第16話

☆☆☆


何度調べてもらっても、結果は変わらなかった。



あたしは妊娠している。



そして堕胎できないところまで赤ちゃんは成長しているのだ。



あたしには彼氏がいないし、そういう経験もない。



あの家にいて四六時中家事をしているのだから、そんな暇なくて当たり前だった。



あたしは自分の腹部に手を当ててみる。



朝よりも、もっと膨らんでいるような気がしてすぐに手を離した。



ここになにかがいることは確実みたいだ。



でも、なにが……?



不意に、夕夏の友人の写真を思い出していた。



女の子の腹部を突き破って出て来た黒い化け物。



思い出した瞬間、お腹の辺りにドンッと強い衝撃を受けて立ち止まった。



なにかにぶつかったような衝撃じゃない。



お腹の中から蹴られたような衝撃。



「胎動……」



呟き、サッと青ざめた。



続いて左右に強く首を振って自分の考えをかき消した。



そんなハズない。



あたしが妊娠なんてするハズないんだから!



自分自身にそう言い聞かせてみても、悪い予感は膨らんでいく。



心が重たくて学校へ向かう道の途中でついに立ち止まってしまった。



このまま学校へ行って勉強を受けることなんてできない。



あたしは鞄を持ち直し、細い路地へと足を進めた。



周囲には民家が立ち並び、その角には公園があった。



あたしは誰もいない公園に足を運び、ベンチに腰を下ろした。



座ると自分の体が重たくなっていたことに気が付く。



まるで本物の妊婦さんのようで、震えた。



「まさか、悪魔山へ行ったから……?」



あの日悪魔山へ行ってから自分はどこかおかしかった。



悪夢を見るようになったし、服のサイズも合わなくなった。



ただの偶然だとは思えなかった。



スカートのポケットからスマホを取り出し、もう1度悪魔山と検索をかけた。



山の写真を投稿していたサイトへと接続する。



あの山に関して、もっとなにか書かれていないだろうかと読み進めていると、都市伝説へ行きついた。



夕夏たちが行っていた、悪魔の話だ。



『この悪魔山には本当に悪魔が住み着いている。



悪魔は弱った人間の心に付け込み、自分の赤ん坊を産み付ける。



赤ん坊は生まれて来ると、まず母親となった人間の願いを聞き入れる。



でもその後は恐ろしいことが起こると言われている』



その文章を読み、あたしはまた自分の腹部に手を当てた。



まさか、ここに悪魔の赤ちゃんがいる?



そんなワケない。



そんなことあり得ない!!



更にブログを読み進めようとしたが、途中で更新が止まってしまっていることに気が付いた。



趣味でやっている人だと、よくあることだった。

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