第31話 ダンジョン内で作戦会議
「おーい。あがったよ〜」
濡れた髪をバスタオルで拭きながら女子2人がリビングに戻ってきた。その2人の部屋着の格好は男のある欲をかき立てそうだったので横を見ると、案の定顔を赤く染める恵がいた。
それから女子と入れ替わりで脱衣所に来た俺たちは黙々と服を脱いでいく。
「やっぱり、恵くんは体が良いですね。高校生とは思えないほど良く鍛えられています」
「それなら、お前もって……あああ?!」
恵が俺の下半身に視線を固定して驚いている。なので俺も同じところに視線を移すと恵が驚いた理由が分かった。
「お前、女だったのか?」
「ち、違います! 俺は男です! これには理由が……」
「理由も何も、〇〇○がないし」
うおーい! この場に女子がいなくて本当に良かった。
その後は適当な嘘をついて恵を納得させた。ただ少し空気が重くなったのは言うまででもない。
「どうしたの?」
風呂上がりの俺たちの様子を見た優里が問いかけてきたが、返答はよそう。誤解が生まれるかもしれないし。
夕飯は予定通り携帯食糧。冷めても美味しく食べられるように工夫され、栄養面も考えれて作られてはいるが、手料理を食べる時よりもなんか寂しい。ここにはキッチンもあるし、今度からは食材をある程度貯め込んでおいて、ここで料理が出来るようにしておこう。
その後は皆夜更かしをせずにすぐ割り当てられた部屋で就寝。一つ屋根の下、年頃の男女が夜を共に過ごすのは大丈夫なのか、と疑問を抱いたが、今はダンジョン攻略中だし、大丈夫だろう。
「そう言えば、これってある意味お泊まり会だな……」
ダンジョン内でなければ、の話ではあるが。だけど緊張というか、楽しみというか。どんな感じなんだろうって興奮する。もう夜でみんな寝ているような時間に何考えてるんだろうって思うが。
翌日。俺は朝5時に起きて朝ごはんの準備を始めた。と言っても携帯食糧だけなので、〈アイテムボックス〉から取り出して少々見栄え良くテーブルに並べるくらいだが。
俺の次に起き上がったのは優里。その次が愛海。最後、と言うか今もベッドで熟睡していると思われるのが恵だ。
「恵を起こしてくる。先食べてて良いよ」
そう言って彼女は恵のいる部屋に入っていった。優里と恵は雰囲気的に特別仲が良いだろうし、任せて大丈夫だろう。
「い、いただきます」
時間が経ち硬くなったパンを食べる。
「ねぇ蒼。力のこと、本当に恵と優里に言っちゃだめなの?」
「そう、ですね。ただアレは前に説明した通り、いわゆる例外という事で、ある事をしないとまたあの力を得ることは出来ません」
「ある事って…?」
「それは契y__」
「あ〜おはよう〜」
愛海との会話中に恵が起きてきた。
「恵、髪が」
「寝癖だろ〜。後で直す……」
恵は短髪なのでそこまで酷くはないが、髪がかなり乱れている。
「あいふぁらず恵は朝よわひね(相変わらず恵は朝弱いね)」
「んあ〜」
フラフラしながら椅子に座ると、ゆっくり朝食を食べ始めた。
「食べながら作戦会議をしよ」
愛海の提案に全員がのり、今日のダンジョン攻略の作戦会議が始まった。
「おそらく既に中盤を過ぎているので、昨日ほどのペースで進むのは能力的にキツイと思います」
「ん。もっと強い魔物出てくると思う。ビッグスライムとか」
ビッグスライムと言うのはその名の通り、全長最大4mの巨大なスライム。主にダンジョンの後半に出現する魔物で、通常のスライムとは違いそこまで動きは早くない。むしろ遅い方に分類されるだろう。だがその巨躯と強力な酸性の液体を飛ばしてくる攻撃があるので手強い。生半可な攻撃では真ん中にある核に攻撃が届かない。
「ビッグスライムは私が魔法で攻撃して、当たったところを蒼と恵が追い討ちする形で良いんじゃない?」
「そうだな」
「このダンジョンアンデット系は出ないんだよね?」
「はい。今のところないようです」
今まで無かったからと言って、これからも出ないとは言い切れないけど。
「あと、そろそろゴブリンの集団とかち合うと、思う。上位種入りの」
ゴブリンの上位種は魔法を使ったり、人間の騎士のように鎧を着ている個体の事だ。それに加え頭が良いので上位種入りのゴブリンの集団は連携をしてくるようになり、一気に厄介になる。
「一番良いのは、愛海が上位種を一撃で倒して、残りを殲滅。多分これが安定。蒼くんに任せても良いけど、火力が出せる愛海にして欲しい、かな」
「え〜私そんな狙い撃ち出来るかな……」
「それなら多分大丈夫ですよ。魔力操作がありますし」
「あ、そっか。こういう時のための魔力操作だね」
「はい」
「今日も俺は、今日も前で敵をぶった斬るだけだー!」
「そうやって昨日も後先考えずに突っ込んで。私の体力も考えて」
「そうだそうだ」
そんな感じで作戦会議を終えた俺たちは、ダンジョン攻略に向けて出発し始めたのだった。
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