第30話 行けるよ。銀の塔へ
庭園のガゼボに残ったのは、真琴たち三人とウビークエの四人だった。
そして、ウビークエは、シュークリームに夢中だった。
真琴たちは、黙ったままだった。グベルナの言った事を頭の中で整理していた。
最初に口を開いたのは、真琴だった。
DNAラボの話を始めた。
もちろん、DNAラボ出会ったコッレークとスクルタの事も話した。
そんなマンガみたいな博士たちに、私も会ってみたいと言うのが二人の反応だった。
「そのDNAラボって所で、僕ら人間を造ったって言うのか。そんなことのは習わんかった」と、響介。
「習うはずないだろ。でもさ、受粉の為に異性の虫の姿に似せた花を咲かせるとか、種を遠くに運ぶための種の形だとか、偶然生まれてくるとしたら、膨大な時間が必要だし、化石とか発見されるはずさ」
「そうだな、待ってるより考えて作った方が、早いな」
「グベルナは、僕らにとって神みたいなもの?」絢音も確認する。
「そうかもしれない。その神様たちが気にしていたのは、新型ウイルスだった」
「ウイルス?」
「そのウイルスは、グベルナたちが関与したものでない人工的なウイルスだという事と感染を恐れた人々の急な孤立化をもたらしたって事」
「SNSがあるから、あっと言う間に広がるわ。情報操作したってこと?誰が?孤立化させる目的で?コックとパテシエやパイロが居なくなったのも関係あるの?」
「あるのかな・・・・・・」と、真琴があいまいに答えた。
「全部、銀の塔が絡んでいるの?」
「今のところ、銀の塔だ。ウイルスを造れる事とパイロ誘拐については、黒に近いグレーってヤツ」
「じゃ、コックとパテシエが居なくなったのは?」
「僕は、それも銀の塔だと思っているんだ。どちらも、共通しているのは食べることで、それも一流の料理人だ。美味しいものを食べるとどうなる?」
真琴は、考えを口にした。
「幸せになるわ」
「その後、眠くなる」そうねと絢音は響介を見て笑った。
あっそうだ、安心するってこと?と、響介が付け加える。
「そうだな、人間は食べなくては生きていけない。食べ物があると言うことは、安心するよね」
「それと、美味しいものに出会ったら、友だちに教えたくなるよね。一緒に食べてみんなで幸せになれるように」
絢音の意見は、女性ならではの発想だなと真琴は感じていた。
生きる為の情報のやり取りは、男性より女性の方か優れていると日ごろから思っていたことだ。彼女たちの会話は、スイーツ事や安売り情報だとか、情報は盛りだくさんで、驚かされる。それに比べて、男の情報はあまり生きるために役立たない情報ばかりだ。
「そう、そこにコミュニケーションが生まれる。つまり、孤立化に逆行する」
「そうね。誰かが、孤立させようとしているなら」
「何の為に?」響介が呟く。
うーん、真琴と絢音は唸ってしまった。わからない。
「銀の塔が、問題ね」
「進化した人間が居るって言っていた。作ったのは僕たち人間だって」
「ああ、そうらしいな」
「機械って言ってたよね。AIを搭載した機械?ロボットってこと」
「それって、人間じゃないよ。人間は生物だからさ」
「新しい何かってことだな」
「どうもよくわからないな」
「銀の塔に行ってみる?」
絢音の提案に顔を見合わせる。
「いや、行けないって言ってたよね。言葉も違うって」
「でも、パイロを見つけないと、私たちには時間が・・・・・・」
それ以上話すなと響介が絢音の手を引いた。
「……パイロを見つけて、真琴を元の世界に返さないと」
「ありがと、僕の事だね」
「僕らの事は、気にしないで。また、どこかで会えるさ」
そうだなと真琴と響介が握手をした。
「行けるよ。銀の塔に」
真琴たちは声をする方に顔を向けた。
それは、シュークリームを食べ終わったウビークエだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます