第7話 自動人形、初の戦闘訓練
学校に通い始めてから1週間が経った。俺はこの1週間毎日放課後はダンジョンに潜り続け、金がたんまり溜まった。ただ使うタイミングがない。光熱費、水道代、食費は実家から送られてくるお小遣いで間に合う費用だし。そのうち自分の口座を作ろうかなと考えている。
今日から午後の授業としてダンジョンに関する実技の授業が始まる。戦闘訓練、サバイバル術など。そのため今日は皆自分の武器を用意してくる事になっている。俺は剣の鞘を一本分作り、それに武器を入れる。革製のため、手にしっくりくる触感。鞘についている肩掛け用の紐を持ち、俺は家を出た。
「おはよう」
教室に着くと、同じパーティメンバーである恵から声をかけられた。
「それがお前の武器か?」
「そうですよ」
「ふうーん」
まじまじと俺の手元の剣を見る恵。
「なぁ、ちょっと刃の方も見せてくれよ」
そうせがまれたがコイツの重量は10kg。両手を使っても普通に重い。
「午後の実技の時ならいいですよ」
そう答えると恵は少し不満がありながらも自分の席に戻って行った。
午前の授業は普段と何も問題なく終わる。午後は実技の授業だ。
男子は男子は更衣室、女子は女子更衣室でそれぞれ着替え武具を装備する。この前作った物を着る。他の人はいかにも「冒険者」と言う感じのファンタジー要素がある装備だ。フルアーマーな人もいれば俊敏性重視だからか革製の装備の人も。恵はチラ見した感じ革製の装備の上に胸プレートを付けているようだ。
装備し終えた俺たちは、闘技場へ向かう。どうやら俺がいた男子集団が1番来るのが早かったようで、俺たちが着いてから約5分後に女子達もやって来た。その待ち時間に恵に武器を見せると、「これ武具屋で見た事ないが、オーダーメイドか?」って聞かれたので「自分で作りましたよ」と言ったら「スゲェな! こんな業物自分で作ったのか!」と驚かれた。
「剣とか槍とかの前衛はこっち、魔法使いはあっち行けー」
その掛け声に俺と恵などの前衛の人、凛や愛海などの後衛の人に分かれて訓練が始まる。
「それじゃあ、最初は俺と模擬戦してもらうか〜、俺対お前ら全員で」
俺たちの訓練を受け持つ先生、志鎌先生の言葉に火を点けるられ、「舐めてんのかぁぁぁぁ!」「やってやらぁぁぁぁ!」と闘志を燃やす俺と恵以外の生徒達。
おいおい、午前の真面目さはどこに行ったのやら…
俺は恵になぜ落ち着いているのか聞く。
「あれってどう考えても煽りだろ。それにこっちは何人もいて、あっちは1人なんだし、馬鹿に突っ込んでもらって先生がどんな動きをするのか見た方がいいしな」
彼は普段の口の悪さからは考えられないような判断とその根拠に関心する。俺が動かなかったのも彼と同じように先生の動きを見るためだ。
俺はダンジョンに潜っていたため、ある程度剣の扱いに慣れた。インターネットで調べて、B級以上の冒険者の動きを学習し、実践したり、自分なりに改良したりした。それでも今回は別。相手は先生、つまり人間だ。対人戦は今までやった事がない。なのでまずは相手の動きを見定める必要があった。
「先生はロングソードを使うのか」
先生の手元には一丁のロングソードの模擬剣。それに対して俺たち生徒は本物の武器だ。下手をすれば殺しかねないが、先生には余程の自信があるのだろう。実際、先生が冒険者としてのランクはB級だったはず。
「確か先生は、かつてB級の冒険者だったはずですよ」
「うげ、マジか。そりゃああんな舐めプ出来るわけだ」
向こうでは既に戦闘が始まっており、金属音が訓練場(闘技場)で鳴り響いている。
生徒達は必死の形相で、先生に一太刀入れようと突っ込むが、1人、また1人と払い除けられる。先生は基本自分から攻撃する事はなく、カウンターをしてくる感じだった。
気付けば残っているのはずっと観察していた俺と恵だけになっていた。
「残りは……お前達だけか」
先生がふぅ、と一息ついた。完全に、ではないが俺たちを舐めている様子だ。
やるからには勝ちたい、勝てなくても、自分の戦闘スタイルを見せて指導を受けたい。
俺はそんな気持ちから、恵に提案をした。
「恵くん。手を組みませんか?」
「ん? いいけど?」
「ありがとうございます。俺たちは同じパーティですし、どうせなら連携の練習をしちゃいましょう」
「連携の練習ぅ? 愛海と優里は今いないぞ?」
「それはなんとかします」
俺は〈アイテムボックス〉からもう1本剣を出す。それを見て恵は驚く。
「……色々聞きたいことがあるが、取り敢えず任せる」
俺と恵は先生の方を向く。すると、先生は「やっと終わったか……」と剣を構え直す。
構え直す、と言っても俺たちを侮っているのか剣をこっちに向けるだけ。
「合わせます」
恵が俺に目配せをし、俺たちの戦闘が始まった。同時に俺も戦闘モードになり、目が赤く光る。
まず恵が先生に接近し、一閃入れるがそれを先生は難なくガード。カウンターで薙ぎ払うが恵は直ぐに離れている為当たらない。
それによって出来た隙に俺は剣を“1本“で突っ込む。今度は何回か切り合う、がどちらもダメージを受ける事なく、俺は後ろに下がる。
そして再び恵が切りかかる。初めての割には上手く連携が出来ている。このように2人で切り替えていけば1人で対応している先生の方が先に体力が切れるはず。
さすがに先生もそれに気付いてか、今度は恵との力比べをし、恵がそれに負けて武器が宙に飛ぶ。
「〈炎弾〉」
先生が王手を決める瞬間、恵の背後から炎の弾が飛んでいった……
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