第39話 社長も驚く蒼の正体
「うん、ごめんもう一回言ってくれるかい?」
放課後、マギクラフト社に来て社長の神生悠に俺が自動人形であることを告白した。だが彼は信じられないようだった。
「だから、俺はこの世界の者でも人間でもなくてですね……」
「いや、ごめん。ちょっと、反射的に聞き返してしまった。そうか、“自動人形”か。君は前も
そうだけど予想もつかない話題を持ってくるね」
良かった。とりあえず信じてもらえたようだ。
「なぜ、このタイミングで僕に? 学校でも明かしたのかい?」
「いえ。一部の仲のいい生徒にだけです……」
「ちゃんと口止めはしているかい?」
「え、あ、はい」
「良かった。そこらへん気をつけないと最悪誘拐されるからね」
……え?
「いや、この世界で魔法技術はウチがほぼ独占しているから、異世界の魔法技術を知っている君は間違いなく色んな勢力に狙われるだろうな、って」
「あぁ、そっちの方でしたか……」
「そっちの方ってなんだい?」
「人間ではないので、それに見合った扱いをされるのでは、と」
日本には、ロボットに人権が与えられるような法はない。だから、俺が何をされようが法律は味方してくれないのだ。
「それは、どうしようもないねぇ」
「だから、出来るだけロボットである事は隠して、頃合いを見て世間に明かそうかと。その先駆けとして、実は動画配信サイトで俺のこの声を歌としてあげてるんです」
「あぁ。見てるよ。再生数伸びたてたね。おめでとう」
あ、悠も視聴者だったのか。
「チャンネルに『AI』と書いてあったからもしかして、とは思ってたんだよ。まさかそれが本当だったとはね」
「はい」
「……取り敢えず、当分の間は君の言う通り隠した方がいね。既にブロワがいるから、以前よりも受け入れられやすいだろうけど、ブロワですらまだ人権の『じ』の文字すら出てきてないからね。よっぽどの功績とか、挙げない限りは人権は得られないと思った方がいいよ」
「はい。そのようにします」
「何かあれば、公にはできないけどウチでサポートするよ」
「ありがとうございます」
今は世界のトップレベルにまで上り詰めたマギクラフト社からの支援は予想外だが受けられるなら受けておきたい。
「あと、これ、遅くなりましたが粗品です」
と、何十枚も紙が綴じられた冊子を渡す。
「これは?」
「自動人形の大まかな設計図、テンプレートです。ブロワのボディを造っていると伺っていたので」
「君は、本当に、情報が多過ぎるよ……」
「本当は俺自身が造れば1番手っ取り早いんですけどね。それだとこの世界の技術発展のためにはならないと思って、この形を取りました」
ため息をつきながらも冊子に書かれた内容を一瞥した。
「本当に、ありがとう。これでまた一歩前進できるよ」
「いえ。“機械神”からのちょっとした贈り物だと思ってもらって大丈夫です」
あ、そう言えば悠に俺が機械神であることは言ってなかったっけ。異世界から来た自動人形であることは言ったけど。
「え、機械神って__」
「そんな事はどうでも良いのです! それでは、ブロワのボディが完成することを願っています。それでは!」
ちょっと無理矢理な気もするけど、言及するとまた詳しく説明しないといけないし、これでいいだろう。
部屋から出ると、立ち聞きしていたのか仕事服の幸子さんがいた。
「全部聞いていたんですか?」
「うん。まぁ、内容には驚いたけどね。それでも今までと関係は変わらない。君もそう願ってるんでしょ?」
「はい」
「それじゃあね。気をつけて帰ってね」
俺はマギクラフト社を後にした。
「はぁぁぁ……」
「どうしたの? ため息なんかついて」
「いや、ちょっとさぁ、驚きが多くて」
あれ、さち? ちょっと今日社長室に来すぎじゃない?
「蒼くんの秘密を知ったんだもんね。そりゃあ気疲れしちゃうか。私もまだちゃんと飲み込めてないし」
「まさか、盗み聞きしてたのか?」
「いいじゃん。部外者じゃないんだし。夫婦で秘密は共有しましょ」
「はぁぁ……」
頼むからそういうところ、他の社員に見られるなよ……?
「蒼くんをサポートするんでしょ? せっかく贈り物もらったんだし」
「そうだな。彼には大きな恩がある。そして今回も。……全力でサポートするよ」
「マスターの愛海ちゃんもよ。肝に銘じなさい」
「なんでさちが上から目線なんだよ」
社長室で、社長とその受付嬢は笑い合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます