第37話 異世界の不穏分子

そこは、蒼たちが攻略したダンジョンの最奥で。


「あちゃ〜せっかくの実験動物がやられちゃったか〜。跡形もなく」


その声の主は少女だった。無論、ただの少女ではない。


「せっかくここまでいったのにぃ。ね、ワンちゃん?」


少女は自身が乗っている様々な生物が混ざった、おぞましい姿の生き物に問いかける。


「あの青髪。どこかで見た記憶があるんだよな〜。なんだっけ」


少女は首を傾げる。


「ダンジョンの壁を、こんな抉るなんて。そんな魔法聞いたことないしなぁ」


ダンジョンの壁は破壊できない。傷をつけることは出来ても、破壊とまではいかない。それが常識だ。今までダンジョンの壁を壊すなんて事例はなかった。


「な〜んか気になるなぁ……よし、イタズラして相手の技量を見てみよう! ちょうど、近くに『はつでんしょ』があるらしいし」


 悪い笑みを浮かべる少女。


「そこの君、外に出るよ! 玩具どもも連れていくから準備して!」


少女は付き添いの者に命令をした。


♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎


「よし、バレずにここまで来れたぞ〜」


「警備、人自体は多かったですが、魔法に関してはほぼ何も対策されてませんでしたね」


「透明になる魔法だけでここまで来れちゃったもんね〜」


“この異世界”の魔法技術は元の世界よりも発達していないって、魔王様言ってたっけ。それなら尚更ダンジョンの壁を破壊したアレ、なんだったのか尚更知りたいんだけど。


「ほら、早くこの鉄の塊にくっついて!」


少女が玩具と言ったそれに命令をする。


「え〜っと、確か“呪文”は……」


ポケットから取り出した紙を見て、少女はぶつぶつと唱える。


「……発、動!」


少女が唱え終えると、黒い膜のようなものが発電施設を覆っていく。施設側は異常に気づき、警報が鳴り響いていた。やがて、少女らの元に警備員がやってくる。


「む〜、来ちゃったか〜。花火になっちゃえ!」


少女は警備員に玩具を差し向けた。


「ドッカーン!」


爆発四散。警備員はその玩具によって自爆されたのだ。その衝撃は少女が思っていたものよりも大きく、少女も吹き飛ばされてしまう。


「いたた……アタリ引いちゃったか〜。こういう時はハズレで良いのに〜」


立ち上がり、土埃を落とす。


「やりたいことは終わったし、さっさとてっしゅう〜!」


少女と付き添いは、魔法で透明になり現場から去った。


この衝撃は、遠く離れた場所にいる蒼にまで届いた。

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