第40話 緊急事態!?

「どう、だった?」


「はい。信じてもらえました」


 マギクラフト社には愛海と一緒に来ていて、彼女には一階で待ってもらっていた。本当は社長室まで来てもらいたかったが、当人が「畏れ多いから……」ということで俺一人だけ行ったのだ。


「私のことも、話したの?」


「もちろんです。後で認識の齟齬があったらいけませんから」


「蒼くんらしいね。その、用意周到なところ」


「まだ貴方の自動人形らしいことはまだ何一つ出来てませんけどね」


「う、それは……」


急に俺のマスターになっても、何をどうすれば良いのか分からないのか。


「本当になんでも良いのですよ。俺は“貴方のために”動きます」


「っ!……」


愛海は顔を隠してしまった。何かあっただろうか。

だが次の瞬間、建物内が停電になる。もう夕方なので少し薄暗い。何か異常事態だと思い、外に出ると、停電はマギクラフト社だけでなく、町全体が停電になっているようだ。


「これは……」


情報収集のために、インターネットに接続しようとするも、電波塔が機能していないのか応答がない。


「蒼、これは……?」


「おそらく、町全体が停電。しかもかなり広範囲のようです。モバイル通信でインターネットに接続しようとしましたが、出来ませんでした。そのため停電の原因は現時点では不明です」


「電力の消費に供給が追いつかなくなったとか?」


「その可能性もありますが、それでも町全体が停電するのは変です。一部建物には太陽光発電によって蓄電されているはずです。未だに明かりのつく様子がないとなると……」


「何か、別の原因が……?」


ドーン


かすかに聴覚センサーが捉えたその音は、明らかに爆発音だ。しかもその方向は……


「発電所か……」


発電所の機能が止まった? 予告もなしに? ありえない。ならば何か異常が起きたのか。


「どうしたの、蒼?」


「情報更新です。愛海、どうやら発電所の機能が止まったようです。……おそらく人為的に」


「そんな。発電所って、魔道具によって警備が強化されたってニュースあったよ」


「ですが、起きています」


周りはざわついている。


「蒼く〜ん!」


階段で上階から降りてきた神生悠、そして幸子。混乱によって社員も社長がいる事に気付けていないようだ。


「悠さん。情報共有します。スマホに今俺が分かっていることを近距離共有するので開いてください。インターネット回線はここら一帯死んでるでしょうから」


悠がスマホを取り出し、俺はそれにテキストデータを共有する。


「本当、なのかい?」


「はい」


自然にここまでの影響が出るのは考えにくい。それなら人為的、と考えた方が容易だろう。


「どうしますか? 愛海。いえ、マスター」


「え?」


「俺の能力を行使すれば、直ぐにでも発電所へ行くことができます。それに今回は機械関係なので、俺の能力で停電から復旧させられるかもしれません」


「つまり、直しに行く、だけだよね」


「はい。何もいなければ」


「……」


愛海が深く考え込む。


「行こう、蒼。高校生が出しゃばることではないかもしれないけど、少なくとも私たちは、普通の高校生じゃない」


「承りました」


「蒼くん、私からもお願いする。これは、良い機会になると思うの。蒼くんの存在を認められる機会に」


なるほど、たしかに、これで功績を認められれば、俺の存在を世界に認められる足掛かりに出来るかもしれない。


「はい」


俺は愛海を連れて、建物の外へ出た。日が長い時期だから薄暗いで済んでいるが、もし春や秋にこの停電が起きた場合、真っ暗でライトでもない限りまともに活動できないだろう。


「では少々失礼します」


「きゃっ」


愛海をお姫様抱っこする。


「飛んでいる間は、口を開かないように。舌を噛みますよ」


「え?」


俺は翼を展開した。ダンジョンボスの時に背中から生えたあの翼を。一体どういう原理で飛ぶのか分からないが、《機械神》の力だからと割り切ろう。


……周りの視線が気になるので早くこの場から離れよう。


「行きます!」


空へ急上昇し、地面と距離を取る。飛ぶのは初めてだけど、問題なさそうだ。

そのまま発電所の方を向き、一気に加速。たった数分で発電所に着いたのだった。

地上からは、ぼんやりとだが光る何かが高速で動いていたのが見えていたらしく、一部の人はそれを流れ星か何かだと思ったらしい。飛んでいる間の愛海は、必死に口が開くのを堪えていたのだった。

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