第42話 もう1人の家族
「では、発電及び送電を開始します」
俺の魔永石から生み出される無限のエネルギー。今まではそのエネルギーを全て魔力として使ってきたが、今回は電力として使う。
送電し始めると、ケーブルから熱が発し始めた。やはり町に供給するほどの電力を送電するとなると、このケーブルでは少し力不足だったか。
でも、ちゃんと電力は回復出来ているようで、施設のあちこちの明かりが点き始めていた。
「増設します。流石にケーブルが持ちません」
俺は首元に端子を追加、ケーブルも追加で創造し、それを俺と施設の機械に挿す。
この極太のケーブル2本でようやく安定したようだ。普通のケーブルなら同サイズのものを何十本も要しただろうから、〈機械創造〉様様である。
電力自体は復旧したが、前述通り根本的な解決になはならない。呪いを解かなければ、俺はこのままずっとここで電力を供給するために拘束されてしまう。
〈解呪〉の能力を持つ人は希少だ。当然俺にそんな知り合いがいるわけもなく……
いや、1人いる。〈解呪〉することが出来る人が。一度も会ったことないけど、もしかしたら来てくれるかもしれない。
俺は早速にその人にメールを送信した。現在位置も一緒に。
送ってすぐ『既読』がつき、『今すぐ向かう』と返信が来た。
数十分後、彼が来た。俺が呼んだのは……
「最初の言葉が、『呪いを解きに来てください』とはなぁ……蒼」
自分の義兄である、小林晴翔だった。
「はじめまして、義兄さん」
「そうだな。はじめましてだな」
彼は呪いに包まれた機械と、うなじにコードが繋がっている蒼を見て言う。
「家族団欒と行きたいが……先に片付けることがあるみたいだな」
「そうですね。後で説明をしますのでこの呪いを先にお願いします」
分かった、と晴翔は言うと、目を瞑り、魔力を込め始める。その魔力は純白だった。
この規模の呪いを解くのにパワーが足りないのか、晴翔は自分の体が直視出来ないほど光輝くまで魔力を込め続けた。
「いくぞ!」
晴翔の体を覆う眩い光が彼の手の先に集まり、真っ白な球を作り出す。全ての光が集まった瞬間、それは晴翔の手から離れ呪いに漂うと、呪いに触れた瞬間鼓膜が破れそうなほどの大音量と共に辺りが光に覆われ、咄嗟に目を覆う。覆う。
次第に光は収まっていき、人が目を開けるくらいにまでになると、蒼の「目を開けても大丈夫ですよ」という言葉で皆恐る恐る目を開けた。
そこには、なんも変哲もない、呪いがかかる前の機械があった。
「これなら!」
責任者の彼はさっきいたところ、制御室に駆けていった。
「これで、電力も復旧するな」
「そうですね」
「「……」」
ちょ、何この空気!? 蒼のお兄さん?で合ってるのかな? すっごい蒼のこと気にしてるんだろうなぁ……アレを見た後だし。……だとしても! 兄弟でこの空気は変でしょ! え、もしかして確執とかあるの? ケンカしたばっかりで本当は会いたくなかったとか? でも蒼から兄弟がいるなんて聞いてないしな……
と、心の中でSOSをだす愛海。しかしそれは誰にも届かない。
張り詰めた空気のまま、その日は家に帰った。
♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎
「……と言うことなんです」
俺は家で晴翔に事情を話した。自分が異世界の自動人形であること、愛海をマスターとして登録していること。
「もう、何が何だか……」
例の如く彼は事実を飲み込めていない様子。
「ではテレビをスマホをご覧ください」
俺は彼のスマホを〈機械操作〉で操り、勝手にアプリを開いたりスリープさせたりした。
「こういうことです」
「分かった。信じるよ」
良かった。分かってもらえたようだ。
「しかし、やることが増えたな」
「え?」
「現状、お前に人権がない。もしお前が人間でないことがバレたら、学校を退学されるし、戸籍とか取得できない」
「はい」
「この世には、子どもは知らなくても良いこと、と言うものがたくさんあるのは分かるよな」
「? はい」
「じゃあそれで行こう」
晴翔兄さん、その薄気味悪い微笑みはなんだ……
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