第39話

それから一週間が経過していた。



2人が見つかったという報告もなく、あたしは透の家と叔父の家を行ったり来たりする生活を続けていた。



夜に女の子が1人でいるのは危ないからと、透のお父さんが家に来るようにと提案してくれたのだ。



学校から戻ったら一旦叔父の家に行き、洗濯物を片付ける。



そして必要なものだけ持ってすぐに透の家に行くのだ。



透と2人だと勉強がはかどるし、家事を手伝えばちゃんと感謝してもらえる。



そんな生活は本当に楽しかった。



「友里ちゃんは本当に料理が上手ね。すぐにでも透のお嫁さんになってほしいくらい!」



から揚げを上げている横でそんな風に言われると、嫌でも意識してしまう。



今までも透のことは好きだったし、それが恋愛感情に変わるのは簡単だった。



「叔父さんと叔母さん、本当にどうしちゃったんだろうな」



2人でテーブルを挟み、向き合って課題をしている最中透がそう言ってきた。



「さぁ……。奔放な人たちだったからね」



あたしは気のない返事をする。



しかしそれが、深刻そうな声に聞こえたようで、透はペンを置いてあたしを見た。



「きっと帰って来る。大丈夫だから」



そう言って手を握られたので心臓がドキッと大きく跳ねた。



透とは昔からの付き合いだけど、こうして手を握られた回数は少ない。



伝わってくる体温に、自分の体温が上昇して行くのを感じる。



透はこんなに至近距離にいてなにも感じないんだろうか?



「もし、2人が帰ってこなかったら、どうする?」



試にそんな質問をしてみた。



「その時は、ずっとここにいればいい」



そう言う透の顔がほんのりと赤く染まった。



「……それって冗談?」



「本気。友里ならずっとここにいても構わないから」



そう言われると嬉しさと恥ずかしさが混ざり合い、透の目を直視することができなくなってしまった。



「なに言ってんの。そんなの透のお母さんやお父さんが許さないよ」



「その時は俺が友里の家に行く」



透はあたしの手を離さない。



声もすごく真剣だ。



あたしはゆっくりと、視線を透へと移動させた。



透の頬は真っ赤に染まっているけれど、あたしのことをちゃんと見てくれていた。



「友里……俺たち、付き合おうか」



その言葉に時間が停止した。



『俺たち、付き合おうか』



透の言葉が何度もリピートされる。



「付き……合う?」



「うん。俺は友里のことが好きだ」



好きだと言われた瞬間、涙がこぼれていた。



「あれ、なんで涙が」



慌てて涙をぬぐうと、テーブルの向こうから膝立ちになった透が、あたしの体を抱きしめて来た。

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