生き残るだけの無能はいらないとパーティー追放されたので、認めてくれる新しい仲間達と成り上がります。俺がいないと生存率下がるらしいけど、そっちはそっちで元気にやってくれ
第27話 (追放者Side)強化魔法と付与魔法の新しい使い手
第27話 (追放者Side)強化魔法と付与魔法の新しい使い手
レオルティ達“光輝ある頂上”がオーク討伐に失敗してから数日が過ぎた日のこと。彼らは冒険者ギルド裏手の広場に集っていた。そこには“光輝ある頂上”メンバーのほかに、一人の青年と一人の少女がいた。青年は眼鏡をかけていて背が高く、少女は小柄だ。
「それじゃ二人とも、自己紹介をしてもらおうか」
レオルティが声をかけると、青年と少女は前に出て自己紹介を始めた。先に青年の方が話す。
「……エンパと言います。強化魔法使いです。このたびレオルティさんのお誘いで、“光輝ある頂上”に参加させていただくことになりました。どうぞよろしく」
「……コンショニアです。付与魔法を使います。同じく、“光輝ある頂上”に加わることになりました。よろしくお願いします」
メンバー達から拍手が起きる。それが収まると、レオルティが付け加えた。
「言うまでもないが、二人は“強化魔法”適性と“付与魔法”適性を持っている。つまり本格的な強化魔法と付与魔法を使い手だ。二人に比べたらあの落ちこぼれのブイルなんて、吹けば飛ぶようなチリみたいなもんだ」
笑い声が起きた。しかし、エンパとコンショニアは表情を崩さない。
「「…………」」
二人は元々、別々のパーティーに所属していた。そこをレオルティが多額の金銭で引き抜こうとしたものの、最初は首を縦に振らなかったのである。
プライドを傷つけられたレオルティは、強引な手法に出た。二人が所属するパーティーのリーダーに密かに接触すると、Sランクパーティーと揉めるとろくなことにならないと言って脅したのだ。リーダー達は仕方なく、エンパとコンショニアをパーティーから出した。こうして、あまり円満ではない形での移籍が実現する。二人のパーティーリーダーに、レオルティは口止め料を払って事態の隠蔽を図っていた。
やや浮かない顔をしたままのエンパとコンショニアに、レオルティが言う。
「早速だが、お前達の技をみんなに披露してもらおう。まずはエンパ、お前からだ」
「……はい。では、そこの盾の方、こちらへ来ていただけますか?」
「おう」
指名されたのは“防御”適性を持つドルジスだった。巨大な一枚盾を両手で持つ彼は、指名に応じて前に進み出る。エンパは魔力を集中させ、ドルジスに強化魔法をかけた。
「
「おおっ……」
「いかがでしょうか?」
たずねられたドルジスは、両手で盾を振り回してみる。
「すげえっ! 盾が軽い! 軽いぜっ! 今ならどんなモンスターの攻撃でも楽勝で弾けそうだ!」
「「「おおお……」」」
歓声を上げる“光輝ある頂上”のメンバー達。続いてコンショニアが、二振りの細身の剣をレオルティに差し出す。
「どちらかを選んでください」
「おう」
レオルティが片方を手に取ると、コンショニアはその剣に付与魔法をかけた。
「
選ばれなかった剣を別のメンバーが持ち、レオルティの持つ、付与魔法をかけられた剣と打ち合わせる。
ガキンッ!
付与魔法のかかっていない剣は、鍔元から真っ二つに折れた。また、“光輝ある頂上”メンバーの歓声が上がる。
「おおっ!」
「すげえ! 強度が全然違うぜ!」
「さすが“付与魔法”適性持ちだな!」
「「…………」」
浮かれる“光輝ある頂上”のメンバー達を、エンパとコンショニアは複雑そうな表情で眺める。その視線に気付かないレオルティは、メンバーを見渡して言った。
「これで分かっただろう。ブイルの奴がどんなしょぼい強化魔法や付与魔法を使っていたか知らないが、俺達の戦力は元通りに回復、いや、前とは比べ物にならないくらい上がったんだ。もうどんなモンスターも怖がることはない。運のいいことに、ちょうど今、Sランクモンスター討伐の依頼がギルドに来ている。こいつをサクッと片付けて、正式なSランクに昇格してやろうぜ!」
「「「おおーっ!」」」
両手を挙げて歓呼するパーティーメンバー達。コンショニアは、彼らを引き止めようとした。
「待ってください。付与魔法を受けて戦うのに、いきなりSランクモンスターは危険じゃないですか?」
「そうですね。もっと低ランクのモンスターを相手にして様子を見た方が……」
コンショニアに賛同するエンパ。だが、レオルティはそんな二人を怒鳴り付けた。
「うるさい! 俺達は元々Sランクの実力があるんだ! そこにお前達が参加して、究極の力を手に入れた。様子見なんかしなくても、どんなモンスターだって瞬殺できるんだよ!」
「「…………」」
黙り込むエンパとコンショニア。一方、ほかのパーティーメンバーはレオルティの言葉に納得してうなずく。彼らはすぐにギルドの建物に入り、Sランクモンスター討伐依頼の受注手続きをした。
一刻も早く前回の屈辱を晴らしたいと焦る“光輝ある頂上”のメンバー達は、今回のメンバー追加に思わぬ落とし穴が潜んでいることを見落としていた。
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