生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
第23話 押しかけ弟子と、揺れ動く部屋割り
第23話 押しかけ弟子と、揺れ動く部屋割り
「何だって……?」
言われたことがすぐには理解できず、俺は思わず聞き返していた。当たり前の話だが、これまでの人生で、弟子にしてほしいなどという申し出を受けたことはない。
「弟子にしてほしい、と聞こえたんだが……」
「はいっ、そう言いました! 身の回りのお世話でも何でもしますから、僕をブイルさんの弟子にしてください!」
元気な声で答えるチウニサに、俺は言った。
「あいにくだが……この前も言った通り、俺は生き残るしか能がない、中途半端な人間だ。とてもじゃないけど、人に何かを教えられるような身分じゃない。学ぶんだったら、もっとちゃんとした人についた方がいいと思うぞ」
「そう言わずに……僕はブイルさんにお会いして、ハズレ適性でもがんばれば結果を出せるって学んだんです! ブイルさんの側で、もっと冒険者としての心構えを学ばせてください!」
「!」
チウニサの言葉に、俺ははっとする。
ハズレ適性でもがんばれば……か。言われてみれば、そのことだけを考えてここまでやってきたな。
そして、俺は自分一人で歩んできたわけじゃない。今までに大勢の人から教えを受けてきた。
剣術の先生、攻撃魔法の先生、強化魔法や付与魔法の先生……みんな俺に適性がないからと言って見放したりせず、真剣に指導をしてくれたのを思い出す。
それだけたくさんの人の世話になっておきながら、いざ自分が教えを乞われる側になったら知らん顔、というのも心無い話か……
少し考えた後、俺はチウニサにうなずいた。
「……分かった」
「本当ですか……?」
「ああ。ただし、俺に教えられるのは初歩の初歩だけだからな。上達して俺が教えることがなくなったら、俺から離れてちゃんとした先生に習えよ。弟子にするなら、それが条件だ」
「ありがとうございます、師匠!」
チウニサは立ち上がると、いきなり俺にガバッと抱きついてきた。身長差がないので、顔と顔がくっつきそうになる。
「うわっ!?」
間近で見ると、チウニサの顔立ちは男とは思えないほど整っていた。綺麗過ぎて、ちょっと怖いぐらいだ。
「お、おい……嬉しいのは分かったからさ。離れてくれないか……?」
「ええー? 少しぐらい、いいじゃないですか」
「はいはい。そこまでにしましょうね」
ここでポレリーヌが間に入り、俺からチウニサを引きはがした。不満そうな顔のチウニサに、ポレリーヌが言う。
「弟子入りのことは分かりました。でも、ブイルさんの身の回りのお世話はこの私の役目です。チウニサくんは気にしないで、修行に専念してくださいね」
「ええー? ゴリラ女さんが師匠のお世話するんですか?」
「誰がゴリラ女ですか!?」
額に青筋を立ててキレるポレリーヌに、チウニサは平然と答える。
「もちろんあなたです。何か、お皿とかめっちゃ割ってそうじゃないですか。師匠の身の回りのお世話なんて、絶対無理だと思うんですけど」
「何ですって!? ブイルさんに弟子入りが認められたからって調子こいてるとぶっ殺すわよ、このガキ!」
「わああ! 待て待て待て!」
喧嘩が始まりそうになり、俺は慌てて二人を引き分けた。
☆
話を聞くと、チウニサも故郷の村から出て来たばかりで、住むところが決まっていなかった。そこで、例のおばあさんの長屋の空き部屋に入る話がすんなりまとまる。わざわざ俺達が借り手を探さずに済んだというわけだ。
だが、事がスムーズに運んだのはそこまでだった。俺とポレリーヌが同じ部屋に入ると聞いたチウニサは、露骨に不満の声を漏らす。
「ええーっ? 僕と師匠が一緒に住むんじゃないんですか!?」
「そうですよ。私とブイルさんが一緒に住みますから」
「でも、お二人は別に付き合ってるわけじゃないんですよね?」
「ああ。ただのパーティーメンバーだ」
「付き合ってもいない男女が同じ部屋に住むとか、控えめに言って頭沸いてるとしか思えないんですけど……」
「ふふん。お子ちゃまにはまだ分からないと思いますけど、パーティーメンバー同士が連携を強化するために、こういうことも必要なんですよ」
「いや、ポレリーヌもそんなに歳変わらないだろ。連携強化とかも初めて聞いたし」
そんなことを言っているうちに、俺はふと思いついて言った。
「なあ……今日は俺、チウニサのところに泊まろうと思うんだけど……」
「はあ!? 何でですか!?」
「いや……チウニサも村から出て来たばっかりで心細いだろ。だから、一晩だけ俺が泊まってやろうと思うんだけど……」
「ふーん。まあ、一晩だけなら……」
不満そうではあったが、一応納得するポレリーヌ。こうやって徐々に一人で寝ることに慣れてもらえば、そのうち寝床が別々になる可能性も……と俺は考えていた。
それはさておき、俺はチウニサに言う。
「ということだから、今夜はよろしくな」
「わーいっ! 師匠、ありがとうございますっ!」
そう言うと、チウニサはまた抱きついてきた。相変わらず男か女かよく分からない顔が、接触しそうなほど近くまで迫ってくる。
……こいつ、本当に男でいいんだよな? 革のズボンで下半身の体型はよく分からないけど、胸は全然ないし。
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