第45話 お偉い方との会談
『第45話』
「ドキドキする……」
「大丈夫です。何も心配することはありません」
今日は愛海と共に都庁に行く。褒賞を受けるためだ。自治体トップと会うともなると流石に緊張する。
「何かあっても俺がカバーしますから」
愛海の性格上何かやらかさないとも限らないが、大丈夫だろう。
予約したタクシーに乗り込み、都庁に向かう。
「地下鉄でも良かったんじゃない?」
「今通勤ラッシュですよ。こちらが確実です」
「そっかぁ……制服で大丈夫かな?」
「大丈夫でしょう」
俺たちの格好は学校の制服だ。最初は私服と迷ったのだが、褒賞される場で私服は良くないだろう。それに、これから新しく服を買うのも金がかかるということで制服だ。
「リボンがだらしないです」
愛海の胸元にある緑色のリボンを綺麗に調整する。
「ありがとう……」
愛海は照れくさそうに言った。
「蒼は……完璧だね。ネクタイ直してあげようかなと思ったんだけど」
「主人の手を煩わせるわけにもいきませんから」
「カッコいいよ」
「ありがとうございます」
建ち並ぶ高層ビル群の中の1つに入る。入って早々、女性が「どうぞこちらへ」と言うのでついて行く。着いた部屋には初老の男性が座っていた。
「やぁ、君らが今回の英雄だね」
彼からは柔和な雰囲気が感じられる一方、その視線は俺たちを汗一滴も見逃さないほど観察しておりようだった。
「初めまして、三谷都知事。国立ダンジョン対策高等学校1年神生 蒼です」
「同じく、上原 愛海です」
「そんなに礼儀正しくしなくて良いよ。この後別の部屋に移動して褒賞するんだが、それまでは楽にしてくれて良い」
「分かりました。愛海、座りましょう」
「う、うん」
愛海は余所余所しく高そうなソファーに座る。緊張で動きが固い。せっかくの背もたれにも寄りかからず、背筋を伸ばしていた。
俺はそんな彼女の後ろに侍した。
「君は座らないのかね?」
「はい。いつでも彼女を守れるように」
「ふむ……」
彼は考え事をしているようだった。
「君たちは普通の高校生には見えないな」
「えッ」
「いや、詳しく言うなら後ろの君がだな」
「どう言う意味ででしょうか」
「__どう意味、か。その容姿。作り物ではないかと疑いたくなるほど整っている。さぞ、女性にモテるであろう」
「生憎と、今のところ誰からも告白を受けたことはありません」
愛海は心の中で「やった!」とガッツポーズをした。
「佇まいもだな。君からは人間らしさがあまり感じられない。それに、行動が使用人のそれだ」
「……よく言われます」
「否定はしない、ね」
どうしてそんな質問をしてくるのだろうか。__警戒が必要か?
「あなたの質問に答えるのも薮坂ではありませんが、この場で答えるには相応しくないと判断します」
「では、どの場で言う気かね?」
「この後の褒賞報道です。その時にあなたが知りたがっている俺をお教えします」
「__分かった。では時まで他愛のない世間話でもしよう」
それから褒賞まで、俺たちは本当に他愛のない会話をした。最近の若者は何にハマっているのか、勉強は難しくないか。本当に近所の人と話す程度の会話だった。
彼が何を考えているのか、全く分からなかった。
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