第12話 示談
アブソリュートとウルは国王に連れ出され、先程と違う部屋に通された。
「アブソリュート・アークよ…そちのメイドから概ね聞いているがお前からも聞かせてくれるか?ことの経緯を…」
(国王は聞きたくはないだろうがね)
「ならこちらの映像をご覧下さい。念のために記録に残しておりますので」
国王は全て諦めたかのように天井を見上げる。
あの場では目撃者はおらず当事者だけの空間だったので最悪権力を使って揉み消せると考えたからだ。だが、アブソリュートはそれを見越して証拠として映像の魔道具を残し逃げ場をなくした。
(逃げられてたまるか!ミカエル王子は将来勇者サイドについて権力を使って兵力を集めてアブソリュートである私を殺す。今のうちにミカエルを引き摺り下さなければっ!)
国王は映像を見終えてアブソリュートに声をかける。
「アブソリュート・アーク…今回はすまなかった。この通りだ…」
国王は頭を下げた。もし、これがアーク家でなくただの上位貴族なら頭までは下げなかった。だがアーク家は裏で国防を担い、国の為に汚名を受けている功労者だ。決して剣を振りかざしてよい相手ではなかった。
「私達アーク家は王家が健全な国の運営ができるように手を汚しながら支えてきたつもりです。ですが、あんな形で恩を返されるとは思いませんでした」
国王が頭を下げても決して引いてはいけない、アブソリュートはたたみかける。
「あれは王家としての判断でしょうか?それなら私達アーク家も考えがありますよ?」
アブソリュートはスキル王の覇道を使い威圧するが国王は表情に出さずに圧力に耐える。
(…………流石国王だな、長年国を治めてきただけはある。)
アブソリュートは国王の評価を改める。
「いや、ミカエルの暴走だ。信じてはもらえんだろうがな…まさかここまでの事を起こすとは思わなんだ。だが、アブソリュートよ衛兵隊の腕を切り落とすのはやり過ぎじゃないか?お前ならもっと穏便に済ませたのではないか?」
国王から反撃されるが私は動じない。
「子息とはいえ高位貴族に斬りかかったのですよ?正当防衛です。それに警告を聞かなかったのも近衛兵です。近衛兵なら命をかけてでもミカエル王子の間違いを正すべきでした。
私を責めるのはお門違いです。それで今回王家としてどう責任を取るつもりですか?」
(最低でもミカエルから権力を奪い取りたいが廃嫡は難しいかな?被害者は無傷だし…)
「アブソリュートと侍女に慰謝料を払おう…それに加えてミカエルには謹慎させる。どうだ?」
(………甘すぎるな。)
「高位貴族の者を呼び出して、権力と暴力で私の奴隷を奪おうとし最後には殺人未遂ですよ?甘すぎるのではないでしょうか。罪として裁くなら永遠に地下牢レベルですよ。最低でもミカエル王子は王太子の座から外して下さい」
「それだけは何とかならんか?私には息子はミカエルしかおらん。後継がいなければ王家は終わりだ」
国王は懇願するがアブソリュートは続ける
「ハニエル王女がいらっしゃるではないですか?ハニエル王女に婿をとって頂けば解決するのではないでしょうか。今のミカエル王子を王太子にするより良いのでは?」
国王は悩む…確かにハニエルはミカエルより優秀だが問題があった。
「ハニエルは目が見えん…あれでは公務を行うのは厳しかろう…」
「ええ、そうでしょうな。だがそれは国王陛下やその周りが考えることです。私の要求は私と侍女のウルに慰謝料とミカエル王子が王太子から降りることです。国王陛下ご決断を」
国王は少しの間考える。国王だって我が子が、かわいい。国王の腹が、決まる。
「分かった。ミカエルは王太子から外そう。だが、もしミカエルが反省し、自らの行いを悔い改めた時は王太子に戻るのを許してやってくれんか?」
まだ、甘いことを言うがアブソリュートは突き放す。
「その時は、この映像を全ての貴族の前で公開し、その後全員の前で私に謝罪した時でしょうな?」
「そうだな…悪かった。お前の要求は全て飲もう。今日は悪かったな…慰謝料は帰る時に支払おう」
これで王家との示談が終了し、アブソリュートとウルは慰謝料で豪遊しながら帰宅した。
【ミカエル視点】
私が、アブソリュート・アークに初めて会ったのはまだ5歳の時に立ち会った父とアーク家の当主の面談の時だった。
初対面で見た時のアブソリュートの印象は嫌悪だった。生まれて初めての感情だった。
この感情が何なのか分からず、父が俺とアブソリュートを2人にしようとすると泣いて止めてと父に縋ったのを覚えている。それで結局その会はお開きとなりそれ以降アブソリュートをパーティー以外で見ることはなかった。
だが、父から偶にアブソリュートは頭良いだの魔法の腕が立つなど彼奴を会話にだしてきてまるで比較されているようで気分が悪くなり、更にアブソリュートが嫌いになった。
さらに俺の10才の記念パーティーで彼奴が暴れたせいで俺の為の式が台無しになった。
俺はアブソリュートが大嫌いだ。
父からアブソリュートの件について呼び出される。
「ミカエル…お前は自分が何をしたか分かっているか?」
「悪いのはアブソリュートです。彼奴がいきなり攻撃してきたのでやむなく交戦しました」
ミカエルはシラを切る。あの場には第三者がおらず隠蔽できると踏んだからだ。
「…そうか。この映像を見ても同じことが言えるか?」
「な、なぜ⁈そんなものがある」
「アブソリュートからだ。お前は取り返しのつかないことをしたんだ」
「彼奴か‼︎卑怯なマネをっ、アブソリュートが悪いんだ、俺の10才の記念パーティーをぶち壊した、だから痛い目を見せようとしたんだ」
国王は呆れた目でミカエルをみる
「あれはアーク家でなくカコ公爵家の派閥が起こしたものだと言っただろう…アーク家は被害者だ。まぁとにかくお前は罪を犯した。ミカエル、お前には王太子を降りてもらう。
本来なら投獄してもおかしくないが感謝しろよ?」
(俺が王太子を降りる⁈そんな馬鹿な!)
「ちなみにこの映像を貴族全員に見せたうえでアブソリュートに謝罪するなら王太子の復帰を認めるそうだ…まっそんなことしたら王家は終わりだがな。しっかり反省して次に活かせ。それだけだ、下がれ」
ミカエルは怒りを抑えて退室する。
(…アブソリュート!彼奴だけは絶対許さない
王になるのは俺だ!)
ミカエルはアブソリュートへの怒りが募らせ、今後の方針を思考するのだった
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