生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
第40話 元Sランク冒険者をペテンにかける
第40話 元Sランク冒険者をペテンにかける
ドガッ! ドガガッ! ドガガガッ! ドガッ! ドガガッ!
メルフィウスの拳は、何百回、何千回と俺の体を叩き続けた。俺は
相手の攻撃に耐える硬さを維持するため、俺の魔力は次第に消費されていった。このまま永遠に殴り続けられたら、いつか魔力は枯渇し、
かと言って、
では、耐え続けていれば勝てるのか? 俺には一つ成算があった。どれほど体力や魔力が無尽蔵にあっても、メルフィウスが永遠には殴り続けられないだろうという成算が。そして、メルフィウスが殴るのを止めれば、そのときに逆転の機会が訪れる。
ドガッ! ドガッ! ドガッ……
どれほどの時間が経っただろうか。ついにメルフィウスは殴るのを止め、後ろに下がって俺から距離を取った。
「おい、どうした、生き残り野郎? ひたすら亀みたいに縮こまりやがって、何の反撃もしないじゃねえか。このメルフィウス様には勝てないと悟って、黙って殺される道でも選んだか?」
やっぱりこうなったか。俺は内心でうなずいた。人間、何かに働きかけて全く反応が返ってこないと、次第にやる気を削がれていくものだ。メルフィウスもまた、殴っても殴っても無言のまま一切効いた様子を見せない俺を前に、やる気が失せてきたのだろう。本当に俺の魔力を削れているのか、不安になった可能性もある。あと何発殴れば俺が倒れるという目安でもあれば話は別だが、俺と初めて戦うメルフィウスにそれは分からない。
だからメルフィウスは、攻撃を止めて俺を挑発することを選んだ。俺が何か言葉を返せば、それが強気なものでも弱気なものでも、自分の働きかけへの反応だ。やる気に変えられる。仮に俺が無視して
そうだ。メルフィウス。お前の対応は間違っていない。ここまではな。
では仕掛けるか。俺は
「ふふっ……」
「……?」
「ふふふ……ははははは! あっはっはっはっはっは!!」
「何がおかしい!? もうすぐ死ぬのが分かって、恐怖で頭がおかしくなりやがったか!?」
「いやあ、ごめんごめん」
俺は頭をかき、笑うのを止めた。
「ここまでこっちの想定通りの行動を取るってことは、本当に気付いてないんだなって思ってさ」
「何だと……?」
月明かりに照らされたメルフィウスの顔に、疑いの感情が表れる。よし、喰い付いた。
「この無能野郎め。俺が何か見落としているとでも言うのか?」
「まあね」
「面白いじゃねえか。言ってみろ。そんなことが本当にあるならな」
「分かった……でもその前に、聞くことがある。お前達、当主にはバレてないつもりみたいだったけど、陰で人を脅したり暴力を振るったり、いろいろやらかしてるよな?」
「…………」
メルフィウスが一瞬黙り込む。当主が招いた客を勝手に追い返そうとするぐらいだから、ほかに悪さをしていないはずがないと思って鎌をかけたが、当たらずとも遠からずだったようだ。
「……それがてめえと、何の関係がある?」
「お前さ……はめられてるんだよ。フガフガ家の当主に」
「なっ、何だと!? いい加減なことを言うんじゃねえ!」
「思い出してみろよ。お前、言ってたよな? 別のモンスター退治があって鉱山に行けなかったって。お前がこの屋敷に帰ってきて、新しいモンスター退治の仕事が入る前に俺達がここに来た。これが偶然だと思うか?」
「…………」
「まだあるぞ。俺がフガフガ家の警備隊幹部になるとか言ってたよな? 当主か誰かは知らないけど、お前にそう思い込ませた奴がいるんじゃないのか?」
「てめえ……何が言いてえ……?」
うめくように問いかけてくるメルフィウス。俺は一つ息を吐いて答えた。
「ふうっ……だから言っただろ? お前、フガフガ家の当主にはめられてるって。うまく誤魔化してるつもりでも、当主はお前達のやってることを全部知ってる。そこでこの家から追放しようってなったんだけど、お前達のことだ。そのまま追い出したら逆恨みして何するか分からないよな?」
「…………」
「そこで、追い出す前に手ひどく痛め付けて再起不能にすることになった。でも、王都で5本の指に入るお前を痛め付けられる奴はそういない。だから、ソグラトの冒険者ギルドに極秘でその依頼が来た。うちのギルドマスターはそれを受けたよ」
言うまでもなく、全部ハッタリだ。フガフガ家の当主からはただ招かれただけであって、メルフィウスを痛め付ける依頼など受けていない。メルフィウスに隙を作らせるため、俺は彼の言ったことを元にして話を作っていた。人によっては卑劣なやり方と思うかも知れないが、これが俺の生き残る
「フガフガ家の当主は、お前が屋敷にいるときに到着するように時期を見て、俺達を王都に招いた。俺が警備隊の幹部になるって、お前に吹き込んだ上でな。そうすれば、自分の地位が脅かされると思い込んだお前が、俺達を排除しようと必ずちょっかいをかけてくる。そこを返り討ちにするって算段だ」
「何だと……じゃあてめえはどうして、最後まで俺達との戦いから逃げようとしたんだ!?」
「あくまでも穏便に事を済ませようとする俺達に、お前達は無理やり襲いかかった。そういう筋書きにすれば、一層お前達を追放しやすくなるからな。協力してくれたラウトバさんには、気の毒なことをしたよ」
「…………」
さらなるハッタリを重ねる俺。メルフィウスはまた黙り込んだ。
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