第41話 発電所で発電
「これは……〈呪い〉、ですね」
発電所に着いた俺たちはその異様さに驚きを隠せないでいた。施設の一部が黒い膜のようなもので覆われていたからだ。
「呪いは、《機械神》の俺でも解除できません。解除出来るのは術者か、〈解呪〉のスキルを持つ者だけという絶対法則なので」
例外があるとしたら魔法神や創造神くらいか。
呪いは様々な物がある。対価を支払いそれに見合った効果を得るものが大体だが。この呪いは規模こそ大きいがおそらくこの施設と、電線で繋がっている各所の電力を使えなくするもの。全てがこのように黒い膜で覆われてはいなかったから、ここを源泉に影響を及ぼしていると思われる。
「これでは電力復旧は不可能です。〈解呪〉のスキルを持つ者が来るまでこの施設は使用できません」
「そんな……」
創造神に助力を乞うか? いや、基本的に神は地上には介入しない。俺が例外なだけだ。
「ひとつ、方法はあります。根本的な解決にはなりませんが」
「?」
「俺から電力供給を行います」
俺の動力源である魔永石は、無限のエネルギーを生み出す永久機関だ。その生み出すエネルギーを魔力から電気に変えるのである。
「出来るの? 莫大な量の電気になると思うけど……」
「心配しないでください、愛海。俺は機械神ですよ? 呪い以外は大体対処出来ます」
「分かった。信じるよ」
首元に増設するつもりだったUSB type-Cから大容量電気送電用の端子に改造。それに送電用の極太ケーブルも創造する。
「愛海、施設の者に聞いて、外部に大型の変電所がないか聞きましょう。あればそこから送電します」
「分かった!」
俺と愛海は施設内を歩き回り、ようやく人を見つけた。だが皆どうにか自分達の手で復旧させようと対応に追われている。
「愛海、お願いします」
「うん」
愛海が大きく深呼吸した。
「お忙しい中申し訳ありませんが、責任者の方はいませんか! 私たちはこれに対応する術を持っています! もしこの中にいなければこの旨を伝えて連れてきてください! お願いします」
愛海の声は施設の人に伝わり、皆が全員こちらを見た。だが反応は良くなかった。
「今子どもに構ってる暇はないんだよ!」
「なんで子どもがこんなところにいるんだ! 警備はどうなってる!」
予想通り、ではあるがこちらも諦められないんだよ。
「愛海、どうしますk__」
「私が責任者だ。君たちなら対応できると言ったね。それならやってもらおうか」
1人男が出てきた。
「局長! そんな子どもに構ってる暇は__」
「我々がここでいくらあたふたしたところで、復旧できないだろ。それなら、この子たちに賭けるのも悪くないと思っている」
「しかし!」
「な〜に。施設を壊すようなことがあれば止めるさ。さあ、どうするんだい? ここで言って欲しい」
この場で言うことで、ダメな方法であれば皆の異議に合わせて断れる、と言った感じか。
「ここの施設で発電出来ないのであれば、別で発電すれば良いのです」
「その方法は?」
「俺が発電します」
「「「「!?」」」」
愛海以外は「何言ってんだコイツ」と言った感じだ。
「俺は人間ではありません。先日マギクラフト社より発表されたブロワのような魔道頭脳を搭載している自動人形です! 俺の動力源で発電すれば十分復旧できます!」
「何を言うかと思えば……」
「こちらがその証拠です」
俺は全員に見えるように首元の端子を見せる。
「これは……」
「信じてください。人が機械を信じ切れないのは分かっています」
静まり返っている空気。だが、その空気を変えたのはチーフ、と呼ばれていた人だった。
「信じよう。私たちは今、君たちを信じることしか出来ない」
俺たちは送電が可能な施設、に案内してもらった。ここは呪いの影響を受けておらず、発電施設と物理的なつながりを断てば使えそうである。
「ここは電圧を変える場所だから使えるはずだ」
「了解しました」
俺は局長に断りを入れ、〈機械操作〉で電線を切った。それから首元の端子にケーブルを挿し、もう一方の方を施設に繋いだ。
「では、発電を開始します」
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