生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
第19話 ソグラトでの初依頼を達成(前編)
第19話 ソグラトでの初依頼を達成(前編)
朝、というにはまだ早い時刻。俺は目を覚まして体を起こした。窓から日光が差していないので、部屋の中は暗い。
ポレリーヌを起こさないよう、そっとベッドから出ようとする。その瞬間、いきなり手首をガシッとつかまれた。
「おわっ!?」
「ブイルさん、どこに行くんですか?」
見ると、ポレリーヌが目を覚ましていた。俺は慌てて詫びる。
「わ、悪い……起こしちまったな」
「そんなのどうでもいいです。それよりどこに行くんですか?」
「朝練だよ。俺みたいなハズレ適性持ちは、稽古ぐらい真面目にやらないとほかの冒険者についていけないからな」
「じゃあ、私も行きます。ブイルさんを一人で出歩かせて、変な女に引っかかりでもしたら大変ですから」
「この時間帯にそんなこと起きるか……? まあ、ついてくるのは別にいいけど」
服を着替え、二人で宿屋を出る。向かう先は冒険者ギルドだ。
例の登録試験が行われた広場は、普段は冒険者の修練のために開放されている。そのことを、俺は昨日ギルドで聞いていた。なので早速今日から利用させてもらおうというわけだ。
ギルドに着き、訓練用の木剣を借りて広場に入る。時刻が時刻なせいか、ほとんど人はいなかった。俺は剣の素振りを、ポレリーヌは弓の稽古を始める。
「ふんっ……ふんっ……」
重い木剣を、何百回となく振る。両手で持って振ったら、次は片手に持って振る。
「ふんっ……はあっ……」
一段落したのでポレリーヌの方を見てみると、彼女は練習用の矢を次々と的の中心に当てていた。
ヒュン……カッ……ヒュン……カッ……
見事なものだ。“弓術”適性があるというだけでなく、相当な修練を積んだんだろうな。
俺は木剣を置き、今度は的に向かって攻撃魔法の練習を始めた。
「
☆
鍛錬を終えた俺達は、宿屋に戻って体を拭いた。それから少し休み、朝食をとってまた冒険者ギルドに向かう。今日から依頼を受けて仕事を始めるわけだが、その前に用事があった。
俺はカウンターに近づき、受付嬢と話した。
「Fランク冒険者の収入で借りられる部屋、ですか……」
「ああ……ここで聞くのはお門違いかも知れないんだが、俺もポレリーヌも、この町にまだ慣れてなくてさ。下手に探し回って変なのに引っかかるぐらいなら、先に町のことをよく知ってる人から聞いておきたいと思ったんだ。何か情報があるなら、教えてほしいんだが……」
「分かりました。いくつか心当たりがあります。あとでまたいらしてください」
「ありがとう……済まないが頼む」
部屋のことを受付嬢に任せると、俺達は依頼の貼り出されている掲示板に向かった。貼り出されている依頼の中から、Fランクパーティーが受注できるものを探す。
個人のランクは俺がF、ポレリーヌがBだったが、パーティーとしてのランクはFだ。大体どこの町のギルドでも、メンバーのランクにかかわらず、新しく結成されたパーティーはFランクから始まる。まずは難易度の低い依頼を受けることで、パーティーとしての連携を高めていくというわけだ。
掲示板を見ていたポレリーヌが、指をさして言った。
「ブイルさん、あれ、どうですか?」
「畑を荒らすスライムの駆除、か……よさそうだな」
Fランクパーティーが受ける依頼としては、ごくごくありふれたものだった。初めて受けるにはちょうどいいだろう。俺はポレリーヌに同意し、依頼の紙をはがして受付に持っていった。
☆
「こちらがうちの畑です」
次の日の朝。現地に行ってみると、依頼人は中年の農夫の男性だった。被害が出ているという畑に、早速案内される。
「ここ何日か、毎日スライム共がやってきて作物を荒らしていきます。追い払っても追い払ってもやってくるので、冒険者ギルドさんに依頼を……」
「なるほど。来る時間帯は決まっていますか?」
「特に決まっていません。腹が減ったら来るんでしょうかねえ」
「なるほど。ちなみに、お宅のほかに被害の出ている農家はありますか?」
「いえ、今のところ、うちのほかには聞きませんね」
「……分かりました。後は我々にお任せください」
「はいっ。どうかよろしくお願いします」
依頼人は帰っていった。畑は大きな森のすぐ近くにある。この畑だけが狙われるということは、スライムは森の方から来る可能性が高いと思った。俺とポレリーヌは畑の近くにある小屋に身を潜め、スライムが来るのを待つ。
それほど時間がたたないうちに、スライムは現れた。7、8匹といったところか。やはり森の方から、ぴょんぴょんはねて畑へ近づいてくる。俺達はそっと小屋を出た。
スライムが畑の作物に食いつこうとしたところで、俺はポレリーヌにうなずいた。彼女が弓に矢をつがえたところで、小声で指示する。
「殺すなよ」
「了解です」
ポレリーヌは引きしぼって矢を放つ。矢は狙いを誤ることなく、スライムの一匹に浅く刺さった。たちまち悲鳴が響く。
「ピギー!」
「「「ピギッ!?」」
残りのスライムは驚きの声を上げ、畑を荒らすのを中止して森へと逃げ始めた。矢を受けたスライムも致命傷はまぬがれていて、よたよたと逃げていく。俺達はそのスライムを追った。森にはきっと、スライムの巣があるはずだ。巣のスライムを殲滅しない限り、畑への被害はなくならない。そして俺達は、矢で射たスライムに案内させることで、巣の場所を見つけようとしていた。
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