第45話 迎えに来た
バルバルス二体が、絢音と響介の前に立ちはだかっていた。
そして、振り上げた大きな拳を振り下ろそうとしていた。
壁を背にした絢音と響介が、両手でガードしようとした。
だが、二人の手は消えていた。
同時に背中に壁からの振動を感じていた。
「来た!」ウビークエが、叫ぶ。
後ろの壁から、線状の光が次々と漏れ出た。
放射状の光だ。
真琴たちの後ろの壁に、直径三メートルの円が、その線状の光で描かれた。
ゆっくりと壁に穴が開き、部屋の外側に崩れ去った。
外からの光が眩しい。
その光の中に、二人の影が見えた。
バルバルスが絢音と響介に大きな拳を振り下ろし始めた時、閃光がバルバルスの腕を貫くと、大きく太い腕がその場に落ちた。
バルバルスは、煙の出る自分の腕を眺め、自分の身に何が起こったか理解しょうとしていた。
壁の円形に穴から現れたのは、カラスと若者だった。
「助けに来たぞ!、まかせろ!」
真琴たちとバルバルスの間に、カラスとロブスが立ちはだかる。
若者は、真琴たちに手を軽く上げて挨拶をした。
この世界に来た時にも助けてくれた事が思い出された。
彼は、いつも助けに来てくれる。彼が居るなら大丈夫だ。
「なぜ、この場所がわかった?」と真琴が呟いた。
それを聞いたウビークエが、真琴に翻訳機を向けた。
翻訳機の画面のカラスのアイコンが、赤く点滅している。
そうか、お前かと真琴はウビークエとグータッチをした。
カラスの手に、背丈ぐらいの長さの杖が握られていた。
杖を高くかざすと、杖の上端についている玉が光る。
カラスが、力を込めて杖を床に差し込む。
玉から、閃光が発せられた。
その途端、ハエのような小型ドローンは、次々と床に落ちて行った。
バルバルスは、古代遺跡の石像のように凍り付いたように動きを止めた。
「皆、その穴から出ろ!」若者が叫んだ。
外には、白い塔で移動に使われる透明な球体が待機していた。
みんな、次々と乗り込んでいく。
パイロとオピフが、動きを止めたノウムを見つめていた。
「パイロ、行くぞ!」
真琴がパイロとオピフの襟に手をかけ、力ずくで引きずって行く。
二人は、引きずられながら、ノウムを見送った。
バルバルスの奇襲の結果が、銀の創造主に伝えていた。
「バルバルス、小型ドローンが全滅しました。白い塔から援軍が来て、全員連れていかれました」
銀の創造主は、じっとしている。
「創造主様、奇襲は失敗です」
「分かっている!」銀の創造主は、話を遮った。
「スーパーバルバルスの完成を急げ!私が直に操縦できるようにしろ!」
「白い塔に攻め込むのですか?それは……」
「それは、無理だろう。あそこには手出しできないのは、私も知っている。
あの爺が外界から招待しようとした三人を一人に減らしたのだ。
我々に出来ないことはない。残った一人を外界へのメッセンジャーをこの世界から、出さなければ良いのだ。白い塔ではない、他の場所で阻止するのだ」
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