第37話

☆☆☆


ソレがすべてを食べ終え、臭いが消えたのを確認して、あたしはのんびりと自分の時間を堪能した。



今から学校へいくつもりはないし、昼間に好きな事ができるなんて久々のことだった。



ソレの姿が見えなくなったのは寂しいけれど、それ以上に嬉しかった。



今まで見れなかったテレビを見て、食べられなかったジャンクフードを食べる。



寝室を確認するといくらかのお金と、通帳があったのでしばらくお金には困らないだろう。



それに、あたしには両親が残してくれたお金もある。



ここ以外に頼る親戚や祖父母だって、もちろんいた。



心配することなんてなにもない。



お腹がいっぱいになってソファで横になっていると、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。



大あくびをして時間を確認する。



夜の11時を過ぎたところだった。



「そろそろかな」



そう呟き、簡単に顔を洗って表に出た。



外はずっかり暗くなり、街灯の明かりがついている。



あたしは迷うことなく、真っ直ぐに交番へと来ていた。



「どうかしたの?」



若い警察官が、こんな時間の訪問者に驚いている。



「あの、叔父と叔母がまだ帰ってこないんです」



あたしは仕事が終わる時間になっても2人が帰ってこないと、適当に説明をした。



一応、捜索願を出しておかないと後々なにか疑われるかもしれないし。



「ちょっと待ってね」



警察官はそう言うと、奥へと引っ込んんでしまった。



そうだ、今の内に祖父母にも連絡しとかなきゃ。



そう思い、スマホを取り出した。



祖父母とは月に1度は連絡を取り合っていて、叔父と叔母の様子を報告していた。



何度もあたしを引き取りたいと叔父と叔母にかけあってくれているが、あの2人が承諾しなかったのだ。



祖父母に連絡を入れると、今からここへ来てくれると言ってくれた。



車で1時間はかかるのに、すごく心配してくれている。



祖父母が来てくれるまで、心細さを演技するのは大変だった。



警察官をちゃんと騙せたかどうかわからない。



祖父母が来てくれて家に戻って来たときは、さすがに疲れ切っていた。



家に帰ってソファに沈み込んでいるところに、透からのメッセージが来た。



《透:今日俺の家に来るか?》



それだけの文面にあたしは目を輝かせた。



きっと、あたしが今日学校へ行かなかったから心配してくれているのだろう。



だけど、今日はこの家に祖父母が泊まってくれることになっているし、どうしようか……。



悩んでいたとき、祖父母がリビングに入って来た。



2人とも突然のことで混乱し、疲れた顔をしている。



「大丈夫? ごめんね急に呼び出して」



慌てて謝ると、祖母があたしの手をにぎりしめてきた。



シワシワだけど、柔らかくて優しい手。



「いいんだよ。それより1人で心細かっただろう。迎えに来てやれなくてごめんね」



そう言って祖母はあたしの手をさすった。



「ううん大丈夫。あたし、家事全般できるようになっちゃったもんね」



おどけてそう言うと、祖父が顔をシワシワにして笑ってくれた。



「今日はここに泊まるけど、明日は仕事がある。友里、どうする?」



祖父にそう聞かれて、あたしは「大丈夫。友達がいるから」と、返事をした。



きっと、自分たちの家に来なさいと言っているのだろう。


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