第7話

あたしの涙はいつの間にか消えていて、高いフェンスをよじ登っていた。



こんなフェンスを越えることができるなんて、思ってもいなかった。



あたしは簡単にフェンスを乗り越え、そして躊躇することなく山道を歩き出していた。



この先になにがあるのかなんてわからない。



ただ導かれるままに歩く。



途中で山道が終り、山道に差し掛かってもその足は止まらなかった。



むしろ、あたしの歩調はどんどん速くなっていく。



息が切れても、スマホが震えても、足を止めることはなかった。



やがて周囲は真っ暗闇に包まれてた時、不意に前方が開けた。



月明かりに照らされて、そこだけ広間のようになっているのがわかる。



広間中央には小さな祠があり、そこから「おいで」と、響くような声が聞こえてくるのがわかった。



やっとたどり着いた。



恐怖よりも、そんな安堵感であたしの胸は一杯だった。



祠へ近づいていくと、地面に落ちていた鎖を踏みつけた。



元々鎖で周囲をグルリと囲まれていたようだ。



落ちた鎖を避けて祠の前で膝をついた。



この中になにがいるのだろう。



鎖でつながれる祠の主は誰だろう。



「お願いです……」



あたしは小さな声でそう言っていた。



両手を組み、祠へ向けて頭を垂れる。



「あたしを……助けてください……」



今までの暮らしが走馬灯のようによみがえって来る。



両親を亡くし、叔父と叔母に引き取られた日。



4畳半の物置が自室としてあてがわれた日。



毎日料理や洗濯をするのが当たり前になった日。



周囲のみんなは違うと気が付いた日。



自由になりたいと願った日……。



「お願いです……あの2人を……殺してください」

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