第42話

実際のところはどうかわからない。



夕夏の友達は悪魔山へ行っているし、もしかしたら繋がりがあるかもしれない。



でも、まずは目の前にいる夕夏をなだめることが先決だった。



「友里、友里はいなくなったりしないよね?」



青ざめた顔で夕夏がそう聞いてくるので、あたしは驚いて目を丸くしてしまった。



どうしてあたしがいなくなるなんて思ったんだろう?



叔父さんと叔母さんが行方不明だから?



「あたしはここにいるよ。だから大丈夫」



あたしはもう1度、夕夏へ向けてそう言ったのだった。


☆☆☆


2時間目の授業の準備をしている間、あたしのスマホが震えた。



なにかと思って確認をしてみたら、知らない相手からのメールだった。



迷惑メールかなにかかな。



そう思って無視しようとしたとき、送り主の名前に見覚えがった。



それは以前悪魔山について調べた時、出て来たサイトの管理者の名前だったのだ。



「あ、そういえばあたしからメッセージを送ったんだっけ」



悪魔について詳しく知りたくて、サイトからメッセージを送ったことを思い出した。



サイトは更新されていなかったし、随分と時間が経過していたのですっかり忘れてしまっていた。



今さら返事が来ても、聞く事なんてなにもないんだけどね。



そう思いながら送られて来た文面を確認する。



《ブログの管理者は死にました》



とても短い文章。



あたしはそれを見て口をポカンと開けていた。



死んだんだ……。



相手のことはなにも知らないし、ちょっとメッセージを送っただけだ。



それでも死んだと聞くと心にポッカリと穴が開いたような気分になった。



わざわざ知らせてくれたいんだし、なにか返事をした方がいいだろうか。



そう思っても、指が動かない。



どんな言葉を紡いでみても、何も知らないあたしが言うには少しおかしい気がした。



結局あたしは返事をすることができないまま、2時間目の授業が始まったのだった。



☆☆☆


気分が乗らないまま昼休憩が来て、あたしは透のお母さんが作ってくれたお弁当を広げた。



中身は透のお弁当と一緒で、なんだか照れてしまう。



「今日のお弁当も美味しそう!」



梓がそう言ってきたので、卵焼きとウインナーを交換した。



「ねぇちょっと、2人とも」



「どうしたの夕夏、そんなに慌てて」



スマホを片手に持った夕夏があたしたちに駆け寄って来る。



「これ、見て!」



そう言ってスマホ画面を突き付けられた。



画面上にはニュース速報が表示されていて、隣の県での行方不明者がまた増えたと伝えていた。


ここ最近では1日に2~3人ずつ誰かがいなくなっているらしく、ちょっと異常な数だった。



「なにこれ、集団失踪?」



梓がそう言ってご飯を口に運ぶ。



「いなくなった人たちの共通点はないんだって。老若男女、いろんな人が忽然と姿を消してるの!」



夕夏が熱弁を振るうので、梓は戸惑っている。



「夕夏、友達がいなくなったことは心配するけど、なんでもかんでも結び付けて考えるのはよくないよ?」



あたしは冷静な口調でそう言った。



「だって……」



そう言い、口ごもる夕夏。



「友達はきっと見つかるよ。それに、あたしの叔父さんと叔母さんもね」



あたしはそう言い、ほほ笑んだのだった。

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