第41話
叔父や叔母のような傲慢な人間は誰もいない、優しい家族になるんだ。
学校までの道のりを透とじゃれ合いながら歩く。
それだけで気分は違った。
それなのに……「あれ?」ふと視線を感じて立ち止まっていた。
周囲には行きかう生徒やサラリーマンの姿。
車も沢山通っている。
通勤、通学の時間帯だから普通の光景だった。
「どうした?」
「なにか、視線を感じて……」
「またか? 最近多いな」
叔父と叔母が死んでから、時々こうして視線を感じることがあるのだ。
周囲を見回してみても、あたしを見つめている人はどこにもいない。
「叔父さんと叔母さんがいなくなって、ちょっと気が立ってるんじゃないか?」
透にそう言われ、あたしは曖昧に頷いて歩き出した。
そうなのかもしれない。
自分では平気なつもりでいたけれど、手や頭が食べられるシーンを間近で見たのだ。
なんらかの影響が出ていても不思議じゃなかった。
2人がいなくなってくれたことが嬉しすぎたから、今まで平気だったんだと思う。
透と一緒に雑談をしながら教室へ向かうと、夕夏が走って近づいて来た。
その顔は青ざめている。
「どうしたの夕夏?」
「このニュース、見て!」
そう言ってあたしと透に見せて来たのは、スマホニュースだった。
登録しておけば、毎日ニュース番組を教えてくれるアプリだ。
「隣県で行方不明者が増えてるって!」
夕夏の言う通り、隣の県で数人の行方不明者が出ているらしい。
そう言えば、夕夏の友達も隣県の子だっけ。
そう思い出し、夕夏が青ざめている理由がわかった。
「きっとただの偶然だよ」
あたしはそう言って夕夏の腕をさすった。
「でも、こんなに次々人がいなくなることってある? 友里の叔父さんや叔母さんだって……」
そこまで言い、夕夏は口を閉じた。
周囲を気にしてクラス内を見回している。
「あたしのことは気にしないで。それに、共通点なんてないと思うしさ」
あたしは夕夏へ向けてそう言った。
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