第17話 両親の温もり
「蒼っ。どうしたのそれ! 学校から来てないって電話が来て、心配になって来てみたら居なくて……もしかしたら攫われたんじゃないかってっ……」
「そうだぞ! お母さんずっとここで蒼が帰ってくるのを待ってたんだからな! 本当にっもう、せめて連絡くらいしてくれてもいいじゃないか!」
泣いているお父さんとお母さん。
家に帰ると、わざわざ地方から両親が来てくれていた。
「ご、ごめん、なさいっ」
涙が込み上げてくる。
「本当に、迷惑を、かけて、ごめんなさいっ」
その後も「ごめんなさい」と何度も何度もいう。2人はそんな俺の背中を摩ってくれた。
温かい。俺にはないこの温もりをこれからも大切にしたい。
泣き止んだ後、2人に言う。
「た、ただいま……」
「「お帰りなさい」」
そしてもう一度3人で抱きしめ合う。
この瞬間、また俺の心が満たされていく気がした。
自分に〈修復〉魔法をかけ、久しぶりに3人でご飯を食べる。学校での出来事や、ここ最近を2人に心配されないように誇張も何もせず、ありのままに話す。
気づけば夜の10時になっていた。
「蒼、さっきの…あの姿はなんだったんだ?」
お父さんから切り出された。さっき〈修復〉せずにボロボロの状態であがってしまったから聞いてくるだろうと予想はしていた。
「すみません。それはお父さんでも……言うことが出来ません」
正直言ってしまいたい。自分が自動人形であることを隠していると、そのうち人格が持たなそうな気がする。だけど明かしてしまうのも怖い。もしかしたら2人は目の色を変え俺への興味を無くしてしまうかもしれない。
嫌だ。この関係を壊したくない。この親子という関係を、ずっと、ずっと続けていきたい。
「蒼、貴方はまだ子供よ。1人で抱え込む必要はないわ。私たちに、甘えていいのよ。今まで甘えてこなかった分、たくさん甘えていいのよ」
「それでも……言えません。言いたく、ない……」
「蒼……」
「これは……俺の初めての我儘です。俺だけの秘密にしたいっていう、我儘なんです」
そう。これは俺が2人に対しての初めての我儘だ。
「分かった」
「え、良いんですか?」
「無理に聞き出しのも悪いしな」
「そうよ。ただ言えるようになったら……最初に私たちに言いなさい。相談しても良いのよ。私たちは“親子”なのだから」
「はい!」
翌朝、2人は実家に帰っていった。あのタイミングで打ち明けれなかった事に後悔はない。まだ心の準備が出来ていない。
あれ、「心の準備」?……俺には心なんてない。疑似人格はあるがそれも"疑似”であって本物ではないはず。
いや……本当に“疑似人格”か?
マギクラフト社で最後目が合った男。その人を見た時、俺とは違う“何か”を感じ、それがまるで再開を喜ぶような感情になっていた。
あの声は一体何者__いや、なんだ?
確か、俺がいた世界では次のような事が神話として語り継がれていた。
偉大なる創造神は、まずこの世界をお創りになられた。そして、その世界を育むために自身とは異なる神を創った。それが魔法神と剣神である。
創造神によって生まれた二柱は、創造神がお創りになった世界に住まう我々人間を含めた全ての生き物に魔法と武の力を与えた。
ある生き物は二足歩行をし、道具を使うようになり、ある生き物は魔法の扱いに長けるようになった。
二柱によって世界は順調に成長していく。創造神は、世界に手を出す必要がなくなった。
世界が成長していくと、死に行く者が多くなっていった。剣と魔法の二柱によって与えられた力が、互いを傷つける力として扱われるようになったのだ。
争いとは、どちらの繁栄が衰えることで発生する。そこで、工業神と商業神をお創りになった。
工業神によって文明は発達し、商業神によって異種同士の交流が増えた。
しかし、それでも争いは絶えなかった。
創造神はその事を悔やみ、せめてものと自身が死んだ生き物の魂を治め、新たな生を与え世界に放つ。
創造神は今この時も、我々の魂をお導きになられているのだ。
この終盤の部分。創造神は魂を導く。『あの声』は創造神ではなかろうか。『あの声』からどことなく高次元な、特別な存在だと感じた。決して自分では敵わないような、そんな感覚。それは機械神になった今でも同じで、尊敬する相手、崇拝されて当然の存在だと思っている。
もしあの声の正体が創造神だとしたら、この疑似人格は誰かの魂。そして、おそらくあの男の関係者。
決めつけるのは本来してはいけない事だ。魂の事だってこっちの世界に来た際に人間性が偶然付いたのかもしれないし。やはり情報が足りない。この世界のインターネットで魂や創造神について調べてみてもオカルトやおふざけがあってあてにできない。
よし。いっそのことマギクラフト社に行って確かめてみよう。下手に情報が少ない状態で考えても仕方がない。
俺はこれからの計画を立てながらベッドに横たわった。
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