自動人形の俺が異世界で生活する
いけぴ12
入学編
第1話 自動人形、現代へ
「ほっほ、まugh,@お主d,;@;.なk機械.@._]!'(に,l;gfとはの……」
視覚センサーも、聴覚センサーも何もかも機能していない中、年老いた男性の声が聞こえた。
そういえばマスターはどうなったのだろうか? 最後倒られて、その後………
いくら記録を辿ろうが、その先はなかった。だが、知りたかった事は、さっきから聞こえる声によって分かった。
「yu._;;@.,:マスター^^-は亡くなった」
読み取れないところが少なくなり、ほぼ、内容を理解できるようにまでなった。
衝撃の事実に驚愕……はせず、「そうですか」と言った。
「お主はこれから自由に活動するがよい」
「私は、今まで命令に従って来ました。自由に活動する方法が分かりません。どうすれば良いのですか?」
「ふむ…まぁ、質問できてるだけでも合格じゃの。それならば、お主に疑似人格を与えよう。そうすれば、分かるはずじゃ」
「よく、分かりません」
「そのうち分かr……」
蒼の意識はそこで途切れた。
♦︎ ♦︎ ♦︎
「おはようございます」
「おはよう、蒼」
「おお。おはよう、蒼」
「朝食の準備、手伝いますね」
俺、自動人形(オートマトン)である神生蒼は、異世界(自分視点)で老夫婦の小林幸弘さんと茜さんの家に養子として住まわせてもらっている。俺はある事故で壊された後、こちらの世界に修理された状態で転移し、右も左も分からなかったところをその時散歩中だった幸弘さんに拾ってもらったのだ。その後、1ヶ月間居候した後に養子として迎えられた。2人は60代前半だが、動きに衰えはほとんどなく、俺に優しく接してくれる。
2人には俺が自動人形だと言う事を伝えていないので、食事は不要だと言っても「若いんだから沢山食べなさい」と俺が元いた世界には全く無かった料理をテーブルに並べていくので食欲に負けて自分が折れた。
自動人形は機械だから食欲はないのでは?っと、思われるかも知れない。実際俺は空腹にはならない。だが何故か1日3食を欲してしまうのだ。
これは、あの声・・・に言われた『疑似人格』が影響してるのだと思う。最初は『疑似人格』にメリットを感じていなかったが、今ではとても感謝している。
食事以外にもお風呂に入ることや、歯磨きなど、人らしい事をする様になった。
おかげさまで充実した生活を送っている俺だが、不安が無いわけではない。その理由が『ダンジョン』という存在だ。俺が元いた世界にもあったものだが、この世界ではほんの数年前に突如現れたらしい。ダンジョンからは、魔物が出てくることがある。その中でも大量の魔物が一斉にダンジョンから出てくるのを『魔物の大氾濫スタンピード』と言う。そういった事で2人が亡くなるなんて事は想像に容易い。
だが幸いにも日本に現れたダンジョンは半分ほど攻略されたようで、スタンピードが起こる事は滅多に無い。ダンジョンは攻略されるとスタンピードを起こさなくなる。それでも魔物が出てくるらしいが、この国、日本では自衛隊やダンジョン出現に伴い新しく出来た職『冒険者』によって処理されている。冒険者を取り纏める『ギルド』は国際組織で、常に各国のギルド支部と連絡を取り合いダンジョンの脅威から一般人を守っている。あと日本の自衛隊はギルドと協力関係にあるらしい。他の国で軍とギルドが手を取り合う関係は今の所ないとの事。
ある日、食器洗いしていた俺は幸弘さんと茜さんに呼ばれて椅子に座った。
「そろそろ、蒼に高校に入ってもらおうと思ってな」
「学校、ですか……? 俺はわざわざ行かなくても大丈夫ですし、高校は費用が掛かると聞きます。必要ないと思うのですが…」
「ダメよ。高校行って、大学にも進学しないと。蒼が就職して一人暮らしするってなった時にハッキリとした学歴があった方がいいでしょ?」
「いえ、私は一人暮らしするつもりは……」
「蒼にするつもりが無くとも、ワシらが先に逝けばそうなるだろう?」
「!?」
失念していた。俺は自動人形で、幸弘さんと茜さんは人間。俺は壊れなければほぼ永遠に活動できるが、二人には寿命がある。先に動かなくなるのは、ほぼほぼ人間である二人だろう。
「それでも、やっぱり俺如きに大事なお金を使うのは……」
「私ね、蒼がこの家に来てくれて嬉しかったの。家事は手伝ってくれるし、話し相手にもなってくれるし。でもそう良くしてもらえる中で蒼みたいに優秀な子を私たちがこの家に縛り付けて良いのかって思う時があるの…」
「……」
「だからもう社会人になった息子達に頼んで都会の高校を薦めてもらったの。その高校は学力も高いし、訓練してくれるらしいの。ダンジョンがでてから物騒になったし……」
「……」
「だから、ね? 親孝行だと思って高校に通ってくれないかしら。私たちはまだ二人で十分暮らしていけるし…蒼の制服姿、見てみたいしね」
「茜、さん……!」
俺の事をそんなに考えてくれていたのか……
目から涙がこぼれ、床に垂れる。ああ、自分は良い人に拾ってもらったと。自動人形オートマトンである俺が、人間として、こんなに良くしてもらっている。2人は俺を我が子のように可愛がってくれる。
俺は泣きじゃくった。俺が茜さんに抱きつき、幸弘さんが茜さんの後ろから大きく俺を抱いてくれた。俺の涙は塩っぱくもないただの水のはずだが、口に入ったそれは、とてもとても、塩っぱく感じた。
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