第4話 自動人形、装備を整える

「ねぇ、パーティ名どうする?」


メンバーの自己紹介が終わり、ひと段落といったところで凛からの言葉。パーティ名はソロで活動するのならともかく、パーティで活動するには必須だ。


だから早めに決めるに越す事はないんだが…


「「「「う〜ん……」」」」


この通り、全く思いつかない。高校生だから厨二病っぽい名前にしたくないっという考えもあるからか、かなり慎重になっている。


俺もその意を汲んでいい名前を考えてはいるが、俺にできることと言えばネットで調べてそれっぽく組み合わせるくらいだ。


「あ、あの……『四翼』ってどう?」


2、3分ほど熟考していると、自信がなさそうに優里が提案した。


「4人パーティだし、もしかしたらこのパーティで卒業後も活動して、有名になるかもしれないし……」

「いいんじゃない?」

「おう、俺もそれでいいと思う。思いつかないしな」

「俺も賛成です」


全員賛成により、俺たちのパーティ名は『四翼』になった。


「頑張るぞー!」

「「「「おおー!!」」」」




1校時目が終わり、2校時目。2校時目はステータスカードの作成だった。ステータスカードとは簡単に言い表すと《ステータス》をカードに写したものだ。今では就職などで、提出が必須な企業がある。ステータスカードは偽造が難しいため、結構当てにされるらしい。


作成、発行はとても簡単で、生徒に1枚、学校側に1枚。専用の魔道具に触れ、「ステータスオープン」と念じれば魔道具が勝手に読み取り、PCに書き込んでくれる。


学校用にも作るのは訓練のメニューを決めるにあたってステータスカードを参考にするためだとか。他にも無くした人用ってのもあるらしい。


なぜか俺の時は、先生に嫌な顔をされた。3人にステータスオープンした時みたいに名前以外読み取れなかったのだろうか?


3時間目以降は普通の授業だった。先生の教え方も分かりやすく、授業内での問題練習が多いため、この学校の学力の高さも裏付ける。


4校時目も終わり昼休み。今朝適当に作った弁当を机の上に広げようしたら、愛海さんから「パーティのみんなで一緒に食べよ?」と誘われたので、みんなで固まって食べることになった。


「え、それ蒼くんが作ったの!?」


再び弁当を机の上に広げ、食べようとしたら愛海さんから「お弁当の中身すごい! 親が作ってるの?」と聞かれたので、「自分で作りました」と答えたら驚かれた。


驚いている割に、愛海さん含めみんなの弁当もしっかりとしているんだが。


「そういえば、聞いたぜ〜、蒼。愛海が襲われてたのを助けたんだってな」

「あ、はい。そうですね」


恵は愛海からあの日のことを聞いていたらしい。優里だけは聞かされていなかったのか、「え、じゃあ先生が不審者に気をつけるように、って言ってたのは……」と話を飲み込めていない様子。


