第48話

☆☆☆


翌日。



放課後が来るのを待って、あたしと透は照平に話しかけていた。



「なんだよ、2人が話かけてくるなんて珍しいな」



帰ろうとしていた照平をひと気のない廊下へと呼ぶ。



「急に悪いな。ちょっと聞きたいことがあって」



「聞きたいことって?」



首を傾げてそう聞いてくる照平。



透に甘えてばかりではいけないと思い、あたしは口を開いた。



「照平の、ご両親についてなんだけど」



そう言うと、照平の表情が険しくなった。



誰だってそうだろう。



「なんでそんな話しなきゃいけないんだよ」



そう言って帰ろうとする照平へ向けて「あたしも両親がいないの」と、声をかけた。



照平は目を伏せ、その照平が立ち止まり、驚いた表情を浮かべてあたしを見つめる。



「幼稚園のころ、2人とも死んだ」



「……へぇ」



場に立ち止まった。



似たような境遇だったためか、話くらい聞いてくれるみたいだ。



「辛いことを思い出させるかもしれないけど、どうしても聞きたいの」



「いいよ。昔のことだしさ」



照平が少し無理してそう言っているのが理解できて、胸がチクリと痛んだ。



ごめんね照平。



「照平のお父さんはまだ行方不明なんだよね?」



そう聞くと、照平は頷いた。



「母親が死んだ一週間後くらいに、父親も失踪したんだ」



「お母さんはどうして……」



そこまで言って口を閉じた。



どうして亡くなったのか?



なんて質問、デリカシーが無さすぎる。



「事故死だった。昼間買い物をしてて、そのまま」



「そうだったんだ……」



そう呟いて黙り込んでしまった。



あたしがソレに願いを託した時、叔父と叔母はソレの食料にされていた。



だけど照平の母親は事故死。



きっと、無関係なのだろう。



「俺の両親はよく喧嘩してた」



「え?」



あたしは顔を上げてそう聞き返した。



「子供の頃の記憶だから定かじゃないけど、毎日喧嘩してた気がする。原因がなんだったのかわからないけど」



「……そうなんだ……」



あたしはそう呟いて思考回路を巡らせた。



例えば、照平の父親が悪魔山へ行き、ソレに妻を殺して欲しいと願いを託していたとしたら?



『あいつが憎い。あいつを殺してくれ! 俺に罪が被らないよう、事故死させてくれ!!』



見たことのない照平の父親が、祠へ向けてそう願掛けしている姿が浮かんできた。



あたしは強く身震いをしてその想像をかき消した。



「俺の父親が行方不明になってから、この街の人たちが何人か姿を消した」



照平の言葉にあたしは頷いた。



昨日見たあのニュースのことだろう。



「父親と他の行方不明者に関係があるんじゃないかって、随分騒がれたよ」



照平はそう言って苦笑いを浮かべた。

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