4.庭師

 ✝ ✝ ✝

 館の中では使用人が慌しく準備をしている。

 敷地内も左右対称が施されている。

 庭師が計算して構成された美しい庭園だ。


 その雰囲気を壊さぬように。

 つかえている男たちは振ったりと紳士の対応を心がける。

 そうしなければ主人の評判はガタ落ちになるからだった。


 庭では馬車が行き交っている。

 太陽が落ちて薄明かりとなった庭園内だ。


 庭に配置された使用人は十五名ほど。

 そのほとんどが腰が曲がっているほどの老人だったり、

 ひざが悪くてすばやく動けない中年男だったりした。


 ドレスやタキシードをきた来客者は増えていくばかりだ。

 その中に若者が一人いた。

 力のあるレンはどこでも重宝がられていた。

 使用人の中では1番背が高く、がりがりにやせていた。

 しかしどこに力があるのか使用人の中で二番目に力があるのだ。


「レン。屋敷までの道が複雑なようだから、

 大門に立っていてくれるかい?」


 大門とは3つあるうちの門の一番外側だ。


「お安いご用ですよ。案内すればいいんですね」


「その前にちょいとこちらへ来なさい」

 レンがそちらへいくと顔面をごしごしと拭われた。

「痛いな。そんなに土まみれの布で拭かれてたら

 痛いしきれいにならないよ」


「文句を言うな。さっきよりましだ。

 ではよろしく頼むよ」


 話しやすく、どんなことでも笑って引受け、

 仕事は完璧なものだからこうした命も受けやすい。


 彼は笑って引き受けて、馬を走らせた。



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