悪役貴族として必要なそれ
まさこりん
原作前
第1話 悪役転生
『ライナナ国物語』
大陸の中で最も栄えているライナナ国にて内戦が起こった。ライナナ国のアーク領を治めているアーク公爵家が闇組織の元締めで数々の犯罪の証拠が内側からリークされ王から討伐命令が出されたのだ。
軍を率いる勇者の末裔である主人公アルトと彼に心酔するヒロイン達。
「もうお前の味方はいない。諦めろアブソリュート・アーク」
アブソリュート・アークにはもう味方は残っていない。あるのは決して膝をつかないとする高いプライドとそのプライドを保つ為に培ってきた高い戦闘力だ。まだ彼は負けていなかった。
「ふん。数を揃えただけで随分と威勢の良い奴だな。1人じゃ戦えない臆病者が勇者とは…この国も落ちたものだな。これでは今後が不安だ」
「なんだと?てめぇ!」
勇者が暴走仕掛けるが周りのヒロイン達が勇者を宥める。
「あいつの挑発に乗ってはダメ!ここは確実に囲んでアイツを倒す。大丈夫貴方は臆病者なんかじゃないわ。私達は分かってるから」
仲間の忠告で勇者は頭を冷やし呼吸を整え敵を見据える。
「ありがとう、おいアブソリュート・アーク!確かに俺1人じゃお前を倒せない。だが、俺には仲間がいる。かけがえのない仲間が。絆の力でお前を倒す。いくぞっ!」
そこからは白熱した闘いが続いた。圧倒的な力で実力差を見せるアブソリュート・アークであったが対する勇者達は圧倒的な数の力でそれらをカバーし対抗した。そして多くの被害を出しながらも勇者の剣はアブソリュート・アークを貫き勇者達は勝利した。
そして闇組織の壊滅に貢献した勇者はその貢献が認められ再建中であるアーク領を拝領しヒロイン達と仲良く過ごしたのだった。
【完】
身体は倦怠感が強く重い瞼を開くと、視界には知らない部屋が映った。
かなり広めの西洋感溢れた空間を見渡すと近くから声が聞こえてくる。
「おめでとうございます。後継の男の子です」
声の主は年齢は60くらいの老婆そしてメイド服を着ていた。
自分の年齢を考えずメイド服を着ているイタイ老婆が黒髪の強面の男に声をかける。
(あの男の人どこかで見覚えがあるような…誰だっけな
それにしてもなんだあのババアは…)
高齢化が進むとあんな老婆でもメイドとして需要があるのかと変なことを考えてしまう。
あの歳でメイド服を着ている老婆のせいで頭の中が余計こんがらがるが、私の身体が縮んでいるのが分かった。
「そうか…。赤子にしてこの魔力…恐ろしいな。それにスキルはカリスマに王の覇道…そして絶対悪か。上に立つものとしては申し分ないスキルだな。それにアーク家の魔法との相性も良い。だが、絶対悪は珍しいスキルだな。確か初代の当主は持っていたらしいが詳しい効果は分からないな。だが、我が子は将来強き男になるだろう。名をアブソリュートと名付けよう。」
(アブソリュート?今、アブソリュートって言ったか?それにアーク家とも…アブソリュート・アークって確か前に読んだことのあるファンタジー小説の『ライナナ国物語』に出てくる悪役だよなぁ。
国の裏側で悪行を働くのがアーク家で、それをみかねた主人公によって滅ぼされるって設定だったはず…ってことは俺は小説のキャラに転生しちゃったのか
ってことはさっきの男はアブソリュートの父親か!原作では見たことないけどアブソリュートとそっくりだな)
本来アブソリュート・アークは傲慢でプライドは高いがそれに見合った実力は持っておりアーク家の固有の魔法に加えて剣や頭の良さ持ち合わせていた。因みにかなりのイケメンである。
だが、そんなアブソリュート・アークにも弱点はあった。それは彼には味方がいなかったのだ。組織としては王国の闇組織の8割を占めていたが一部の傘下の貴族が主人公側に裏切り、他の者達も状況が悪くなるにつれて1人、また1人と離れていった。
その結果、主人公達と戦う時にはアブソリュート1人となり圧倒的な勢力を持つ主人公側に殺されてしまうのが彼の運命である。
(…マジかぁ。ある意味孤独死じゃないか。小説読んでた時はある意味同情しちゃったよなぁ。だって味方に裏切られてリンチで殺されるんだぜ?主人公側結構えげつねぇなぁ…。
さてどうするか、このままストーリーが進むとリンチされ殺される。選択肢は2つ
1. 改心して主人公と仲良くする
いや、小説は好きだったけど主人公は嫌いだったからそれは絶対生理的に無理。
2. 悪役として主人公をぶちのめす
ストーリーが始まる前に不安要素を消して万全の準備をして打ちのめす。
絶対2だな、私勇者嫌いだし。
この世界での方針は決まった。悪役として生まれたからには原作通り悪役になってやろう。だが、負けてなんかやらない。絶対悪として主人公を打ちのめす。)
悪役として主人公に打ち勝つ、そう心に誓い重くなってきた瞼をゆっくりと閉じたのだった。
アブソリュート・アーク
0才
スキル
・カリスマ v1 … 魅力に補正がかかる
・王の覇道 v1…自身のステータス上昇
敵のステータスを下げる
・絶対悪 v1…ステータスが伸びやすくなる
相手への印象が悪くなる
聖の者に対して特別補正
ステータス
レベル :1
身体能力:1
魔力 :100
頭脳 :50
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