番外編 愛しい貴方へ

第14話 原作のその後

※この話は原作小説でアブソリュートが殺されてから数年後の話です。



ライナナ国王城


 悪党であるアブソリュートを倒して民衆と貴族から支持を得たミカエル王は重大な問題を抱えていた。


「何で、他国の闇組織がライナナ国で動いているんだ⁉︎衛兵隊は何をしている!これでは国がボロボロになってしまうぞ!」


 裏で国の為に動いていたアーク家が潰された事により、他国の闇組織が一部の貴族と癒着し、国を蝕んでいた。民衆には強力な麻薬や誘拐などが横行し手がつけられ無くなっている。取り締まろうにも闇組織の情報もツテもない。そうならないようアーク家が動いていたのだがもう潰されてしまったのだ。ミカエル自身の判断で。


「くそっ‼︎こういう時の為の勇者だろう⁈早く勇者にこの混乱を止めさせろ!」


ミカエルがこの場にいない勇者に丸投げするが…


「伝令です。至急陛下に!」


(また緊急の伝令か。最近は闇組織関連で多くなった気がするな。全く次はなんだ?)


「何だ?闇組織が動いたのか?」


だが、伝令の内容は悲惨なものだった。


「勇者様が治めているミライ家の領土にて虐殺がおき、勇者様と、その奥さま方も謎の化け物に殺害されてしまいました。その化け物が王都に向かってきています‼︎」


 聞かされたのは、あの悪党アブソリュート・アークを打ち破った英雄達の悲報だった。





時は遡り、勇者達が殺される前レディ・クルエルはウルの見送りにきていた。


「本当に行かれるのですか?貴女にはアブソリュート様との子供がおりますのに…」


 レディの腕にはまだ小さな獣人の子供が抱かれていた。レディはアブソリュートの奥方であるウルを心配するがウルの姿はまだ幼かった姿とは異なり別人の復讐の鬼とかしていた。もう止まらない…。


「私はご主人様の帰りを待ちました…ご主人様は必ず帰ってくると…信じてましたの。

でも、帰ってこなかった!ウルは…ご主人様のいない世界では生きていけない‼︎」


 悲痛な叫びだった。アブソリュートが亡くなって数年、ウルは彼のいない世界では生きる価値を見つけることが出来なかったのだ。レディも止まらないと分かっているが引き止める


「アブソリュート様は最後に私達に生きろと仰いましたわ。中には裏切って情報を売った者もいたのに最後まで私達の身を案じてくれた!貴女にはアブソリュート様の分まで生きる義務がありますわ‼︎」


 アブソリュートは勇者と国王軍との戦いに傘下の貴族を自軍にせず最後に生きろとだけ言い1人で闘いに行った。裏切り者が中にいる以上被害が大きくなるのを嫌ったのもあるが、負ければ嫌われ者の自分が死ねば全て収まると考えたからだ。

 原作では傘下の貴族がアブソリュートを見放したに思えたが真相はアブソリュートが望んだことであった。


「ウルはもうご主人様の奴隷ではないのです…だからウルの好きにさせてもらう。レディ様、ウリアを…私達の子供をお願いします」


ウルは深くレディに頭を下げる。


(もう、止められない…)


 昔から知っている人がこれから死にに行くのを止めることができない。レディ・クルエルはアブソリュートを1人で行かせてしまった時と同じ無力感を味わった。


「…分かりましたわ。私達がもっと早くアブソリュート様の優しさに気づけていれば…こんなことにならなかった。責任を持ってお預かりしますわ。最後に…もう一度ウリア様を抱いてあげてくれませんか?」


 ウルは優しく慈しむようにウリアを抱く。


 アブソリュートを亡くしたと知った時以降出なかった涙が溢れ出した。


「ごめんなざい…駄目な母親でごめんなさい」


 泣いている母親に感化されたのか幼いウリアも泣き出した。泣きながら抱きしめ合う2人、これが母子の最後の時間となった。





【ミライ領】



 ミライ領にある大聖堂には日々大勢の人が集まる。そこには勇者の仲間としてアブソリュートを討ち取った聖女エリザがいた。


 大聖堂の扉が開き聖女エリザは参拝者を歓迎した。


「あらあら、こんにちは。素敵なローブの方。本日はどのようなご用件で?」 


 優しい声音で語りかける。


「亡くなった旦那様に祈りを捧げにきたの…」


「まぁ、旦那様を若くしてなくされたのですね。大丈夫!貴女の声はきっと届きますわ」


 ローブで顔を隠したウルは大聖堂で、天にいるアブソリュートに言葉を届ける。



(…ご主人様、ウルもすぐそちらにいきますの)



祈り終えたウルに聖女エリザは声をかける


「きっと貴女の想いは旦那様に届いたことでしょう。貴女はこれからどうされるのですか?」


「旦那様の為にやらなくちゃいけないことがあるの」


「そうですか。きっと貴女の旦那様も喜ぶ事でしょう。ちなみに何をされるのですか?」


「…皆殺しなの」


 言い終わると同時にウルは聖女の首を刎ねた

 

「1人目なの」


 不意打ちに対応できず聖女の首が落ちる。

 他の参列者達から悲鳴が上がるが誰一人として大聖堂をでることができないままウルによって殺された。

 これからウルによる虐殺が始まる。


聖女エリザ 死亡




 ウルは勇者の屋敷へ向かった


 門番を殺害し、ウルは屋敷の敷地に入る。

 目に入った者を片っ端から殺していく。すると騒ぎが大きくなり屋敷の警備兵が大勢現れた。


「下がれ!お前たちには荷が重い。私がやる。私は勇者の騎士を務めているマリア・ステラだ。貴様…確かアーク家の奴隷だな?ここに来たのは復讐か。アーク家の亡霊め!ここでくたばりなさい!」


