第40話
「友里は、俺の事どう思う?」
熱い透の体温、言葉、気持ちがあたしになだれ込んでくる。
これほどまでの幸福を感じたことは今まで1度もないかもしれない。
この手を離してはいけない。
あたしは幸福を手に入れるんだ。
「あたしも、透のことが好き」
そう伝え、あたしたちは唇を合わせたのだった。
☆☆☆
付き合い始めた翌日の朝は、なんだか恥ずかしかった。
いつも通りキッチンでご飯の準備を手伝っていて、そこに透が入って来る。
透のお父さんもお母さんもいるのに、新婚さんになったような気分がした。
「今日も、一旦家に戻るんだろ?」
学校までの道のり、透にそう質問されてあたしは頷いた。
洗濯物はできるだけ自分の家でするようにしている。
汚れものまで透のお母さん任せにするわけにはいかなかった。
「友里って遠慮する性格だよなぁ」
そう言う透にあたしは首を傾げた。
「そう?」
「そうだよ。風呂だっていっつも最後じゃん」
それは叔父と叔母と一緒に暮らしている時からの癖だった。
自分で掃除をしたお風呂に、一番後に入る。
それが当然のこととして生きて来たからだった。
「あたしは居候の身なんだから、そのくらい謙虚で当たり前でしょ」
「それなら、早く家族にならないとな」
透の言葉にあたしは立ち止まってしまった。
「なに呆然とした顔してんだよ」
「と、透が急に変な事を言い出すからでしょ!」
そう言い、透を追い越して大股で歩き出した。
透と家族になる。
暖かな家庭を作る事ができる。
そう考えると本当に嬉しかった。
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