第18話 始まりは、水の世界から

 真琴たちは、ウルペースに連れられて白い塔の一階に来ていた。

 昨日は、ウルペースに塔の説明を受けた後、客室に案内されてからの記憶がない。

 真琴たちともまた頭がいっぱいになり、深い眠りにお落ちていたからだ。

 どちらかと言うと、眠りより気を失ってしまったという方に近い。


 今朝、ウルペースより使いの者が来て、この場所に連れて来られた。

 昨日と同じように球体の乗り物で一階に降り立った。

 既にウルペースが待っていた。

 ウルペースのオーラと言うのか、存在感が強いせいですぐに分かった。

 真琴たちは、速足で近づいていった。

「よく眠れたかしら?」

「ええ、ぐっすり」

「まだ、こちらの環境に慣れていないからです。

 前の世界の感覚が身体に残っていて、眠たくなってしまうそうです。

 早く慣れるといいですね。

 さて、お話したかったのは、この池のことです」

 ウルペースは、直径二十メートルくらいの池を指さした。

 池は、透明度の高い水で満たされていたが、底が見えなかった。

 何やら無数に動いているモノが見える。

「何か居るわね」

 絢音が池を覗き込む。

 ウルペースは、絢音の方に手をかけ引き戻した。

「注意したかったのは、そういところ。

 決して、この池には面白半分に近づいてはいけません。

 池と言うよりは、水の世界の入口なのです。

 水の世界は、とても広いのです。

 この世界と同じくらいの大きさがあるのです。

 あなたたちも、この水の世界から生まれた生き物のひとつ。

 ここには、数えきれないほどの生き物が生息しています。

 グベルナを始め、私たちが一生懸命考えたから。

 あなた方が学校で習った化石になった生き物もいるの。

 危ないと言ったのは、そんな大型の生物も居るということ。

 襲われて引きずり込まれたら、助けようがないのです。

 水の世界は、あまりにも広いので居場所がわからない。

 浅瀬でもあり深海でもあるこの水の世界は、

 あまりにも広すぎるので、中に入ったら居場所なんか分からないわ」

 真琴たちは、一斉にこの池から離れた。

「この水の力は、この塔の源なのです。

 この水から生まれたあなたたち、人間の元となります。

 この水から、生まれ出たあらゆる素材、エネルギーはこの漏斗型の塔を登って行き、先端にある螺旋塔エスピラールへ運ばれ、あなたたちの生まれ変わりの元になります。そして、あなたたちは再生される。

 とっても、大切な場所なので、ここには近づかないでほしいのです。

 わかりましたね」

 真琴たちは、頷くしかなかった。

 ウルペースは、分かりましたかと真琴たちの顔を見渡した。 

「注意は、ここまでです。

 後は、好きなように見物してください。

 帰りたくなったら、帰って結構です。

 あっ、帰れるのはあなただけね」

 真琴の肩を叩く。

「二人は、生まれ変わるまで待ってください。

 時期に身体が消えてしまうので慌てないで、エスピラールに呼ばれるから」

 ウルペースは、絢音と響介の間に入り、二人の肩に手を添えた。

「ここには、人間が創ったものは何でもあるの。

 本や写真、映像、音楽も何でも揃っているわ。

 ただ、あなたたちの世界にあるものと異なるのは、編集されていない事。

 原物があるの。すごいでしょう。

 あなたたちの世界には、嘘もいっぱいあるでしょ。

 私たちが管理しているから、本当の事かと嘘の事かも判別した印も付いている。

 そのモノが本物かどうかは、作者に確認しているから、信じていいわ」

「あっ、そうだ。生きている君。

 爺さんから、頼まれているだけど、君は前の世界に戻らなくちゃだめよ。

 探検しすぎると迷子になって帰れなくなるから。

 いままで、迷子も何人かいたみたいだから、気をつけて」

 ウルペースは、そういうと行ってしまった。


 真琴たちが、球体の乗り物に入ると勝手に上昇し、ある階で降ろされた。

 そこは、西洋の城下町のような所だった。

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