マリア・ステラが剣を振り下ろす。

だが、ウルは索敵のスキルで強化した動体視力で剣を見切り、指で剣を挟みそのまま指圧で剣を砕いた。


「ばっバカな!」


「復讐?ウルは死ににきたのよ」


 マリア・ステラはなす術なくウルによって首を刎ねられた。


「2人目なの」


マリア・ステラ死亡


 マリアと警備兵を皆殺しにした後、ウルは屋敷に入り勇者を探した。


 とある部屋が索敵に引っかかり部屋のドアを開ける。そこはアリシア・ミライの執務室でありアリシアもそこにいた。 

 アリシアは最後の書類を片付けるとウルの方を見る。


「騒がしいと思ったら、貴女だったのね。アーク家の奴隷の子。目的は復讐よね?今更だけど貴女のご主人様の事謝らせて頂戴。悪かったわ…私が勇者をちゃんと止めていれば…」


 アリシアは後悔を滲ませが、それでもウルは止まらない。


「謝ってもご主人様は帰ってこない。お前ら全員皆殺しなの」


 アリシアはすべて諦めウルにその身を差し出した。


「最後のお願い…楽に殺してくれないかしら?」


 ウルは考える間もなく答える。


「無理なの」


 その後、アリシアは悲鳴が上がらないように喉を潰される。その後、四肢を切り落とされ嬲り殺された。


「3人目」


アリシア・ミライ死亡



 屋敷の1番奥の部屋に勇者はいた。屋敷の騒ぎに気づかず正妻のハニエルと交わっていた。ウルは扉をぶち破る。


「な、なんだ⁉︎」


 勇者は突然の事態に困惑する。


「君はウルじゃないか!良かった。アブソリュートの屋敷を攻めた時に連れ出そうと思ったけどいなかったから何かあったんじゃないかと思ったよ!って血まみれじゃないか!何があった?」


「見つけたぁ…勇者ぁ」


 勇者はこれから自分の身に起こる事を知らず呑気に話しかける。


「あぁ、俺を探してたんだね!そうかアブソリュートから逃げ出したけど俺の場所がわからなかったのか」


ウルは待ち望んだ相手を睨みつける。


「…お前のせいでぇぇぇええ…ご主人様はぁぁぁぁぁあああ!死ねぇぇぇえええ!」


 勇者に向かって攻撃を繰り出すが、勇者はスキルで聖剣を召喚し、何とか受け止める。


「ウル?もしかしてまだアブソリュートの洗脳が解けてないのか!落ち着いて俺は敵じゃない!」


「死ねぇぇぇぇええ」


ウルはスピードで勇者を圧倒するが勇者はギリギリで対応ができていた。


(何で⁈学園の時よりかなり強くなってる‼︎)


 ウルは動揺した。勇者は十万単位の兵力差をもってだがアブソリュートを倒した。それでもあのアブソリュートを倒したのである。レベルは当然上がっているのだ。


「ホーリーアウト!」 


 勇者の攻撃がウルを直撃する。勇者の攻撃はスキルの効果で一撃当たりのダメージがかなり多い。ウルは大ダメージを負い地面に這いつくばった。


「ウル!君は騙されているんだ。アブソリュートは闇組織の人間でこの国を苦しめてきた悪なんだ!まだ幼い君を奴隷にして苦しめてきたクズ野郎だ!君はアブソリュートに今も操られてるだよ‼︎」


ウルはゆっくり立ち上がって勇者に反論する


「…違う…。ご主人様はウルに居場所をくれた。怪我をしたウルに回復魔法をかけてくれた。甘いお菓子を食べさせてくれた。沢山ウルの頭を撫でてくれた。

そして…ウルを愛してくれた。ウルを母親にしてくれたんだ…。馬鹿にするな…ご主人様を馬鹿にするなぁぁぁぁぁああっ!」


 ウルは勇者に向かって吠えながら再び攻撃をする。技と手数でウルは勇者を圧倒する。だが、勇者の防御を崩せない。


「ホーリーアウト」


 勇者が攻撃をするがギリギリでウルはかわす。


(…もうここで終わってもいい。だけど勇者は必ず殺す。獣化のスキルを使う)


 獣化のスキルは身体を獣に変えるスキルだがレベルが上がるにつれ身体やパワーが大きくなる。だが代償として獣になっている間、理性を失いただ相手を殺す獣になってしまう。


(多分使ったらもう元に戻れないかもなの…

最後はご主人様の事を考えながら死にたかったの)


 ウルはアブソリュートの顔を最後に思い浮かべ覚悟を決める。


「愛しています…ご主人様。獣化発動!」  


 獣化したウルは体長10メートルを超える狼に姿を変えるのだった。 


 ここからウルの蹂躙が始まる。



原作ウル

19才


スキル

獣化  V10…身体を獣の姿に変える

       自身のレベルにより大きさが

       変わる

       レベルが上がるごとに理性が

       なくなる

索敵  V10…身体の一部を強化して相手の

       場所や地形の把握ができる


ステータス

レベル : 71

身体能力 :407

魔力   : 70

頭脳   : 58


習得魔法


技術

メイド全般 格闘技





ーーーーーーーーーーーーーーーー

すみません。次回に続きます。






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