マギクラフト社編

第11話 自動人形、身体計測をする

5月が終わり6月に入る。この地域は太平洋側に位置しているので、気温が高い上に湿度も高くなる。


学校でもほぼ全員が半袖になっており、人によってはズボンの裾を上げている人もいる。


ここは身だしなみに関しては校則が緩く、髪染めOK、髪の長さも自由、校章は制服にデザインとして刺繍されている。学年章も制服の色で判別可のためない。




朝登校し教室に入ると、皆ハンディファンやうちわで涼んでいる。愛海は〈旋風〉という魔法を威力を最小限にして涼んでいるようだ。


魔力操作の練習が始まってから2週間ほど。あれから毎日昼休みから練習していたおかげで愛海もほぼ魔力操作が出来るようになった。


そのおかげで魔法の調整はお手の物になり、また日常的な魔力の行使によって魔力量が少し増えている。


優里は支援魔法しか使えないので、文明の利器で涼んでいるが、彼女は正直ヤバい。


俺が元いた世界には、エルフと言う種族があった。この世界の小説やアニメといった創作物にも登場してるようで、彼らは魔法の扱いに長けていた。その理由が魔力操作だ。エルフ、と言う種族は皆が魔力操作を他の人間と言った種族よりも繊細に出来る。


優里の魔力操作はそのエルフ並みなのだ。彼女も愛海同様魔力量が増えているので、もし彼女が攻撃魔法も使えていたら魔法に関して彼女の横に立つものはいないだろう。




朝のHRホームルーム。


「明日から冷房入るぞ〜」

「「「「えぇぇ〜」」」」


担任の鈴木先生にブーイングの嵐が。


「しょうがないだろ。冷房の魔道具の点検にどれくらい手間がかかると思ってんだ」


先生のマジレスに反論出来ない同級生たち。


「なぁ、冷房の魔道具ってなんだ?」

「え、そのままの意味よ」

「あ〜そっちじゃなくて、どこの会社が作ってるんだ?」

「マギクラフト社、って言う日本のベンチャー企業らしいですよ」

「やっぱりそこか……最近その会社の名前、よく聞くんだよな」

「そりゃあ、世界の魔道具と言う魔道具は、ほとんどがそこの会社が作ってるから」

「この前、テレビにも出てた」

「スゲェよなぁ」


マギクラフト社。ダンジョンが現れてから約1年後に設立された会社で魔法と科学を混ぜた魔道具を作っている。ただそれは、まだこの世界では魔法技術が未発達なため、既存の科学を併用しているわけだが。


この学校の冷暖房といった空調機器、掃除機などに止まらず魔法を補助するための杖も作っている。愛海や優里を含め、このクラスの魔法使いの殆どはマギクラフト社製の杖を持っている。




ある日の昼休みに俺は鈴木先生に呼ばれた。身体計測をするためだそうだ。身長、体重、魔力量を調べる。


身長、体重、魔力量の順に測っていく。身長は179cm、体重は80kg。


この数値は設計通りだ。ただ問題は魔力量である。


俺は「魔永石」と呼ばれる特殊な魔石から無限に生み出される魔力により動作している。魔永石は、前の世界では永久機関の1つで、伝説の物となっていた。それを俺を造った開発者が過去の文献と持てる技術から生み出したのだ。その魔永石は、ただの燃料機関、だけでなく俺の思考・記録なども司っている。


俺の元の世界の魔力測定装置(魔力量を調べる魔道具)は、水晶玉型だった。なので魔力が多すぎて許容量を超えると破裂四散する。


この世界の魔力測定装置はもとの世界のと同じ水晶型のようだ。ただ違うところは、前の世界のは光の強さで魔力量を測定していたが、こちらでは魔道具が測り出した情報をPCに打ち込んで明確な数字として出る。


水晶部分が割れるか、PCがバグるか。どちらでもあって欲しくないと願う。


だが俺の願いとは裏腹に、手が水晶玉に触れた瞬間PCに9999……と文字が並び始め数秒もしないうちにバグり始め変な音が鳴る。そして水晶玉が弾け飛んだ。


この2段階構えの惨状に、俺は心の中で涙目で笑った。コレが、俗に言う「フラグ回収」と言うのだろう。願わなければ良かった……


俺は「ごめんなさい」と連呼しながら四散した魔道具の破片を速やかに掃除する。一応ゴミ箱に捨てずに、袋に入れておく。


その間先生は目を見開き、体を小さく振動させながら硬直していた。


うん。ごめんなさい。


「あっ、」


そういえば、《機械神》の能力の1つで〈機械操作〉という自由に機械を操れる能力でデータの改竄ができたことを思い出す。


俺は固まっている先生を横目に教室に戻り、いつもの日常に戻った。

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