第44話

悪魔山ができたのも、それが原因だった。



「だけどね、それも善しあしなんだって」



「え?」



あたしは梓の言葉に首を傾げた。



「名前を手に入れた怖い物は、その名称で人々に呼ばれるようになる。そうするとね、意識を持ち始めるんだって」



梓の話しにあたしは瞬きをした。



「例えばさ、この空間なんだか怖いなって場所があったとするでしょ? そんな時人はその場所の事を心霊スポットと呼んだりするんだよね。そうすると、何もない場所でも本当に幽霊が寄りついてしまうんだって」



「そんなことがあるの?」



あたしの質問に梓は肩をすくめた。



「さぁね? あたしのお爺ちゃんはそう信じてた」



もし、梓のお爺ちゃんの話しが本当なら、悪魔山は本当の悪魔としての意識を持ち始めたのだろうか。



その結果、ソレが誕生した……?



考えて、ゾクリと背筋が寒くなった。



ソレは悪いことばかりするワケじゃない。



母親の願いを叶えてくれた。



「友里、悪魔山に行ったんじゃないよね?」



梓のその質問には、答えることができなかったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る