第15話

なにかの病気かもしれないと思うと、気になって仕方がなかった。



あたしは平均よりも痩せ型だし、買い食いができない分みんなよりも太りにくいと思っていた。



それに、今朝制服のスカートを履いたときに少しキツク感じられたのだ。



昨日までなんとも感じなかったのに……。



仕方なく、スカートのアジャスターを移動させてサイズを合わせる。



「嘘でしょ……」



アジャスターを一番大きいサイズへと移動しても、まだ苦しさがあるのだ。



試に元の場所へ移動させてみようとしても、途中で止まってしまう。



「なにこれ、どういうこと!?」



焦りと恐怖で汗が滲んで来た。



ついさっきキツイと感じていたサイズが、もう入らなくなっているのだ。



こんなの普通じゃない。



咄嗟に、病気という文字が脳裏に浮かんできた。



なにか悪い病気なのかもしれない。



このまま放置していていいのかどうかもわからない。



あたしは意を決し、午前中に病院へ行くことにしたのだった。


☆☆☆


やってきたのは近所の内科だった。



「今日はどうされました?」



カウンター内の事務員さんにそう聞かれ、あたしは今朝の出来事を説明した。



事務員さんはチラチラとあたしの腹部に視線を送り、頷いている。



「おかけになって少しお待ちください」



「はい……」



制服姿の子なんてあたし以外にはいなくて、居心地が悪い。



隅の方に座っていると、思っていたよりも早く呼んでもらえた。



しかし、そこで聞いた診断結果が驚愕だったのだ。



「妊娠しています」



年配医師の一言にあたしは唖然としてしまった。



目を丸くしたまま固まり、なにも返事をすることができなかった。



「悪い病気かもしれないと思ってエコー検査をしたらね、子供影が見えたよ」



「は……?」



おだやかな口調でそう言う医師に、あたしはマヌケが返事しかできなかった。



「若いから色々大変かもしれないけど、もう堕胎できないところまで来てるから」



妊娠?



堕胎できないところまで来てる?



誰が?



「婦人科の先生はみんな優しいから、1度ちゃんと検査を受けて……」



医師の言葉が全然頭の中に入って来なかった。



「あ、あの」



医師の言葉を途中で遮り、あたしは思い切って言った。



「なにかの勘違いじゃないですか? だってあたし、まだ経験ないんです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る