「待て!」

「なに?」

「僕たちも、元の世界に戻れるのか!?」

「俺はお前達の世界の転移先を知らないぜ? 俺の転移は片道切符だ。俺たちの地球は死滅した。けど、お前達の地球は生きている。並行世界って奴だ。俺はそこへ行くための手段を知らない。だから俺たちは帰れるけどお前達は帰れない」

「そんな!」

「ちょっとあんた魔法を使えるんでしょ、なんとかしなさいよ!」


そんなに帰りたいのね。

だというのにこの態度。

人に物を頼む態度じゃない。

『力ある物は与えよ』って?

それは力なき者への搾取に他ならない。

特にこの手の願いって一度通したら最後、次も次もって際限なくくる。俺は詳しいんだ。


「そもそも俺とあんたらは今日初めて顔を合わせたばかりだ。なんでタダで何かしてもらえると思ってるの? まあ、平和な地球から来てるんなら日和ってるのも分からんでもないが」

「そこをなんとか!」

「その前にこの国の悩みを聞くことから始めたらいいじゃん。俺たちに頼る前に困ってる人たちは放っておけないんだろ?」

「絶賛私たちも困ってるんですけど?」

「だって俺にお前達の願いを叶えるメリットないもん。言っとくが嫁さん一筋だから色仕掛けとか通用しないぞ?」

「きゃー、あっくんのえっちー」


さっきから横で美玲さんが煩いが、いい感じに煽れているので王女様もエイジ達もポカンと口を開けている。


「ま、と言っても俺たちも暇だ。手伝いくらいはしてやるよ。ただ、お前達の頼みを聞くとは限らんがよろしくな?」

「僕達を見捨てくれないでありがとう、と言えばいいのかな?」

「どうとってもらっても構わん」


あとで木村を呼ぼう。あいつこの手の状況に飢えてるからな。

せいぜい再生回数稼ぎに付き合ってもらうさ。



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