生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
第34話 昇進とギルドマスターからの頼み
第34話 昇進とギルドマスターからの頼み
アイアンゴーレムを倒した数日後、俺とポレリーヌ、チウニサの三人はソグラトの冒険者ギルドに帰りつく。建物に入ると、ギルドマスターであるセクレケンが俺達を待っていた。
「マスター……」
「おお、ブイル。帰ってきたか。こちらへ……」
セクレケンの部屋に招き入れられた俺達は、ねぎらいの言葉をかけられる。
「無事、アイアンゴーレムを討伐できたそうだな。三人ともよくやってくれた……ついさっき、避難していた鉱山の責任者から使いが来たところだ。丁重に礼を述べておったぞ」
「恐れ入ります……なかなか難しい相手でしたが、チームワークで倒すことができました」
「王都にあるフガフガ家の本家にも、今、討伐成功の知らせが向かっておるらしい。正式な依頼にはないモンスターの討伐であるが、フガフガ家の当主からは相応の謝礼が支払われるだろう。期待して待っておって良いぞ」
「はい……」
「それから……ギルドとしては今回の討伐を行ったブイルパーティーを2ランク、特進させることにしたい。パーティーメンバーも2ランク特進だ。Aランクのポレリーヌは、1ランクの昇進になるがな」
つまりパーティーがCランクに、俺の個人ランクがC、チウニサがD、ポレリーヌがSになるというわけか。ポレリーヌだけが1ランクの昇進だが、Sランクより上のSSランクというのはよほど目覚ましい手柄を立てないとなれないから、これは仕方がない。
パーティーにしろ個人にしろ、2ランクの特進というのはかなり異例だが、Sランクモンスターを倒したパーティーを低いランクのままにしておくというわけには行かないのだろう。ランク付けに対する世間の信用がなくなってしまう。
俺はセクレケンに頭を下げた。
「ありがとうございます。これからも精進します」
「うむ。期待しておるぞ……」
しかし、ジルデンでは万年Dランクだったこの俺が、Cランクか……
ジルデンで“光輝ある頂上”にいた頃は、ろくに成果も上げられず、十年やっていてもDランク止まりだった。ずっと鍛錬は続けていたものの、もしかしたら一生Dランクのままではないかと思ったりもしたものだ。それが、ここソグラトに来てFランクからEランクになり、今、Cランクまで登りつめることができた。感無量だ。
ギルドを出て人気のない路地にさしかかると、いきなりポレリーヌが抱きついてきた。
「ブイルさん!」
「うわっ!?」
「私、嬉しいです。まさかSランクになれるなんて……ずっと夢だったのが、ブイルさんのおかげで叶いました!」
「ああ、良かったじゃないか……」
するとチウニサも、負けじと抱きついてきた。
「師匠―っ!」
「うおっ!?」
「僕、冒険者になったばっかりなのにDランクに昇進だなんて……僕のハズレ適性を生かしてくれた師匠のおかげです!」
「ああ……でもな、お前にはまだ経験が必要だ。Dランクになっても、しばらくはFランク向けの依頼をたくさん受けて場数を踏んでもらうから、そのつもりでいろよ」
「はいっ! 何でも師匠の言う通りにします! 師匠の言うことは絶対です!」
「そ、そうか……」
その夜、俺はチウニサに一人で寝てみろと言ったが、彼女は速攻で無理だと言って泣きながら俺のベッドに潜り込んできた。やはりランクと違い、人間の中身はそう急には変わらない。チウニサが成長するには、まだまだ時間がかかるように思えた。
☆
その後数日たって、俺はまたセクレケンに呼び出されていた。
「俺達が王都に、ですか……?」
「そうだ……フガフガ家の本家から、今回の功労者であるお前達を王都に招いて礼をしたいと言ってきた」
「冒険者がモンスターを討伐するのは当然のこと。わざわざ礼をされることではないと思うのですが……」
「わしもそのように思う。それに、王都まで往復すれば、馬車を使っても何日かかかる。ギルドとしては、依頼でもないのに腕利きの冒険者が何日も不在になるのは、あまり好ましくない……」
セクレケンはソファーから立ち上がると、窓の方へ歩き出す。俺は言った。
「でしたら、辞退させていただくということは……?」
「うむ……わし個人としては、できればそうしたいのだがな……ただ、フガフガ家の当主が興味を持ったようなのだ。Sランクモンスターを討伐した元万年Dランクのパーティーリーダーとは、一体どんな男なのか、とな」
「そうですか……生き残るしか能がない男を見物したいと」
「前にも言った通り、我がギルドは何かとフガフガ家の世話になっておる。これがきっかけで溝ができるようなことは、できれば避けたい。ブイルよ、済まんが王都まで行ってきてはくれんか?」
少し考えてから、俺は答えた。
「……承知しました。マスターがそのように言われるのなら、一つお呼ばれして参りましょう」
「そうしてくれると助かる……気を付けて行ってきてくれ。近いうちに迎えの馬車を、フガフガ家からよこすそうだ」
「分かりました」
王都に行くのは、今回が初めてである。ギルドを出た俺は、ポレリーヌとチウニサに伝えるため、借りている部屋に向かった。
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