「凄いよなぁ、武器持った男に立ち向かうなんて」

「そうですか? 恵くんだったら武器を使わずに〈体術〉でその場で倒しそうですが?」

「いやだって、その男、冒険者だったらしいじゃん。大体大人って俺たち高校生よりもレベル高いし。俺は凄いと思うぜ」

「私も凄いと、思う……」


っと、褒めまくられる。


俺はただ通報しただけだし、なんなら愛海さんが魔法を使えば逃げれたと思うが……当の本人はその時を思い出したのか頬が赤くなっている。


「はいはいその話は終わり!」


限界に達したのか、愛海さんが声を上げる。


「そう言えば、蒼って愛海の事可愛いと思うか?」


思いがけない発言に愛海さんが「ちょっと!」とさらに頬を赤く染める。だが恵はお構いなし、という感じだ。


「そうですね。可愛いと思いますよ」

「おおぉ〜」

「えっ……」

「今も頬を赤く染めている愛海さんも可愛らしいですし、男に襲われていた時も、諦めずに抵抗を続けていて、芯を曲げない女性の心の強さを感じました」

「え……」

「あ〜」

「えっとぉ……」


次の瞬間、愛海が勢いよく飛び出し、教室を出て行った。


「蒼、それは言い過ぎ。本気だって思われてるぞ、アレは」

「恵の言う通り、蒼くん」

「え、だって本当の事を言っただけで」

「あちゃ〜、本人も無自覚か〜」

「これは、私でも蒼くんがいけないって、分かる」


あれ、俺責められてないか? 本当のことを言っただけなんだが。 


あの後、愛海さんは戻ってきて、みんなと楽しく話す。


友達とは、こうゆう風に気兼ねなく話せる物なのかな、っと少し寂しい思いをしながら。


昼休みの後、5校時目は自習だった。来週からは、午後の授業は冒険者になるための訓練をするらしい。


自習の間、とても静かでペンを書き進める音がそこら中から聞こえる。最近は気温が急上昇し、今日は夏日だからかたまに水分をとっている人もちらほら。


人間は怠けやすい生き物ではあるが、ここの人たちは真面目だ。


その時間も終わり、帰りのHRホームルーム。先生からは


「今日ギルドカードとステータスカードを発行はしたが、調子に乗って1人でダンジョンに行かないように。必ず複数人で行くこと。こちらで強制は出来ないからちゃんと身の程を弁えて行動するように。以上!」


学級委員の号令で一斉に動き出す。


そういえば俺は今日来たばかりで、係とか入ってないな。先生に今度相談しよう。


放課後、俺は早速ダンジョンに行くことにした。理由は生活費を稼ぐためである。実家からの仕送りはあるにはあるが、それはもしもの時のために取っておこう。


そういえば、装備がない。武器も防具も。それらがないと悪い意味で目立つだろうし、それは避けたい。


俺は早急に装備を創る事にした。


学校で〈ステータスオープン〉した時に、出来る事と今は出来ない事が思考に流れてきた。俺の《機械神》は、魔導具・電子機械問わず、機械ならば自由に創造したり、操作する事が出来るらしい。実は他にも5つほど能力があるらしいが、それは追々。


俺はパーティで前衛を務める事が決まっているので無難に武器は剣でいいだろう。俺が持つから重量は考えなくていい。


大剣で素材は最も硬く、魔法に対しても耐性があるアダマンタイトにして、魔石を埋め込んで魔道具としても使えるようにしよう。それから……


俺は思いつく構想を出来るだけ採用し、〈機械創造〉を使った。


銀色に輝く150cmの刀身。俺の髪と同じ青色の柄、俺の目と同じ黄色の魔石。


そんな剣が“10本“。


運用法としては、普段は一本を普通の剣として使い、手数が必要な時は残りの9本を魔石を通して魔法で操作する、といった感じだ。これからずっと使う事になるかもしれないと思い、剣から魔法を自由に打てるようにした。


一見魔石が埋め込まれているくらいで、それ以外はただ出来のいい剣としか見えないが、おそらく俺以外まともに使える奴はいないだろう。


なんとその重量、なんと10kg。参考程度に、この国の伝統的な剣、「刀」は重さが約1kg。他国の剣でも重くて約2kgだ。それらと比較するとやはり、人が扱うような者ではないと分かる。


次は装備だ。と言っても俺はダメージを負っても〈修復〉魔法ですぐ直せるのでそこまで重要視していない。


前衛だし、身軽な方がいいだろう。デザインなどは思いつかないので、適当に作る。


下は少し緩めのジーンズ。上はグレーのスウェット。見かけはただの私服だが、実際には焼けない・凍らない・破けない・ほつれない・伸びない・汚れないといった機能がある。この前ネットでダンジョンの物がオークションにかけられていたが、「ガスバーナーの火で“は”燃えない服」がかなりコメント欄が盛り上がっていて、10万で落札されていたから、性能としては十分だろう。


ん? 服は機械じゃないって? これらも魔法を使った物だから魔導具に分類されるから大丈夫、らしい。出来たのだからそうだろう。

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