第13話 真琴とメトセラ

 白い塔を目指して歩いていた。

 四人で歩くと自然と二人ずつになってしまう。


 真琴と樹の王、絢音と響介の組に分かれていた。

 真琴は、先を歩く響介と絢音を見ていた。

 こうしてみると、二人はデートしているように見える。

 お似合いのカップルだ。

 そう、お似合い。

 僕ら真琴たちは、小学校まで一緒だった。

 僕らは、気があっていた。

 いつも一緒。

 だけど、真琴は響介と絢音の間には入れない。

 幼稚園の時の告白で、選ばれたのは響介。

 真琴は、響介の次に好きだって言われた。

 残念だったけど、大好きな二人が笑顔なら、それでいいと思っていた。


「僕は、邪魔かな?」

 メトセラが、真琴の顔を覗き込んだ。そんなことは無いと、真琴は首を振った。

「爺さんから頼まれたし、

 あの白い塔に向かうなら付いて行かない訳がない。

 私も気になっていたから。

 白い塔の横に銀色の塔が見えただろう。

 建設中だが、凄い速さで伸びている。

 白い塔を追い越すかもしれない。

 それを造っているのは、どうやら君たちの仲間らしいが……。

 君たちの次の世代の生き物かもしれない」

「僕たちの?」真琴は、メトセラを見た。メトセラは、銀色の塔を見つめ話を続けた。

「君たちの一部が、君たちを元に新しい生き物を造っている」

「新しい生き物?」

「まだ、誰にもわからないさ。確かめたいのだ。アレは、何の塔なのか?

 我々の対して危険なモノなら、対策をうたなければならない。

 我々自身を守るためにな」

 と、メトセラは顎を軽く上げて目を細めてその塔を見た。

「君たちの塔も最初はそうだった。

 私たちには何が出来るか分からなかったんだ。

 いつの間にか、二足歩行し、言葉や道具を使った。

 樹の王として、焦ったね。なんとかせねばとね。

 このままでは、我々、植物が亡くなってしまうからね」

「何か手を打ったんですか?」

 メトセラを横目で、真琴を見降ろしながら言った。

 メトセラは、しゃべろうか躊躇していたが、内緒だという様に声をひそめた。

「食べ物を与えた。穀物だ。

 あっという間に、君たちは僕らのプレゼントに受け取った。

 それからの君たちの動きは速かった。

 君たちは、面白いよ。

 僕らは、ただ、食べるものを提供しただけなのに、

 それを持ち者持たない者を作り上げ、それを取り合い、戦争まで起こした。

 全く驚いたね。与えなければ良かったとも思った。

 そして、その時だけの独特な価値を作り上げ、取り合っている。

 狩猟時代の方が、得られた物を分けて暮らしていたのに。

 食としては、貧しいが今より遥かに平等だったのに」

 真琴も人類の歴史を学んでいたので、大体のことは理解できた。

 そう、中にはそのような人間が存在し、利益をむさぼっている。

「それが作戦?」と、真琴が言いながら気づいてしまった。

 樹の王が考えたことを。

 穀物に依存させると言うのが、狙いだ。

 邪魔になったら、それを取り上げれば済むからね。簡単だ。

 真琴は、怖い話だと感じ、ゆっくりろメトセラを見上げた。

「そうだ、今、君が考えていることに間違いない。

 仕方ないだろう、私は樹の王なのだから」

 メトセラは、遠くを見ながら話した。

「でも、僕たちのプレゼントはうまくいくこともあるんだ。

 例えば、ミツバチ。お互いを必要とする関係。

 ミツバチは花から蜜を貰い、花はミツバチに受粉を助けて貰う。

 最高だろ」

 メトセラは、嬉しそうに笑った。

「白い塔は、君たち人間の塔さ。

 君たちが塔を作り上げる。

 君たちは数多くの失敗もしている。壊れている塔は、失敗した塔の残骸だ。

 今度こそ、良い塔を作ってくれ」

 メトセラが、微笑んで真琴の顔を見た。


 不意に振り返ると、響介が絢音を抱いているように見えた。

「何してんだぁ!」

 真琴は、思わず二人に声をかけ、手を振った。

「何でもない」

 直ぐに絢音が答えるそして、こちらに走ってきた。

 響介も少し遅れて追いかけてきていた。

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