第8話 自動人形、魔法を使う
先生が王手を決める瞬間、恵の背後から炎の弾が飛んでいった。
それは先生に当たることはなかったが、恵も先生も戸惑っている。
何せこの場には魔法使いがいないはずなのだから。秋葉優里や上原愛海と言った後衛の人たちは俺たちから離れた場所にいる。
先生は炎の弾が飛んで来た所を見る。するとそこには宙に浮く1本の剣があった。
「なんなんだあの剣は!?」
「俺の武器ですよ」
先生向かって言う。その内に恵は剣を拾い体勢を整える。
「これを通して〈炎弾〉を打ちました。今のは外しましたが、次は当てます」
俺の言葉を聞き、苦笑いする先生。
B級でも、このような剣は初めてか。ならこれは十分通用するだろう。
「〈筋力強化〉、〈速度上昇〉、〈疲労回復〉、〈集中力上昇〉」
俺は恵に支援魔法をかける。〈筋力強化〉や〈速度上昇〉、〈集中力上昇〉は言わずもがな、〈疲労回復〉は徐々に体力を回復させ、呼吸を整える。ただこの魔法は、傷を癒したり病気を治したりする魔法ではないので使い所に注意。
「スゲェ……」
かけられた本人はその効果を既に実感していた。
「センキュー、蒼!」
そして勢いよく先生に切りかかる。先生は最初と同じように一太刀受け流した後、カウンターしようとするが、〈筋力強化〉を受けた恵の力は凄まじく、剣先が地面についてしまう。絶好の好きではあったが、恵は急に上がった力に慣れておらず、同じように剣先が地面についてしまった。
なので俺は出来た隙を狙って背後から首を突く、寸前で止めた。
「俺たちの勝ちです、先生」
「お、おう……」
先生との模擬戦は生徒である俺たちが勝った。
「最後のあれは凄かったな。特に蒼。お前のさっきのはなんだ?」
終わった後、教室に戻る前に先生に呼び止められた。
「模擬戦中にも言いましたが、あれはただ剣を通して〈炎弾〉を打っただけですよ」
「そう、その剣だ! ちょっと見せてくれ」
せがまれてしまったので仕方なく先生に見せる。
「持たせてくれないのか?」
っと、言われた。別に持たせてもいいが、重さ的に大丈夫だろうか?
「いいですけど、重いですよ?」
「分かった」
先生に剣を渡す。最初は俺と同じように片手で持とうとしたが、俺が手を離した瞬間に両手に切り替えた。
「重いな……これ何キロあるんだ?」
「10kgあります」
「マジか。こんなに重いのも納得だ。良くこんなの扱えるな……ん、この宝石みたいなのは……?」
「魔石です」
「魔石!?」
俺の発言にびっくり仰天の先生。よく目を見開き剣を二度見する。
「……魔法を使ったのは?」
「その魔石を通してですね」
再び剣を二度見。そんなに気になるのか?
「そんなの、ダンジョンでたまに出るレアアイテムじゃないか!」
「いえいえ、これは自分で創ったので……」
「作ったぁぁぁ!?」
先生は頭を抱えた。
そんなにおかしい事か?
俺はインターネットで、冒険者用の武器を検索してみる。
……やっちまった。
冒険者が使っているような武器に対して、俺の剣は性能が良すぎるのだ。剣としても、魔法の杖としても使え、それぞれの性能も抜きん出ている。差がありすぎるのだ。
もちろん上位ランク帯の冒険者ともなると、ダンジョンから出土された武器を使っている人も多い。しかしそれらでさえ、俺の剣の方が圧倒的に性能がいいのだ。
ダンジョンから出土される武器は大抵は強力な物だ。魔法使いで無くとも、使用者の魔力を使い、刻まれた魔法陣の魔法を発動出来るもの、これといった効果はないが、とにかく頑丈だったり、切れ味がいいなど様々だ。
さて、どうしたもんか。今回は俺に掛かっている制限の都合上、初級魔法の〈炎弾〉しか放ってないから大丈夫だろうが、その内コイツのヤバさがバレてしまう。
「まぁ、大事にしろよ、それ。たぶんこの世界にある武器の中でもトップクラスの物だろうからな」
っと、俺の肩を軽く叩き、闘技場を出て行く。
これ以上聞かれたらどうしようか、と心配したが、どうやら杞憂だったようだ。
流石にパーティメンバーには、ある程度言っといた方がいいか……3年間一緒に活動するんだし。
でもそれで変に勘ぐられたりしないだろうか?
特に上原さんは勘が当たりやすいから、気をつけなければ。
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