第30話 自動人形は鈍感

「うおりゃー!」


グサッ


「フー……よし、これでまた進められるな〜」


テントから出た俺たちは、今正午を少し過ぎたくらいだがほぼノンストップでダンジョンを攻略中。ちょうど今恵が魔物にトドメを刺したところだ。ハイペースで攻略したお陰で既に何回かオーガなどの強力な魔物に遭遇しており、難なく倒せている。前衛2人、後衛2人かつ全員のレベルが高いことによってすぐ連携が取れるようになったのだ。また魔物を倒すことによってレベルが上がるため、攻略が進めば進むほどペースが速くなってきている。ついでに、今のみんなのステータスは__


《ステータス》

名前:伊藤恵

種族:人間

性別:男

年齢:16

レベル:(12→)19

魔力:(550→)620

スキル:剣術、体術

称号:なし


名前:上原愛海

種族:人間

性別:女

年齢:16

レベル:(11→)23

魔力:(3900→)4020

スキル:攻撃魔法

称号:なし


名前:秋葉優里

種族:人間

性別:女

年齢:16

レベル:(9→)16

魔力:(2240→)2310

スキル:支援魔法

称号:なし


※()は高校入学時の数値


と、軒並み上昇している。俺のは変わることがないので割愛。恵は前線で戦っているのでレベルが上がりやすい。しかし愛海は恵以上に魔物に攻撃して倒すのに貢献しているのでレベルの上げ幅が尋常ではない。逆に優里の場合、支援魔法でサポートに回ってるのでレベルは先の2人より上がりにくい。レベルが上がると基礎体力が上がるので、優里は少し残念がっていた。


昼食。一旦テントに入り、愛海と優里が調達した携帯食糧を食べる。


「まさかダンジョン攻略中に、こんな安心して食べられるとはな」


「そうだよね。普通なら食事中も周りを警戒してなきゃなんないし」


「この謎の魔道具に、感謝。蒼くんにも」


自分もこんなふうになるとは思っていなかったが、喜んでもらえて嬉しい。


「ホント蒼くんって凄いよね〜。頭も良いし、強いし。しかもこんな魔道具も作れるなんて。神様って言われても信じちゃうな〜私」


「神様はないだろ」


「え、じゃあ恵は何だと信じる?」


「俺は……神様?」


「恵も同じじゃん!」


「……まるで俺が人外かのように話をしないでください……」


「「「え?」」」


「え?」


え、みんな俺の事人外だって思ってたのかこの反応。そんな俺おかしい事したか? ……うん、分からん。




「「「「ごちそうさまでした」」」」


4人で手を合わせて挨拶をし、片付けをして地上へ。ダンジョン内はいくら時間が経っても暗くなったりと視覚的に時間を知ることが出来ないので全員腕時計なりスマホなどを持ってきている。俺の脳内時計によると今は13時過ぎ。午前のペースで行けば、今日だけでダンジョンの半分くらい攻略出来そうだ。


その後も俺らは順調にダンジョンを攻略していった。優里の支援魔法でパーティー全体の能力を上げ、恵が前線で魔物を斬り、俺は恵の取りこぼしをカバー。愛海が追撃という形で進んで来れている。


「はぁ、はぁ、はぁ。飛ばしすぎて結構きちーわ」


「わ、私も。ちょっとポーション飲み過ぎてトイレ行きたい……」


体力という概念がない俺と、膨大な魔力を持つ愛海は余裕があるが、ずっと動き回っていた恵と、ずっと魔法をかけ続けていた優里はそろそろ限界のようだった。とは言えすでにダンジョンの半分は攻略出来ていて、今の時間は午後6時。明日も、もしかしたら明後日もダンジョン攻略が続くので、早めに休息を取ろう。


「では魔物を倒してひと段落しましたし、今日はここで夜を過ごしましょう」


俺の言葉に全員が頷き、テントへ移動した。


「これは私のソファーだー!」


テントに移動して早々、愛海がソファーでダイビング。


「あ、愛海。汚れてるから、先に、お風呂」


「あ、ごめん!」


前線で戦っていた俺たちだけにとどまらず、後方で支援に回っていた女子2人も泥や砂でお世辞にもキレイとは言えない状態だ。


「俺は一番最後で大丈夫なので、お風呂に入りましょう」


「オッケー。じゃあ私たちが先に入るから、恵と蒼くんは後でね〜」


愛海はそう言うと、優里の手を引いて洗面所へ行った。


「なぁ、蒼。2人同時に入れるのか? ここ」


「はい。浴室もそうですが、浴槽もかなり広いですので5人くらいなら余裕で入れますよ」


「マジか。なら一緒に入ろうぜ。裸の付き合いってやつ」


「良いですよ」


マスターの研究所は、作業部屋と浴室だけ他よりも充実している。理由は作業部屋が研究施設があるため、浴室は疲れを取るためだ。


「な、なぁ。蒼って愛海のこと、好きなのか?」


「え」


「いや、蒼って愛海相手には他のやつより距離が近いというか、なんというか……」


恵、というよりみんな高校生だからそういう恋愛事情に敏感になっているのか。


「好きではあります。ただこの『好き』が恋愛での好きなのかは分かりません」


それに加え愛海はマスターと瓜二つの容姿で且つ、俺の力の秘密を共有する相手だ。


「じゃあさ、逆に愛海は蒼の事好きだとだって思ってると思うか?」


「いえ。むしろ嫌いで避けているのではないでしょうか? 許可なく彼女に触れてしまいましたし。俺が話しかけると、返しが他の人の時よりも遅いですし」


俺がそう答えると、恵は俺を引くように後退りした。


(愛海はただ惚れてるだけなんだよな……)


そう恵は心の中で呟く。


(ダンジョン攻略中も、蒼が近くにいる時は惚れて顔が赤くなってるのを隠すためになんもないところ見てた時あったし)


そして、恵はある確信に行き着く。


(コイツ、めっちゃ鈍感だ……)


恵は蒼と初めて会った日の会話を思い出す。


(あの時は愛海のことさも当たり前かのように褒めまくってたしな……)


今度愛海と蒼の関係について、優里と話し合っておこう。そう考えた恵だった。

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