第35話 みんなに打ち明ける
「生徒会は、あなたたちを歓迎するよ」
攻略から翌日の学校。放課後に放送で呼び出された俺たち4人は生徒会室へ向かった。ドアを開けてすぐ、『歓迎』と書かれた大きな画用紙を掲げてそうそう言われたものだから、俺以外の3人は驚いている。
「ほらほらそんな珍物を見るかのような目で見ないの! 今日は歓迎パーティーだよ〜!」
初っ端から壁にめり込むほどの力で物を投げてきたことを考えると、少々気味が悪いというか、なんというか。
「ほら! いいから入って入って」
彼女に背中を押され、それに吊られて他3人も生徒会室へ。中はパーティー会場かと疑いたくなるほどにキラキラと装飾されていた。
「それじゃっ、カンパイ〜っ!」
紙コップに炭酸ジュースやお茶などを入れて乾杯。もはや、彼女のノリについていく行くのである意味精一杯だった。
そんな中でもやっぱり憧れの人と一緒にいる時間は大切なもので、3人は遥と雄紀に話しかけて談笑をしている。俺はというと、1人椅子に座って水を飲んでいる。
俺は、俺の秘密を、3人に、打ち明ける。だけど、その選択が今後どのように響いてくるのか予想がつかない。秘密を打ち明けたことで、3人に迷惑をかけるのも不本意だ。
「なに1人で難しい顔をしているんだい?君も混ざりなよ」
「いえ。話題が思いつかないので」
「そうそうシカトせずに〜」
この人、やたらとボディータッチしてくるな……肩揉んできたり頬を摘んできたり。少し鬱陶しい。振り払ったりはしないけど。
「ほらほら〜何か悩み事があるなら話したまえよ〜少年」
「お、なんだなんだ? 俺も混ぜてくれよ」
「私たちも!」
いつの間にか談笑を終えていた恵たちもこっちの話に入ってきた。どうするべきか。……いや、ここで生徒会長の遥や雄紀にも秘密を明かし、助力を乞うことが出来るのではないだろうか。彼ら2人は有名人とはいえただの一介の高校生に過ぎないが、少なくとも学校では
融通が利けるはず。そして秘密を複数人で共有することで仲間意識を強くする。
「大事な話があります。とても大事な、皆さんの常識を覆すような話が」
俺の真剣さから、何を話そうとしているのか愛海には伝わったようだ。
「なにもったいぶってんの〜。早く言ってよ」
「蒼くん……」
愛海に頷き、話を始める。
「皆さんは、この世に人間と大して変わらないロボットが存在することを信じていますか?」
「「「……」」」
「な〜に藪から棒に」
「俺の答えは、存在する。そしてそのロボットは今確認できるものでこの世界に1体、稼働している。そのロボットは人間のように思考し、動き、笑い、悲しむことができる」
自動人形というとピンとこなさそうなので、こっちの世界に合わせてロボットにしておく。
「そのロボットは、人間と生活することで感情を育んできた。仲間を得て、共にダンジョンを攻略した」
「まさか……」
「そのロボットの名前は神生蒼。正式名称は『戦闘用自動人形会話可能型開発機』。兵器として開発されながらも人間のパートナーとして、心を持っている。それが俺、神生蒼です」
一気に静まり返る空気。それを壊したのはいつも思ったことをストレートに口にする恵だった。
「そ、そんなことねえよ。確かにお前は普通じゃない。それは分かる。だがお前は俺たちのように《ステータス》がある! 物には、ないものだろ!」
そう言って恵は〈ステータスオープン〉と言い、自らの《ステータス》を示す。俺の《ステータス》は、他人から見ると文字化けしていた。マスターを登録するまでは。
「〈ステータスオープン〉」
《ステータス》
名前:神生蒼
種族:機械神・自動人形
主人:上原愛海
性別:なし
年齢:不明
レベル:なし
魔力:∞
権能:《機械神》
称号:人の形を模した物
見ての通り、新たに『主人』の項目が増えそこには『上原愛海』となっている。そしてみんなに見えていると言うことは、あの文字化けはたぶん俺が許可していない人にしか発動しないのだろう。
「うおっ!」
「人外じゃん……」
「ほうほう……そう来たか」
「お前は、こんなの予想してたのか?」
「いやだって、最初会った時から気配が違うと言うか、なかったんだもん。カズも気づいてたでしょ」
「そ、そうだな」
「問題は、これをボクらみんなに見せて、どうして貰いたいか、じゃないの?」
みんなの視線が俺に集まる。
「えぇ。端的に言うと、協力して欲しいです」
「協力ぅ? ただの高校生である私たちに何を求めるの?」
「まぁ、学校内で融通を聞いていただければ。詳しく言うと、俺を人間ではなくこのにあるように自動人形と認識したうえで、普通に接してもらえると嬉しいです」
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