第31話 潜入方法
「行けるよ。銀の塔に」
そう言ったのは、ウビークエだった。
シュークリームのカスタードが口に付いてるわよと絢音が自分の口元に指を当てた。
どこどこ?とウビークエは、絢音と顔を見合わせたが、結局、絢音がウビークエの顔についているカスタードを人差し指で取り除いた。
ありがととウビークエが微笑んだ。
「ねぇ、それは本当?」
「うん」
「なぜ、知ってるの?」
「行ったから」
「なぜ、さっき言わなかったの?」
「訊かれなかったから」
「で、どうやって行ったの?」
「リサイクルセンターから行ける」
「リサイクルセンター?」
「いらなくなった物を直したり、別の物を作ったりするとこ」
「それは、どこ?」
「地下だよ」
「地下?」
「塔のゴミは、リサイクルセンターに集まるんだ。上の階にゴミ箱があって、そこに入れると地下まで落ちてくるんだ」
それでと絢音が促す。
「この塔と銀の塔のゴミは、リサイクルセンターに集まるんだ。つまり、繋がってる」
真琴たちは顔を見合わせる。
「連れてってよ」
「わかった、ウビークエ、皆連れて行く」
「さすがに気付かれるだろ?」と響介。
「そのままだったらね。セイタンってのがあるんだ」
「セイタン?」
「銀の塔の入口には、セイタンっていう装置があるんだ。僕たちが通るとビーってなるんだ。そしたら、入れない」
響介が、呟く。
「キンタンの逆だ。空港の搭乗口にあるアレだ。危険物を持ち込ませないようにチェックする金属探知機の逆で、生体をチエックすると言うことか」
「でもね、大丈夫、変装するから」
「銀の塔の住人は、ロボットなんだ。だから、リサイクルセンターでロボットを見つけて、中の機械を外すと鎧みたいに着れる」
「それを着るのか……。コスプレだな」
おもしろそうと、絢音の口角が緩む。
それを見た、響介と真琴は、コスプレ決定だなと思っていた。
「それで、バレない?」
「こうやってロボットのフリをするんだ」ウビークエは、カクカクのぎこちない動きをした。
真琴は、笑いをこらえながら言った。
「そんなんでいいの?」
「それと・・・・・・」
ウビークエは、ガサガサとポケットをまさぐると、小さな箱を取り出した。
はいと絢音に渡した。
「スマホ?」
「これをどうするの?」
「奴らはこれをいつも見てる。他のところあまり見てない。この箱の中の人と話する。みんな箱の中の人と仲良し。近くに居る人と話すことない。近くに居る人が箱の中に居る人でも話さない。だから、これを見ているフリをすれば、気付かれない」
ウビークエは、鼻の孔を大きくして得意そうだ。
「これも、リサイクルセンターに落ちてる」
「僕らを連れて行ってよ」
「わかった!」ウビークエはうれしそうだった。
「あっ、忘れてた。銀の塔の人たちは食べないから、飲み物とちょっとした食べ物を持ってきて」
準備もあるので、明日、出掛けることにした。
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