第28話 女子2人のダンジョンに向けてのお買い物
「やっほー、優里」
「おはよう愛海」
生徒会役員になるための試験前日、愛海と優里は一緒に携帯食糧を買うため待ち合わせをしていた。いろんな店を回って、コスパが良さそうなのを買う。これが2人の目標だ。
文字通りいろんな店を回る。携帯食糧は冒険者にとって携帯食糧は必ず必須だから、在庫は大量にあるはず。
今の時間は午後4時。待ち合わせが必要だったから少し遅くなるけどさすがにまだ売り切れては無いはず。
その予想は的中し、2人は無事に食糧を買うことができた。
「まだ2件しか回ってないのに、もう買えちゃった」
「ん。まだ5時だし、適当にお店回らない?」
「オッケー」
適当に近くの店に立ち寄る2人。いつの間にかダンジョン近くまで来ていたのでそのまま2人は流れるように入っていった。
「相変わらずこの時間帯は人多いな〜」
「ほんと、人酔いしそう……」
「人混み苦手だもんね〜優里」
掲示板前が運良く人があまりいなかったため移動する2人。
掲示板には、企業からの依頼や、ギルドからの連絡などが張り出されている。ダンジョンの新情報や魔物の特性、上位冒険者の活躍など。それらの中に『換金額ランキング』というものがある。一月で換金した額の合計ランキングで、TOP10まで載っており、ダンジョンごとに違うランキングになっている。各ダンジョンごとにギルド支部が置いてあるため、その支部のランキングと言ってもいい。
2人はその『換金額ランキング』に興味があるわけではない。学生の身分でこのランキングに載るのは不可能だからだ。副業で冒険者やっている人がギリギリ10位に入り込む程度。
ただこのランキングは他人がどれくらい冒険者として稼いでいるかを知ることが出来る手段の一つだ。そしてその冒険者の強さを見定める指標の一つにもなる。
2人がそのランキングに視線をやると、そこには見た事のある名前が載っていた。
『第1位 神生蒼 129万円』と。
同じパーティーの人がランキングに載っている。しかも第1位。ここのダンジョンは初心者向けで、対して稼げない。なのに2位以下を大きく突き放して堂々の1位だ。
同姓同名の別人と疑ったが、ランクは学生になっている。本人で間違いない。
「蒼くん、毎日、ダンジョン行ってる…?」
「え、にしてもこれは凄いでしょ。こんなに稼いでるんだったら放課後ずっとダンジョンにいるんだろーな〜」
課題は休み時間にやっていたし、と予想する愛海。
「それでもこれ、普通じゃない。多分かなり奥深くまで行ってると思う」
奥の方が強い魔物が出て高値で換金できるものが多いから、と言葉を付け足す優里。
「それでもこれだけ稼げるんだったら、魔物余裕で倒してそうだね」
「ん。明日明後日頼りになる。ねぇ、愛海」
「うん? なに?」
「蒼くん、狙ってみたら?」
「え、」
「蒼くん、優しいし、見た目も良いし、強そうだし。不足はないと思うよ?」
いきなり恋愛話になると思っていなかった愛海は心の準備が出来ていなかった。
「え、いや、うん。蒼くんはカッコいいし、頭いいし、優しいし、見た目めっちゃタイプだし、カッコいいけど! いきなり『付き合ってください!』って言って爆死したらもう……」
「いいじゃん。私だって、恵と付き合ってるし。勇気出して告白してみたら。蒼くんOKしてくれるかもよ?」
「それは、まず私蒼くん好きって決まった訳じゃないし! それに蒼くん優しいから断らなそうだし。けどそれって蒼くんに気を使わせてそうで……」
(愛海、それは好きって事なんだよ……)
優里が心の中でそう呟く。
結局帰りも愛海は恋愛話の熱が冷めきらず、優里に自分が蒼のことを好きではないと頑張って証明しようとしていたが、側から見れば好きだと証明しているようなものだった。
(蒼くん。どうか愛海を貰ってあげて……)
帰り道ずっと愛海の話を聞かされ、疲れ果てた優里はそう懇願したのだった。
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