第5話 クリスとレディ

 ミカエル王子の誕生日パーティーの後、ホセ伯爵家のクリスやクルエル子爵令嬢のレディが頻繁に屋敷に来てくれるようになった。

 クリス達はこれまで遠巻きにしていたことを謝罪し、傘下の貴族達と距離が縮まるようにお茶会等を開催してくれるようになった。その甲斐もあり、少しは距離が縮まったかなと思う。


 別にスキルのせいだし気にしてはいなかったけど裏切られないくらいには親密にはなりたかったので素直に甘えさせて貰った。

 今はクリスとレディの3人で魔法の訓練を終えてお茶を飲んでいる


「流石でしたわアブソリュート様!火、水、土、風の四属性に加えて回復魔法と闇魔法も使えるなんて!わたくし感激しました!尊敬しております‼︎好き‼︎」


レディ・クルエルは結構ヨイショしてくれる良い娘である。彼女の好きは私はクール系の悪役なのでスルーでいく。


「ふん。使える魔法が多いだけで大したことはない。貴族が戦うなら大事になるのは固有魔法だ。早く継承したいものだ」


 固有魔法は決められた血統の者しか使えない貴族に代々伝わる魔法である。


 15才になりと継承が認められており、それまではどんなに才能があっても使えない。


 アーク家の固有魔法は『アーク・サモン』精霊を呼び出して契約できる魔法だ。


 原作ではこの精霊の力で討伐軍の4割を壊滅させるほど強力である。何より裏切らないのが良い。今から待ち遠しく感じる。


(このままいけば、原作のアブソリュートを超えることができる。原作のアブソリュートに負けそうになるくらいの勇者なら今の私なら絶対に負けない。)


 俺アブソリュート自然と頬が緩み獰猛な笑みを浮かべた。

 圧が漏れ出しクリスがゴクリと喉を鳴らす。


レディは、 


「はうっ!素敵…」


 頭がピンクになっていた。


 落ち着いた俺は表情をいつもの仏頂面に戻した。


(あっそうだ…)


「クリスよ。学園に入学する時のために侍女を用意したい。その為に、奴隷から選び教育を施したいのだがお前からホセ伯爵に話を通して貰えるか?」


「ええ。分かりました。ですがアーク家から見繕えば早いのではないでしょうか?」


「この家の者は好かん」 


「「っ!!」」


2人は悲しそうな顔をした。


(いや、変に勘繰らないでよ。原作では皆んないなくなるから絶対裏切らない人が欲しんだよね。奴隷なら主人を裏切らないし…うん完璧。主人公に隙を与えたくないしね!)


 ちなみに生まれた時にいたメイド服をきた老婆は3年前に亡くなった。今はその時の老婆の娘48才が俺の面倒を見ている。高齢化の進んだ職場に若い子をいれなかればアーク家の屋敷は熟女メイド喫茶状態だ。

 いやらしい!


「分かりました。最上級の奴隷を用意いたします。何かご要望はありますか?」


「種族は問わない。だが、自衛能力を持っている者が好ましい」


「なるほど‼︎わたくしなんてどうですか」


レディがアピールするが


「いらん」


俺は一蹴した。

レディが、はぅ〜と崩れ落ちる


クリスは華麗にスルーし、

「分かりました。そのようにいたします。ご用意できたら連絡しますね」


その後は適当に会話をし解散した。



クリス視点


「確かにアーク家の侍女もアブソリュート様を怖がってましたし、これでは学園でも気分は良くないでしょうね」


クリスはアブソリュートへの配慮が足りなかったと猛省した。


「はう〜。お可哀想なアブソリュート様わたくしが癒やして差し上げたい」 


 白々しいとレディをみる。


「さっきから、それは何ですか?貴女そんなキャラじゃなかったでしょう?」


 レディ・クルエルという女は厳格でかなり計算高い少女だった筈だ。

 少なくともこんなに軽そうな女ではなかった


「あら?だってアブソリュート様はあの通りお堅いじゃない。距離を詰めるならこういったキャラの方が良いかと思って。それに面倒そうにはしてたけど拒絶はしてなかったじゃない?」


 ハァとため息を吐く。女性とはこんなにもキャラを作れるのかと女性不審になりそうだった。


「というと、さっきの惚れている感じをだしていたのはフリだったということですか?」


 アブソリュート様の心を弄んでいるのかと思い、軽くレディを睨むが、肩をすくめてレディは言い返した。


「いいえ。純愛ですのよ。わたくしも貴方と同じ様にアブソリュート様を誤解して独りにさせてしまった。そしてあのパーティーで助けられた。スキルの事もあの後聞かせれて胸が張り裂けそうになった。

もし、今後アブソリュート様がまた独りになりそうになった時、今度は絶対お側にいたい…そう思ったの。

それにコミカルに接した方がアブソリュート様の周りに、遠慮なんていらない、器の大きな方なんだぞって伝わるかと思って…」


 前言撤回だ…レディ・クルエルがそこまで考えて道化を演じていたなんて素直に尊敬した。


「それにイケメンで高位貴族で将来有望じゃない?他の女が手を出さないように牽制しておかないと!これから外堀を埋めるのに忙しくなるわね!」


(後者の理由の方が本音の気がしてきた…

まぁアブソリュート様の味方が多いに越したことはない。とりあえず、奴隷に関しては父と相談しよう)


 クリスそう考えアーク家を後にした。




アブソリュート・アーク

10才

スキル

・カリスマ v6 … 魅力に補正がかかる

・王の覇道 v6…自身のステータス上昇

       敵のステータスを下げる  

・絶対悪 v10…ステータスが伸びやすくなる

       相手への印象が悪くなる  

       聖の者に対して特別補正

ステータス

レベル :49

身体能力:75

魔力  :600

頭脳  :70


習得魔法

火、水、土、風、回復、闇

 

技術

剣術、拷問、グロ耐性



レディ・クルエル

10才

スキル

・氷魔術V4…風と水の魔力を使い氷魔術を

       使用できる


ステータス

レベル :12

身体能力:10

魔力  :78

頭脳  :68


習得魔法

水、風

 

技術

恋愛強者





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る