第40話 誕生日ケーキをあなたに
その部屋には、 パイロ、コックのコクウス、パテシエのドウルケとオクルスが居た。
オクルスが、何やら彼らに説明しているところだった。
ノウムを先頭に部屋に入って行くと、オクルスが気付いてこちらにやって来た。
「これは、ノウム様。この者たちに新しい料理の本をお持ちしました」
「ご苦労、渡してやってくれ」
「かしこまりました。あの……、その者たちは?」
オクルスが、真琴たちの方に目を移した。ノウムは、その目線を追っていく。
「ああ、連行された人間だ。これから、話を訊くところだ」
「恐れながら、ノウム様。創造主様の許しは・・・・・・」オクルスが言いかけた時、ノウムに睨みつけられた。
「許しが無ければなんだ?」
「いえ、いえ、何でもございません」と言いながら、ノウムに頭を垂れ後ずさった。
その時だった、ウビークエが驚きの行動に出た。
「みんな、ここに居たのぉ」
と、パイロたちに手を振り、近づこうとしていた。
「あっ」と思ったが急なことでどうしていいかわからない。
反応できたのは、やはり響介だった。ウビークエの腕を掴む。
ウビークエの着ていたロボットのボディが音を立てる。
真琴たちは、ノウムの顔を伺った。
確か、作戦Bとは三人の人間を連行したこの塔の住人ウビークエとオピフと言う体ではなかったのか?
その視線に気付いたノウムが、下を向き笑いをこらえている。
小さな笑いから大きな笑いに移行していく。
「わ、笑った・・・・・・アンドロイドが」絢音が呟く。
笑い終わると、真琴たちを見渡した。
真琴たちは、身構える。どうなる?
「君たちの行動は、分かっているんだ。カメラで監視していたからな」
と、ノウムが、天井の点灯している赤いランプを指さした。
「これで、君たちを監視していた。君たちが”浮浪者”と呼ぶ”バルバルス”を倒したことには驚いた。なかなか強いな」
やっぱりバレるよなとウビークエとオピフは、顔を見合わせロボットのボディを外した。
「こちらで、話そうか」と部屋の奥にあるテーブルを指さした。
真琴たちはどうしたものかとゆっくりと席についた。
「ドウルケさん、お茶の準備を」
ドウルケとコクウスが持ってきたのは、紅茶とチョコレートケーキだ。
「十一種類のケーキを用意しました。お好きなモノをどうぞ」
と、ドウルケの笑顔から自身が伺える。
瞳孔が開くのが自分でもわかる。
十一種類のチョコレートケーキ、なんと魅力的なんだろう。
それにしようか迷ってしまう。
ウベークエは、身体を揺らして、食べるのを我慢している。
真琴たちの様子を見て、これは話どころではないなと暫く見守ることにして、ドウルケと話すことにした。
「ドウルケさん、あなたの腕前は噂通りらしい。あなたのケーキに夢中だ」
「喜んで食べる顔を見ることが、私の楽しみなのです。オクルスさんに頂いた色々な食べ物のレシピは大変参考になりました。とても刺激的な色々なレシピを拝見しました」
「人間は、ケーキが大好きなようだね」
「そうです、大好きです。イベントがあれば、間違いなく食べる。うれしい時や悲しい時にも食べるのです。
そうすれば、元気が、笑顔が手に入るのです。私たちパテシエは、その笑顔を見るためにケーキを作るのです。うれしい時は、幸せな気持ちを分け合うために、悲しい時は、涙を流し明るい未来に歩き始める力を得るために」
「そういうものなのか。私にも、そんな時はあると思うか?」
ドウルケは、ノウムを見た。
「ありますよ、誕生日とか」
「誕生日・・・・・・。私が作られた日か……、私にもイベントがあるんだな。確かに、私はここに存在している。この世に生まれた来たのだ。今まで、考えてみたこともなかった」
「今、作りたいケーキがあるのです。イチゴ、イチゴケーキです。最高のイチゴ農家を見つけたのです」
と、目を輝かせながらドウルケが答えた。
「……是非、食べてみたいな」ノウムが呟く。
「食べてください。味はこのドウルケ様が保証します。あなたの為に誕生日ケーキをつくります」と、ドウルケが胸を張った。
「誕生ケーキ、それは楽しみだ・・・・・・」ノウムは、微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます