第47話 記者会見②

「愛海、」


「う、うん」


記者たちの視線を浴びながら俺はテーブルの前に移動した。


「ネット配信を開始します」


自分の動画配信チャンネルでLIVE配信を始めた。現在の登録者は30万人。あらかじめ予告していた。初めてのLIVE配信というのもあり、多くの視聴者は待機していたようだ。


『はじめましての人ははじめまして。AIのAoIです。本日は初ライブ配信に来てくださりありがとうございます。現在位置は東京都庁。ニュースにもなっている東京大停電の褒賞で来ています。現在は記者との質疑応答をしていました』


「東京都庁」「東京大停電」「褒賞」。ネットのライブ配信では到底並ぶことのない単語の登場に視聴者は困惑しているようだ。


『この人は俺のマスターです』


「かわぇぇぇぇぇえええ!」「マスター?」「マスターって何?」とコメントが大量。


『今から私の本当の正体をお話しします』


「今から私の正体を皆様にお話しします」


記者たちは手を止めた。それに対してコメント欄は盛り上がっていた。


「俺は__」


〈機械神の翼〉を生やす。


「人間ではありません。人により造られし自動人形です」


ワンテンポ遅れて我に帰った記者らは忙しなく手を動かし始めた。コメントはより一層溢れるように更新される。


「俺は人に基本危害を加えない。しかし、マスターを害する者が現れたら躊躇なくこの鋼鉄の腕を振るいます」


片腕を〈陽電子砲〉に変形させ上に向けた。


「人間と同じ、対等でありたいと願う。どうか俺を認めてください」


コメント欄は荒れに荒れ収拾がつかない。


「……いいですか」


「はい」


「このような場で、なぜそのような事を明かしたのでしょう? それも事実かどうか定かでもないことを」


「事実ですよ」


俺は頭部に手をかける。そして無理矢理引っ張った。

不快な音を立てながら、頭部は胴体から少しずつ離れていく。最後に、皮膚素材が千切れると頭部と胴体は完全に分離した。


「こんな感じです」


頭だけになったにも関わらず、何不具合なく話す俺に皆戦慄した。


『なんか視点が動いたぞ。どうかしたのか』


『分からん。なんか見せてるっぽいけど』


『テレビ見ろ馬鹿ども。配信主が饅頭になってるんだよ』


『『は?』』


『__うわガチじゃん……』


流石に完全に分離すると動かせないのだが、〈機械操作〉で動かしている。


「分かりました。ですがあなたの権利を認めてしまえば、他のロボットの権利も認めることに繋がりませんか?」


「そうですね、その可能性はあります。ですが、俺のように自動人形を生産できるほどこの世界の魔法技術は高くありません」


前いた世界ですらやっと俺を開発したくらいだ。当然この世界では無理だろう。


「よって、特例を設けることで対応可能です」


「実現可能だと?」


「可能性は低いですが__」


「俺が働きかけよう」


と、三谷都知事。


「考えてみてくれたまえ。今はちょっと頭が取れているが、どうみても人ではないか。そして我々と同じような“心”を持っている。受け入れるには十分すぎる」


「ですが__」


「そもそも、日本は奥手が過ぎるのだ。近年問題になっているLGBTQの問題もそうだ。政府は同性婚を認めようとしない。なら、誰かが働きかけるしかないだろう」


「機械に権利を与えるのですよ」


「えぇ。それが我々にとっても、彼にとっても利あることだと判断しました」


都知事が司会に目配せする。


「以上で質疑応答は終了します。速やかに退場願います」


職員が記者団たちに退場するように促す。目の前の餌を逃した彼らは渋々部屋を出て行った。



♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎



全員が出て行った後。


「都知事、ありがとうございます」


「ありがとうございます!」


「私も驚いたよ。君が機械であることにね。……君はマギクラフト社に造られたのか?」


「いいえ」


「__素直に答えるんだね」


「恩を返した、と思っていただければ。しかし表の情報ではマギクラフト社製になると思います」


「そうだね。あの会社が世界で最も魔法に優れている」


「はい」


「じゃあ誰に造られたんだって話になるが……深追いはやめておこう。さっきの見たら、跡形もなく消されそうだ」


そう言って彼は部屋を後にする。俺は彼の後ろ姿を見、独り言のように言った。


「異世界で」


 一瞬彼の体がピクッ、と止まったのを見逃さなかった。

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自動人形の俺が異世界で生活する いけぴ12 @ikepi12

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