生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
第1話 ダンジョンでパーティーから追放される
生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
ひつりひ
第1話 ダンジョンでパーティーから追放される
「ブイル。俺達はこれ以上、お前の面倒を見切れない。ここからは別行動にさせてもらう」
「そうか……」
俺の名前はブイル。Aランクパーティー“光輝ある頂上”に所属している冒険者だ。いや、ついさっきまで所属していたというべきか。たった今俺は、パーティーリーダーのレオルティから追放を言い渡されていた。
「悪く思うなよ。今回のダンジョン探索の結果次第で、俺達がSランクパーティーに昇格できるかどうかが決まる。生き残ることだけ得意で全く役に立たないお前のフォローに、手を取られている余裕はないんだ」
「ああ……そうだな」
俺はレオルティの言うことに、異議を唱えなかった。ずいぶん前から、レオルティ達の足手まといになっている自覚はあったのだ。
レオルティ達と俺は、同じ村の出身である。十年以上前、俺達は冒険者に憧れて、町の冒険者ギルドに登録した。それ以来俺達はパーティーを組み、冒険者として活動しながら実力を磨いていったのだが、俺が持っていた適性は冒険者に向いているとされる“剣術”や“火炎魔法”、“回復魔法”といったものではなく、“生存”だった。自分自身はなかなか死なないものの、冒険者として活躍するには不向きだったのだ。
もっとも、適性がないからと言って剣や魔法が全く使えないわけではない。俺は少しでもパーティーに貢献しようと、やれることはやった。剣術や攻撃魔法はもちろん、回復魔法や強化魔法、付与魔法などを習って鍛え、少しでも戦力になろうとしたのである。だが、どれもそこそこ上達したものの、適性を持っている者には
今回のダンジョン探索でも、俺はモンスターを倒そうと剣を振るった。しかし1体も倒すことはできず、最後はレオルティ達に倒してもらってばかりだった。そして、いつまで経っても中途半端な貢献しかできない俺は、たった今レオルティから見限られてしまったというわけだ。
「ギルドには、お前が勝手にパーティーを離れて行方不明だと報告しておく。Sランクパーティーへの昇格を控えたこの時期に、ダンジョン内でパーティーメンバーを見捨てたなんて噂を立てられたくないからな」
「そうか……今まで世話になったな。足手まといになっていて悪かったよ」
俺はレオルティ達に頭を下げた。生き残るしかできない俺を、今までパーティーに置いておいてくれたみんなへの、正直な気持ちだった。
それから俺は、背負っていた荷物を床に下ろした。ダンジョン内に滞在するのに必要な道具や、みんなの予備の武器、それに、ここまでにレオルティ達が倒したモンスターの体の一部だ。モンスターの体の一部は、ダンジョンから帰ったときに冒険者ギルドに持っていき、討伐の証拠にするために必要となる。
みんなの負担を少しでも軽くするため、そういった荷物は俺が運んでいた。下ろされた荷物の中身を、レオルティ達は無言で持っていく。
「じゃあな。もう二度と会うことはないだろう。せいぜいこのダンジョンから出られるようにがんばれよ。お前のその“生存”適性でな!」
「無能なお前は、それしかないもんな!」
「万が一生きて帰れたら、冒険者辞めて転職した方がいいんじゃないか? ハハッ」
ひとしきり俺を嘲笑い、レオルティ達はダンジョンの奥に向かっていく。誰一人、俺を振り返る者はいない。残された俺はその場に留まり、全員の姿が見えなくなるまで見送った。
「…………」
こんな別れ方になるなら、もっと早く自分からパーティーを抜けておくんだったな。
俺は後悔していた。ずっと一緒にやってきたレオルティ達と、どうせ別れるなら円満に別れたかった。もしかしたら努力で何とかなるのではないかと、ずるずるパーティーにしがみつき続けた結果がこれである。
もう、どこかのパーティーに所属することはないだろう。かと言って、今から冒険者以外の職業を探す気にもなれない。これからはソロで、難易度の低い依頼を細々と受けていくか……
いや、そういうことを考えるのは後だ。まずはこのダンジョンから生還しないと。俺の適性は“生存”で他の冒険者よりは死ににくいが、完全に不死身というわけではない。下手をすれば途中で死に、ダンジョンから出られないということもあり得る。不用意にモンスターと出くわさないよう、周りに注意を払いながら、俺はダンジョンの入口に向かって歩き出した。
ところがしばらく歩いたとき、俺の耳に複数の男女の悲鳴が聞こえてきた。
「うわああーっ!」
「た、助けてくれーっ!」
「走るのよ! 早く!」
レオルティ達の声ではない。別の冒険者パーティーが何かから逃げ惑っているようだ。しかも、だんだんこちらに近づいてくる気配がする。俺は物陰に隠れて様子をうかがった。
しばらくすると、数人の少年少女がこちらに向かって走ってくるのが見えた。その後ろからは、全身を真っ赤に灼熱させた巨大なドラゴンが追ってきている。Sランクモンスターのラーヴァドラゴンだ。逃げている冒険者達のランクは分からないが、ラーヴァドラゴンに戦いを挑んだものの、歯が立たずに逃げ出してきたのだろう。
冒険者達が俺の潜んでいる場所を通り過ぎたとき、ラーヴァドラゴンは炎のブレスを吐く。最後尾を走っていた赤毛の少女がそれを喰らい、足を焼かれてしまった。
「きゃあああっ!!」
赤毛の少女は一溜りもなくその場に倒れる。仲間の冒険者達は彼女を助けることなく、そのまま走って逃げて行ってしまった。
「まずい!」
このままでは赤毛の少女がやられてしまう。俺は物陰から飛び出すと、彼女を助けるため、右手に魔力を集中させた。
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