第47話
透の温もりを感じていると、そのまま転寝をしてしまったようだ。
気が付くと1階から晩ご飯の匂いが漂って来ていて、あたしは慌てて飛び起きた。
「起きたか?」
横で透がそう声をかけて来る。
隣にはベッドもあるのに、あたしがそのまま眠っていたせいで、透も床に寝ていたみたいだ。
「ごめん、あたし寝ちゃって」
「別にいいって、このくらいのことで謝るな」
そう言ってあたしの頭にポンッと手を乗せる透。
「晩ご飯の準備、手伝ってくるね」
立ち上がろうとするあたしの手を、透が掴んで引き止めた。
「今日は俺の母親に任せて、もう少し話しがしたいんだ」
そう言い、透は起き上がった。
「話?」
「最近の隣県での行方不明事件のこと」
あたしは透の言葉を聞いてその場に座った。
「隣県の事件はあたしもよくわからない。あの悪魔山が関係しているのかどうかも……」
そう答えると、透は左右に首を振った。
「そうじゃない。今から10年くらい前、この街でも同じような行方不明事件があっただろ」
「え……」
そうだっけ?
10年前と言えばまだ7歳だった。
記憶を呼び起こしてみてもなかなか思い出せない。
そこで透がスマホを取り出し、当時の事件について検索してくれた。
《○○街で行方不明者相次ぐ!》
そんな記事と共に、当時いなくなった人たちの名前がズラリと並んでいた。
ザッと数えても20人はいそうだ。
「こんなことがあったなんて……」
当時ニュースで見たかもしれないが、すっかり忘れてしまっていた。
「この名前に見覚えないか?」
透が指さした名前を確認するとそこには上木康(カミキ ヤスシ)と書かれていた。
「上木って……もしかして照平のこと?」
上木照平(ショウヘイ)は同じクラスの生徒だ。
両親がいないらしく、施設で生活をしていると聞いたことがある。
「そうかもしれない。俺も照平の両親の名前は知らないんだ。だけど、母親を早くに亡くして、父親も同時期くらいに行方不明になったていうのは聞いたことがある」
「お父さんは亡くなってるかどうかわからないの?」
「そうみたいだ」
頷く透に、あたしはスマホ画面の記事を見つめた。
この康という人が照平の父親なら、照平はなにか知っているかもしれない。
「だけど、この街の行方不明事件と、隣県の行方不明事件が同じかどうかなんてわからないよ? 照平に話を聞きに行って、もし無関係だったら、昔の傷をえぐることになるかも」
あたしは早口でそう言った。
両親を失う悲しみは、誰よりも理解しているつもりだった。
いくら昔の出来事といえど、他人にズカズカ踏み込まれて嬉しいものじゃない。
「わかってる。責任は全部俺が背負うから、少しの可能性にかけてみないか?」
どうやら透は本気みたいだ。
下手をすれば友人関係が壊れてしまうかもしれないのに……。
それなら、あたしも覚悟を決めなくちゃ。
「わかった。照平に話を聞いてみよう」
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