第11話
☆☆☆
朝吐いてしまったあたしだけれど、お昼頃になるとすっかりお腹が減っていた。
今日のお弁当も透のお母さんが作ってくれたものだから、お昼がとても楽しみだったんだ。
「いただきます!」
元気にそう言って玉子焼きに手を伸ばす。
砂糖で味付けされていたほんのりと甘い玉子焼きに、頬っぺたが落ちそうになる。
「すごい食べっぷりだね……」
次々とおかずに手を伸ばすあたしに、梓が呆れている。
「透のお母さんの料理は絶品なんだってば」
あたしはそう言い、梓の口元にから揚げを持って行った。
梓は条件反射のようにそれを口に入れる。
「あ、おいしい!」
目を輝かせる梓に、自分が褒められたみたいに嬉しくなった。
「でしょ?」
「でも、また食べ過ぎるよ?」
そう言われると注意しなければと思う。
けれど、もうお弁当の中身はほとんど空になっていた。
「ねぇ、2人とも!」
ご飯を終えて雑談をしていると、慌てた様子で夕夏が教室へ戻って来た。
「どうしたの夕夏?」
あたしは夕夏が手に持っているスマホへ視線を向けてそう聞いた。
嫌でも昨日見た写真を思い出してしまう。
腹部から得体の知れない、黒い生き物が出てきていた。
あたしはその映像を脳内からかき消すため、左右に首を振った。
「昨日写真を見せた子と連絡が取れなくなった」
青ざめた顔でそう夕夏。
冗談ではなさそうだ。
「授業中じゃないの?」
梓がチョコレートをひとかけ口に入れながらそう言った。
写真に写っていた子は隣県の子だから、スマホが使える時間帯がわからない。
「たぶん休憩時間だとおもうんだけど……」
夕夏はそう言い、スマホの画面を見つめている。
何度もメッセージを送ったり電話をしたりしてたようだ。
それでも連絡がつかないらしい。
「妊娠がわかって大変なんじゃないかな?」
あたしは小声になってそう言った。
あの子は確かに妊娠している様子だった。
それが周囲の人にバレたり、説明したりしなくてはならなくなって、スマホを使い所ではないのかもしれない。
保護者の人にスマホを取り上げられている可能性もある。
「……本当に妊娠だったのかな……」
夕夏が小さな声で呟いた。
「え?」
あたしは聞き返す。
「だって、友達なのに彼氏がいたなんて聞いてなかったし」
それは昨日夕夏が言っていたことだった。
写真の子に彼氏はいない。
それなのに子供ができたようだと。
「友達に言えないこともあると思うよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます