第29話 攻略開始
今日は生徒会役員になるための試験だ。早朝5時にギルド支部に集合である。俺はその20分前に着いてしまい、暇を持て余していた。
「おや、この時間帯にいるなんて珍しいね」
話しかけて来たのはギルド支部の受付嬢の福田さん。この人はいつも俺の対応をしてくれる人で、主に男性陣からの人気が高い。
「おはようございます。平日出勤ではなかったのですか?」
「今日は他の人の代わりにきてるんだよ。その代わり火曜休むんだ〜」
いいだろ、とドヤ顔しているがただの振替休日では?と指摘したくなるが当人が嬉しそうなのでやめておく。
暫く福田さんと談笑をしていると最初に恵、その次に愛海、優里という順で合流した。
愛海は大きなバッグを持っている。おそらく今日・明日・明後日3日間の食糧が入ってるのだろう。
「これからまたこの大荷物を持ってダンジョンに行くのか……筋肉痛になりそう……」
「良ければ、俺のスキルで収納しましょうか?」
「え、いいの!? 収納スキルって、容量少ないって聞くけど」
「はい、大丈夫です」
愛海からバッグを受け取り〈アイテムボックス〉に入れる。
「ついでにポーションも入れてもらっていいか?」
「はい」
同じくポーションも〈アイテムボックス〉に収納。
「それじゃあ、早速__」
「馬鹿か。まず届出出さないといけないだろ」
「あ、そうだった」
1パーティーで、メンバーの必要な情報を書き、近くにいた福田さんに渡す。
「……はいはいはい。記入漏れ無し。行っても良いわよ」
「あ、最後にこれ」
ダンジョンに入る前に俺からみんなに先日作ったバッチ型の魔道具(テント)をみんなに渡す。
「これは?」
「テントですよ」
「「「「これがテントォ!?」」」」
「はい」
俺は3人にこのテント(?)の仕様を説明する。だが3人は最初それを信じようとはしなかった。
「そんなの、あるわけない、蒼くん」
中々信じて貰えなさそうなので実演する事にした。
「〈イン〉」
よし、無事成功している。
中を確認しているとリビングに3人が来ていた。
「うわ、マジかよ」
「凄い……」
「こんな魔道具が、あったなんて……」
驚きのあまりその場で立ち尽くす3人。取り敢えず案内しよう。
「まず、今いるのがリビングで、すぐ隣にダイニングとキッチンです」
「ソファ、座ってみて良い?」
「はい、勿論です」
座る、と言いながらクッションに向かってダイビングする愛海。
うん。初めてマスター(開発者)以外の女性のだらしn……可愛らしい姿を見たかもしれない。愛海はマスターと容姿は瓜二つだから、意識しないと間違えそうだ。
「ここで過ごしてる時間は地上と同じなので、このまま寛いでいるとあっという間に攻略時間は無くなりますよ」
俺は愛海にソファから離れるよう促す。肩に触れた時に愛海に身体が一瞬ビクンと反応したような気もするが、拒絶反応だろうか? いきなり男性に触れられていい思いにはならないだろうし、俺は立ち上がった愛海にすぐ謝った。
「違う、言わなくて良かったのに……」
優里からそんな言葉が発せられたのを俺は聞き逃さなかった。
(違う? 何故だ? 悪いことをしたのに対して謝るのは当然……)
だが結局無駄な思考をしただけだった。
その後は作業部屋や書斎など、入って欲しくない部屋を一通り説明する。言わなくても、ドアは開かないようにしているが一応だ。
最後にそれぞれの個室を決めた。部屋は4つあり、その内の一つはマスター(開発者)が使っていたので俺、残り3部屋は使っていなかったので適当に3人に決めてもらった。
「なんかこういう秘密基地みたいなの、いいな〜」
「それな。なんかめっちゃ興奮する」
「ん、規模的に、テントじゃないから、秘密基地で良い気がする」
「あーけどこれって蒼の物だよな。勝手に自分の物扱いしてたわ」
「いえいえ。それは皆さんに差し上げますよ。自分で創った物ですし」
「「「「つくった〜?」」」」
あ、やべ。言わない予定なのに口が滑ってしまった。
「それは追々聞くとして、流石にそろそろ攻略始めよーぜ〜」
恵から助け舟が……本人は自覚ないだろうが、それでもありがたい。俺は恵に便乗し、地上に戻ろうと促す。すると2人は不服そうではあったが、地上に戻ることに賛成し、俺たち4人は地上へ戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます