第14話 招待

 コロニクスは、カラスの姿で高い樹の上にとまり、三人を探していた。

 目を凝らす、耳を澄ます。

「カーカーカー」仲間からの連絡を待つ。

 焦ることはない、時機に見つかるさ。

 コロニクスは、広大な大地を見渡す。

 白い塔には、この道しかないのだ。

 真っすぐな一本道だ。

 ただ、じっと眺めるがこの視界の中に動くものがあるはずだ。

 風とかじゃなく、全く違った動きをするものが。

 自然に生きる者が持つ能力。

 動くを察知する能力。

「見つけた」

 コロニクスは、大きく息を吸い込むと飛び立った。

 動くものへと一直線に。

 三人ではなく、四人だ。

 もう一人は、樹の王”メトセラ”ではないか。

 なぜ、一緒に居るのだ?。

 近くの樹にとまって様子を見る。

 メトセラがこちらを見て指さしている。

 バレたか?さすが、樹の王だ。

 コロニクスは、四人の上を円を描き滑空する。

 四人は、警戒し身を隠した。

 構わずコロニクスは、傍に降り立った。

 歩を進めていく度にカラスから人型へ姿を変えていく。

「いやぁ、諸君。出てきてくれ。話がある」

 草むらに隠れていた四人を顔を見渡すと、身構えながらゆっくりと腰を上げた。

 コロニクスは、その様子を見てすぐに言った。

「襲わないから安心したえ。おやおや、これは、樹の王メトセラ様」

 コロニクスは、膝を折ってメトセラに挨拶をした。

「なぜ、こやつらと一緒に?」

「爺さんに頼まれてな」

「爺さんか……。この件を教えられてないのは私だけだったらしい」

 コロニクスはくるっと振り返って両腕を軽く上げた。

「お前さんが、遊びまわってるからじゃないのか?」

「遊びではない。巡回している、立派な仕事だ。変な奴らが来ないか見張っている」

 と言って三人の様子を伺う。

「僕らは変な奴らじゃない」

 真琴が、苛立ちながら言う。

「わかっているさ」とニヤニヤしている。突然、姿勢を正した。

「グベルナ様の命により、お前たちを白い塔に招待する」

と、言うとコロニクスは懐から、三十センチほどのロケット花火を取り出し、地面に刺し導火線に火をつけた。

 もくもくと煙を出し、あっと言う間に空に上がり破裂した。

 コロニクスは、花火を見上げて、「これで、馬車が迎えに来る」と言い残すと上空へと姿を消した。


「グベルナ様?」絢音がメトセラに問いかける。

「私が樹の王なら、グベルナは白い塔の王だ。馬車が来るなら楽ちんだな」

「へぇー」まあ、三人はそう言うしかなかった。


 暫くすると、四頭立ての白馬が馬車が現れた。

 その美しさに三人とも言葉を失った。

「お姫様みたい」と絢音は、白馬や馬車を触りまくり、勝手に扉を開けて乗り込んだ。

 馬車は、ゴトン、ガタンと音を立て動き出した。

 馬車の窓から、流れる景色を眺める。

 規則正しい揺れる馬車は、揺り籠のように三人の不安をかき消していた。

 真琴が、眠たそうな目をしている。

「見たもので、頭の中がいっぱいさ。ちょっと疲れたかな」

「僕も色々な音で、楽譜でいっぱいなのさ」

「私も情報で頭がいっぱい。」

 ふわふわの座り心地は、三人を眠りに誘い込んだ。

 幼稚園の頃のお昼寝タイムのように。

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